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ようこそ、リトルウィッチ
⑥
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カチリ、と秒針が動いた。
ボーンボーンと年季の入った大きな振り子時計が時を知らせる。店の中は休みの日という事もあって活気づいていた。年代物の商品を物色する好々爺から、そのお伴についてきたと思われる小さな子供まで、狭い店内はいっぱいだ。カフェで悠々とアンティーク物のカップで紅茶やコーヒーをすする人も多い。
二人分の座席の片方に座った凛は、ストローをくわえてボーッと空を見つめていた。
「おい、凛!」
港に大きく声をかけられて凛ははっとした。
「ストロー! たれてるだろ!」
慌てて口からストローをはずし、手元の品を確かめる。星座早見盤。英国フィリップス社謹製でヴィクトリア朝時代のものだ。小さいが革張りの見事なアンティークである。
「……よかった。ソーダかかってない」
「気をつけろよな。ここは見るのも触るのも自由だけど、汚したら即買い取りが決まりなんだぜ。それだって最低でも三万はするんだ」
「ああ……」
ここは薫風亭。予定通り駅前で港と落ち合った凛は、電車に乗りこの古物店へと趣味を満喫しにやってきた――はずだった。
凛はかちゃかちゃと飲み物をストローでせわしなくかきまわす。凛の飲み物は薫風亭の名物の一つ、七色ソーダだ。普通のソーダの中に星の形にくり抜かれた七色のゼリーが入っている。氷と一緒にソーダの中を浮き沈みする様子が幻想的で美しい。薫風亭にカフェが開設されてから初めて飲んだもので、凛はここにくると必ず頼む。ただ夏向きの飲み物なので、季節外れの冬などに飲んでいると港が寒いぞ、とうるさい。
「なんか気分って感じじゃなさそうだな」
港が外国の雑誌を広げ、視線を落としたまま凛に話しかける。雑誌は――英語ではない。双葉が使っていた化粧品に印字されていた文字と似ていると凛は思った。フランス語かも知れない。でも港はフランス語なんてできない。第一、外国語は港が唯一苦手な教科だ。そのくせ、知った顔でページをめくっている。
「嫌なことでもあったか」
「そういうわけじゃないんだけど……そういうわけかもしれないけど、昨日ちょっとあって、寝不足でさ……ああ、ええと」
凛は視線を泳がせながら、
「ミニスカートとか、どう思う」
「はあ?」
「い、いやなんでも……港に聞いてもしょうがないんだけどさ、その」
「ふうん、好みの話か? めずらしいなお前からそんな話しふってくんの。そうだなあ別に嫌いじゃないぜ。てかミニスカート嫌いな男とかいんの? でもミニスカートって言ってもいろいろだよな」
「結構短い、というか、短い……」
「短いからミニスカートなんだろ。まあでもほどほどが好きかな、俺は。それに美脚な足なら良いけどさ、大根ならあわないだろ」
「結構厳しいな」
「映画監督は美意識が大切だ。それにうちには一応現役モデルがいるんだぜ。ストッキング履くんだろうけど、ミニスカートは緊張するらしい。姉ちゃんモデルのくせに脚にはちょっと自信が無いんだよ。女は脚線美を意識するけど、男が見るのは太ももだよな。で、お前はどうなのよ」
「僕は、その……」
凛は困った顔でストローをいじりながら、
「見てるだけの方が、いいな」
「リトル・ウィッチとしてふさわしい衣装をあたえるわ!」
アンジェはフフン、と鼻息荒く腰に手をあてて仁王立ちになる。
「あたしこれでもデザイナー志望なの」
「だから手すり危ないって……西の良き魔女じゃないのか?」
「それは夜の姿。昼の姿は別に持ってるにきまってるでしょ」
「仮の姿ってこと?」
「そうともいうわね。ささ、リトル・ウィッチにへーんし~ん!」
アンジェが心の深淵を凛に向けて軽く先端を振る。途端に凛の足もとが輝き、ズアッと光の波が凛の全身を駆け抜けた。
「おお!?」
つま先から頭、手の先端まで光の粒が身体全体を覆っていく。まるで女の子向けの変身アニメみたいだ。やがて凛の全身を包んだ光が役目を終えたかのように散った。
「これは……!」
両手に長い白手袋が脇下近くまで嵌っている。手を振ると角度が変わるたびに表面が七色に光った。靴も同じ素材でできているようで、白く太ももまで伸びたブーツは今風にいえばニーハイブーツとでもいうのか、港の姉が雑誌で履いていたような気がする。凛は慌てて月光が反射して鏡のようになったベランダの窓に全身を映した。頭にはまさしく魔女の見本とでもいうような、大きな紺色のつばひろの帽子がこれまた大きな白いリボンで結ばれて凛の頭に収まっている。身体は全身にぴったりと密着した服装で、やはり紺色の布地、首を覆うハイネックでノースリーブである。肩骨がむき出しになっており、――モデルの白雪が見たらホルダーネックだと細かく注文をつけるだろう――首元に大きな黄色のリボンがあしらわれている。二本の白いストライプ柄が前面を走って模様を作っていた。背中が寒い感じがしたので後ろを振り向くと、首の後ろで紺色の生地が結ばれており背中は腰部分まで大胆にあいている。何だか不安な気持ちになってきて視線を落としていくと、あちこち感触を確かめていた凛の動きが止まった。足がスカスカする。股が非常に不安な感じがした。――凛は布が不自然に短いところで切れているのを見て仰天した。……スカート、なのだ。……凛の全身は紺と白が基調の帽子と、身体にフィットしたミニワンピースで飾られていたのである。
「うわあああああああ!!」
凛の叫びにアンジェが声を上げる。
「ちょっとなによ、びっくりするじゃないの」
「びっくりしたのはこっちだよ! なんだよこれ!」
思わずガニ股になった凛だが、なぜか無意識で足を閉じてしまい妙な内股になった。
「あら、シリウスをイメージしたデザインよ。なかなかクールでしょ? 男の子向けには良いと思うわ」
「男向けがスカートであってたまるか! しかもこんな短い……うああ、どうにかしろよ! ズボンにしろ!」
「嫌よ」
「い、いやあ!? 嫌なのはこっちだよ!」
「魔女には男もいるわけだけど、まあ基本女社会なわけよ……この世界になじんでもらうには形から入るのが一番でしょ」
「なんか筋が通ったようなこと言ってるけどおかしいからな!」
「まあそれはそうとして君かわいいから似合うと思って」
「それかい!!」
えへっ、と全く反省していなさそうな顔でアンジェは凛の全身を眺め、満足そうである。
「だって可愛くってびっくりしちゃった。あたしの同級生なんてイモい奴ばっかりなんだもの。似合ってるわよ~あたしの目に狂いはなかったってことね!」
「断固抗議する」
「あら、その姿のままずうっといられるようにすることもできるんだけどな」
「……スカートは勘弁してほしい」
「ふうん、もう仕方ないわね。ほら」
アンジェが人差し指をふると凛のスカートの周辺が光りに包まれ、ぱっと下半身に紺色の短いスパッツが装着された。スカート丈ギリギリの長さだ。凛は心もとなくスカートを引っ張る。
「それでいいでしょ」
「くそ……なんかだまされた気もするけどないよりましか」
これで妥協していいのかはともかく、アンジェがスカートを撤回しそうにもないので諦めることにした。やはり股下が心もとない気がして尻と股間を抑える。服は全体的に光沢があり、月の光で輝いているようだった。
「でも、この格好になってどうするんだ? なにかするの?」
「リトル・ウィッチの正装ですからね。防御力も攻撃力もアップするし星の力を増幅してくれる便利な代物よ。君はその姿でリトル・ウィッチたちと戦うのよ」
「た、戦う?」
「東の良き魔女の座は一つだけ。それを狙って東の魔女たちがすでに戦いを繰り広げているわ。西の良き魔女の私が君を東の良き魔女に推薦した事はもう世界の隅々まで知られていることなの。君は嫌でも他のリトル・ウィッチと戦うことになるわね」
「な、なんで僕なんか推薦するんだ?」
アンジェはにっこりと笑って、
「シリウスの光が見えたから」
「それだけ?」
「それで十分なのよ――私を失望させないでよね」
アンジェはあーお腹すいた、と言ってどこからかアイスのカップとスプーンを取り出し手すりに腰掛けたまま食べだす。
「日本限定のフレーバーが食べられるのは嬉しいわ」
「それで」
凛は嫌な予感がしてアンジェに確認をした。
「東の魔女という事は、もしかしてこの付近にもいるかもしれないってこと?」
「そうね」
「考えたくないけど、知り合いだったりする可能性は」
「あるかもしれないわね」
もぐもぐアイスを食べながらアンジェが何事もないように答える。
「そ、それはまずい! すごくまずいよ! 正体がばれたら……!」
ミニスカの女装姿を見られる事になるのだ。リトル・ウィッチであるということがばれるよりそっちの方が凛にとっては大問題である。
「僕は絶対いやだぞ!」
「リトル・ウィッチとして目覚めて私が推薦した以上、他のリトル・ウィッチが君を狙ってくるのは必至。いい目の敵だもの。今更引きかえすことはできないのよ……まあそうね、正体を隠したいっていうならこれでどう?」
そういってアンジェがウィンクする。
「?」
「鏡を見てみなさいよ」
アンジェにうながされてベランダの窓に顔を映すと知らない顔がうつっている。いや、顔は凛そのものだ。だが――髪は金色で瞳は海の様な青。金髪碧眼の、一目見るならちょっとした外国の美少女が出来上がっていた。髪は短いままだが、くせ毛である左右の耳のそばに垂れている横髪が風に揺れて非常に中性的な雰囲気をかもしだしている。
「た、確かにこれなら僕とはわからない……」
「でしょ? もう注文多いんだからあ。じゃ、そういうわけでそろそろ時間だから私はおいとまするわ。アイスごちそうさま」
「え」
アンジェは凛に空のアイスカップとスプーンをわたすと箒にまたがって、
「心の深淵は胸の中にしまいなさい。それは夜の帳が降りた時使うものなの。リトル・ウィッチのお仕事について他にも話があるけど、またくるわ。じゃあね」
「え、ちょちょっと」
そのまま手すりから飛び降り、少し高さを落とすとアンジェはあっというまに空の彼方へと飛んでいってしまった。
「は、速い……というか」
凛はスカートの丈をぐっとつかんで、
「この格好どうすればいいんだよおおおおおおおお!!」
と泣きそうな声で夜空に吠えたのだった。
ボーンボーンと年季の入った大きな振り子時計が時を知らせる。店の中は休みの日という事もあって活気づいていた。年代物の商品を物色する好々爺から、そのお伴についてきたと思われる小さな子供まで、狭い店内はいっぱいだ。カフェで悠々とアンティーク物のカップで紅茶やコーヒーをすする人も多い。
二人分の座席の片方に座った凛は、ストローをくわえてボーッと空を見つめていた。
「おい、凛!」
港に大きく声をかけられて凛ははっとした。
「ストロー! たれてるだろ!」
慌てて口からストローをはずし、手元の品を確かめる。星座早見盤。英国フィリップス社謹製でヴィクトリア朝時代のものだ。小さいが革張りの見事なアンティークである。
「……よかった。ソーダかかってない」
「気をつけろよな。ここは見るのも触るのも自由だけど、汚したら即買い取りが決まりなんだぜ。それだって最低でも三万はするんだ」
「ああ……」
ここは薫風亭。予定通り駅前で港と落ち合った凛は、電車に乗りこの古物店へと趣味を満喫しにやってきた――はずだった。
凛はかちゃかちゃと飲み物をストローでせわしなくかきまわす。凛の飲み物は薫風亭の名物の一つ、七色ソーダだ。普通のソーダの中に星の形にくり抜かれた七色のゼリーが入っている。氷と一緒にソーダの中を浮き沈みする様子が幻想的で美しい。薫風亭にカフェが開設されてから初めて飲んだもので、凛はここにくると必ず頼む。ただ夏向きの飲み物なので、季節外れの冬などに飲んでいると港が寒いぞ、とうるさい。
「なんか気分って感じじゃなさそうだな」
港が外国の雑誌を広げ、視線を落としたまま凛に話しかける。雑誌は――英語ではない。双葉が使っていた化粧品に印字されていた文字と似ていると凛は思った。フランス語かも知れない。でも港はフランス語なんてできない。第一、外国語は港が唯一苦手な教科だ。そのくせ、知った顔でページをめくっている。
「嫌なことでもあったか」
「そういうわけじゃないんだけど……そういうわけかもしれないけど、昨日ちょっとあって、寝不足でさ……ああ、ええと」
凛は視線を泳がせながら、
「ミニスカートとか、どう思う」
「はあ?」
「い、いやなんでも……港に聞いてもしょうがないんだけどさ、その」
「ふうん、好みの話か? めずらしいなお前からそんな話しふってくんの。そうだなあ別に嫌いじゃないぜ。てかミニスカート嫌いな男とかいんの? でもミニスカートって言ってもいろいろだよな」
「結構短い、というか、短い……」
「短いからミニスカートなんだろ。まあでもほどほどが好きかな、俺は。それに美脚な足なら良いけどさ、大根ならあわないだろ」
「結構厳しいな」
「映画監督は美意識が大切だ。それにうちには一応現役モデルがいるんだぜ。ストッキング履くんだろうけど、ミニスカートは緊張するらしい。姉ちゃんモデルのくせに脚にはちょっと自信が無いんだよ。女は脚線美を意識するけど、男が見るのは太ももだよな。で、お前はどうなのよ」
「僕は、その……」
凛は困った顔でストローをいじりながら、
「見てるだけの方が、いいな」
「リトル・ウィッチとしてふさわしい衣装をあたえるわ!」
アンジェはフフン、と鼻息荒く腰に手をあてて仁王立ちになる。
「あたしこれでもデザイナー志望なの」
「だから手すり危ないって……西の良き魔女じゃないのか?」
「それは夜の姿。昼の姿は別に持ってるにきまってるでしょ」
「仮の姿ってこと?」
「そうともいうわね。ささ、リトル・ウィッチにへーんし~ん!」
アンジェが心の深淵を凛に向けて軽く先端を振る。途端に凛の足もとが輝き、ズアッと光の波が凛の全身を駆け抜けた。
「おお!?」
つま先から頭、手の先端まで光の粒が身体全体を覆っていく。まるで女の子向けの変身アニメみたいだ。やがて凛の全身を包んだ光が役目を終えたかのように散った。
「これは……!」
両手に長い白手袋が脇下近くまで嵌っている。手を振ると角度が変わるたびに表面が七色に光った。靴も同じ素材でできているようで、白く太ももまで伸びたブーツは今風にいえばニーハイブーツとでもいうのか、港の姉が雑誌で履いていたような気がする。凛は慌てて月光が反射して鏡のようになったベランダの窓に全身を映した。頭にはまさしく魔女の見本とでもいうような、大きな紺色のつばひろの帽子がこれまた大きな白いリボンで結ばれて凛の頭に収まっている。身体は全身にぴったりと密着した服装で、やはり紺色の布地、首を覆うハイネックでノースリーブである。肩骨がむき出しになっており、――モデルの白雪が見たらホルダーネックだと細かく注文をつけるだろう――首元に大きな黄色のリボンがあしらわれている。二本の白いストライプ柄が前面を走って模様を作っていた。背中が寒い感じがしたので後ろを振り向くと、首の後ろで紺色の生地が結ばれており背中は腰部分まで大胆にあいている。何だか不安な気持ちになってきて視線を落としていくと、あちこち感触を確かめていた凛の動きが止まった。足がスカスカする。股が非常に不安な感じがした。――凛は布が不自然に短いところで切れているのを見て仰天した。……スカート、なのだ。……凛の全身は紺と白が基調の帽子と、身体にフィットしたミニワンピースで飾られていたのである。
「うわあああああああ!!」
凛の叫びにアンジェが声を上げる。
「ちょっとなによ、びっくりするじゃないの」
「びっくりしたのはこっちだよ! なんだよこれ!」
思わずガニ股になった凛だが、なぜか無意識で足を閉じてしまい妙な内股になった。
「あら、シリウスをイメージしたデザインよ。なかなかクールでしょ? 男の子向けには良いと思うわ」
「男向けがスカートであってたまるか! しかもこんな短い……うああ、どうにかしろよ! ズボンにしろ!」
「嫌よ」
「い、いやあ!? 嫌なのはこっちだよ!」
「魔女には男もいるわけだけど、まあ基本女社会なわけよ……この世界になじんでもらうには形から入るのが一番でしょ」
「なんか筋が通ったようなこと言ってるけどおかしいからな!」
「まあそれはそうとして君かわいいから似合うと思って」
「それかい!!」
えへっ、と全く反省していなさそうな顔でアンジェは凛の全身を眺め、満足そうである。
「だって可愛くってびっくりしちゃった。あたしの同級生なんてイモい奴ばっかりなんだもの。似合ってるわよ~あたしの目に狂いはなかったってことね!」
「断固抗議する」
「あら、その姿のままずうっといられるようにすることもできるんだけどな」
「……スカートは勘弁してほしい」
「ふうん、もう仕方ないわね。ほら」
アンジェが人差し指をふると凛のスカートの周辺が光りに包まれ、ぱっと下半身に紺色の短いスパッツが装着された。スカート丈ギリギリの長さだ。凛は心もとなくスカートを引っ張る。
「それでいいでしょ」
「くそ……なんかだまされた気もするけどないよりましか」
これで妥協していいのかはともかく、アンジェがスカートを撤回しそうにもないので諦めることにした。やはり股下が心もとない気がして尻と股間を抑える。服は全体的に光沢があり、月の光で輝いているようだった。
「でも、この格好になってどうするんだ? なにかするの?」
「リトル・ウィッチの正装ですからね。防御力も攻撃力もアップするし星の力を増幅してくれる便利な代物よ。君はその姿でリトル・ウィッチたちと戦うのよ」
「た、戦う?」
「東の良き魔女の座は一つだけ。それを狙って東の魔女たちがすでに戦いを繰り広げているわ。西の良き魔女の私が君を東の良き魔女に推薦した事はもう世界の隅々まで知られていることなの。君は嫌でも他のリトル・ウィッチと戦うことになるわね」
「な、なんで僕なんか推薦するんだ?」
アンジェはにっこりと笑って、
「シリウスの光が見えたから」
「それだけ?」
「それで十分なのよ――私を失望させないでよね」
アンジェはあーお腹すいた、と言ってどこからかアイスのカップとスプーンを取り出し手すりに腰掛けたまま食べだす。
「日本限定のフレーバーが食べられるのは嬉しいわ」
「それで」
凛は嫌な予感がしてアンジェに確認をした。
「東の魔女という事は、もしかしてこの付近にもいるかもしれないってこと?」
「そうね」
「考えたくないけど、知り合いだったりする可能性は」
「あるかもしれないわね」
もぐもぐアイスを食べながらアンジェが何事もないように答える。
「そ、それはまずい! すごくまずいよ! 正体がばれたら……!」
ミニスカの女装姿を見られる事になるのだ。リトル・ウィッチであるということがばれるよりそっちの方が凛にとっては大問題である。
「僕は絶対いやだぞ!」
「リトル・ウィッチとして目覚めて私が推薦した以上、他のリトル・ウィッチが君を狙ってくるのは必至。いい目の敵だもの。今更引きかえすことはできないのよ……まあそうね、正体を隠したいっていうならこれでどう?」
そういってアンジェがウィンクする。
「?」
「鏡を見てみなさいよ」
アンジェにうながされてベランダの窓に顔を映すと知らない顔がうつっている。いや、顔は凛そのものだ。だが――髪は金色で瞳は海の様な青。金髪碧眼の、一目見るならちょっとした外国の美少女が出来上がっていた。髪は短いままだが、くせ毛である左右の耳のそばに垂れている横髪が風に揺れて非常に中性的な雰囲気をかもしだしている。
「た、確かにこれなら僕とはわからない……」
「でしょ? もう注文多いんだからあ。じゃ、そういうわけでそろそろ時間だから私はおいとまするわ。アイスごちそうさま」
「え」
アンジェは凛に空のアイスカップとスプーンをわたすと箒にまたがって、
「心の深淵は胸の中にしまいなさい。それは夜の帳が降りた時使うものなの。リトル・ウィッチのお仕事について他にも話があるけど、またくるわ。じゃあね」
「え、ちょちょっと」
そのまま手すりから飛び降り、少し高さを落とすとアンジェはあっというまに空の彼方へと飛んでいってしまった。
「は、速い……というか」
凛はスカートの丈をぐっとつかんで、
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