最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

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33 子供がいらないと捨てる国があった6

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 時間の神はクラリスの魔術に従った。



 近くの空間の時間が一瞬、停止した。



 時間の神の主となり動けるクラリスが、ムナジロガラスの姿のメイに乗り、滑空して降りてきた。



 そして、アーサーとメイナードを乗せて、空に再び飛び去った。



 続けてクラリスは強制魔術を詠唱していた。

「魔王の血をその身に取り込んだ者。家に帰りなさい。そして次に外に出るときは朝日を浴びなさい。」



 クラリスが言った。

「このお二人のがんばりで、多くの方が体に取り込んだ魔王の血を消滅させることができました。」



「お嬢様。いったいどれほどの方々が救われたのでしょうか。」



 クラリスは地上を再び見て、人数を確認した。

 魔王の血をやどす住民は既に消えて、魔王の血が消滅した住民達が倒れていた。



「なんと、5千人くらいの住民が救われています。目をさました時は、全く普通の人間に戻っているでしょう。あのおばあさんも大丈夫です。みんなで、おばあさんを守るでしょう。」



「クラリス様、王子様は大丈夫でしょうか。」

 心配したメイナードが聞いた。



「大丈夫ですよ。少し血が少なくなっていますが、英雄の体はもう血を増産し始めています。次に目覚められた時には普通の状態に戻っているはずです。」



 やがて、空を飛んで子供達の隠れ家がある山の上についた。

 メイナードはアーサーを抱えて洞窟の中に入った。



 意識を失っているアーサーを見て、ジェシカ王女や子供達はとても驚いた。

 ジェシカ王女がクラリスに聞いた。



「アーサー王子様は大丈夫でしょうか。」



「もうすぐ意識が戻り、目を覚まされると思います。」







 洞窟の床に敷き詰められていた干し草の上に横たわっていたアーサーが意識を取り戻した。



「アーサー王子様がお目覚めになられました。」

 横で起立していたメイナードが大きな声を上げた。



「メイナード、これはいったい…………? 」



「クラリス様達に助けていただいたのです。」



「あっ! 住民達は。あのおばあさんは。」



 その時、クラリスとメイ、ジェシカ王女が急いで駆けつけてきた。



「アーサー王子様とメイナードさんのおかげで、5千人ほどの住民が元の人間に戻ることができました。我が国民に代わりお礼申し上げます。」



「人間らしい気持ちを取り戻した住民は、お互いに助け合うでしょう。おばあさんのことも守り抜くに違いありません。」



 クラリスは今後の計画を話し始めた。



「まだ魔王の血をやどす王都キプロの数万人の住民は、朝日を浴びるまで外に出て来ません。魔術をかけました。」



「クラリスさん。それはどのような意味ですか。」



「アーサー王子様の英雄の血の力を太陽の光りと合体させ、それを浴びることで魔王の血を消滅させるのです。ただ王都キプロ以外に住んでいる住民に朝日を浴びていただく方法が…… 」



「そうですか、おばあさんに聞きました。魔王の血を体内に取り込んだ住民達は野獣のように夜行性になってしまい。昼間は外に出て来なくなるそうです。どうしたら…… 」



 その時、2人の話しを聞いていたメイナードが想い出した。



「アーサー王子様、ミレーネ王国の騎士達は魔王の血を体内に取り込んだ住民達を笛を吹いて呼び寄せていましたね。」



「そうだ! あの音をミレーネ王国全土で鳴らせばいい! どうやって手に入れようか。」



「アーサー王子様。なんとかして、その笛を私に見せていただけないでしょうか。私の魔眼で見れば、笛の全てを知ることができ、魔術でその笛から出る音を再現できます。」



 その時、ジェシカ王女が言った。



「たぶん、その笛は内務大臣のボウが作り、使わない時は、大切な物として王宮の宝物庫にしまってあるに違いありません。クラリス様。私を王宮にお連れください。」



「とても危険です。国王様が魔王の血を体に取り込んで野獣化し、ジェシカ王女様の命を奪いそうになり急いで周囲の家臣達が王宮から逃がしたのですね。」



「危険だからと言って、私が何もしないことは恥ずかしいことです。私の国の国民を救うためです。英雄のアーサー王子様がそんなに左腕を血だらけにしてがんばられたのですから。」



「かっこ悪いですが。」

 アーサーが包帯に血がにじんでいる左腕を見せて言った。



「いえ。最高にかっこいいです。私がほんの小さかった時から、あなたは私の前に現われた世の中で最もかっこいい存在です。ずっと私には一番の光り輝く存在です。」



 その時、あこがれの眼差しでアーサーをじっと見ているジェシカ王女の話しを、クラリスがさえぎった。



「うん!!! それでは、ジェシカ王女。私を王宮に案内していただけますか。」



 あまり大きな咳払いだったので、その場にいたみんながびっくりした。

 そして、侍女のメイがずけずけと言った。



「お嬢様。何もそんなに大きな咳払いをしなくても―― ジェシカ王女はまだ幼いですから、絶対にお嬢様のライバルにはなり得ません。」



「だって、もう10歳にはなられているから……いえいえ。今の咳払いはわざとではありませんよ。ほんとうに風邪気味なのです。」



「お嬢様。どちらにせよ、早く参りませんか。場合によっては、お母様の一番の弟子だったという『身勝手のボウ』とかいう暗黒騎士をやっつけてしまいましょう。」



「そうですね。私の母様の一番の弟子にして、我が家の紋章である四葉のクロバーを体にやどすまでになったのに、暗黒騎士になるとは。ほんとうにひどい人ですね。」 
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