最強で最弱な英雄&優しい魔女の物語~♡♡♡

ゆきちゃん

文字の大きさ
95 / 108

95 英雄と魔女の故郷は侵略された

しおりを挟む
 クラリスは魔眼で王都イスタンの状況を探査した。



 そして、驚くべきことを話し始めた。



「この王都イスタンでは魔族のオーラしか感じません。人間のオーラは全くありません。」



 アーサーの表情が曇った。



「私の父上と兄上達は今、どこにいらっしゃるのでしょう。無事でいらっしゃれば良いのですが。」



 クラリスが言った。



「私の父上の領地やアーサー王子様の領地のゴガン州を中心に、ゴード王国全体を探査してみます。」



 彼女は青い瞳の魔眼を強く輝かせ、広い範囲を探査した。



 そして、かなり長い時間、探査を続けていたが、やがて全てを知った。



「私の父上の領地やアーサー王子様の領地ゴガン州を含めて、ゴード王国全てに人間のオーラは感じられます。魔族が占拠しているのは王都イスタンだけです。」



「クラリスさん。ランカスター公爵の城に行き、ゴード王国の現状を教えていただきましょう。」



「王宮が魔族のものになり、アーサー王子様の父上である国王や兄上達の行方がとても心配なのに、私だけ自分の家に帰り、父上に会うのは申し訳ないです。」



 クラリスの顔はつらそうで泣きそうだった。



「問題ありません。父上と兄上達は御無事なはずです。クラリスさんの父上、ランカスター公爵なら、この事態を冷静に分析し御自身の城を固く守っているはずです。」



「‥‥はい。わかりました。それでは、私の父上の城に帰りましょう。丸太小屋の前ならば、すぐに転移できます。それでは今すぐ。」



 クラリスの魔術で、4人は直ぐに転移した。







 ヘルムートランカスターは、自分の城の軍議室で考え事をしていた。



 緻密で明晰な彼は、1か月前に戦った暗黒騎士のことを考えていた。



 始まりは王宮からの早馬だった。



 国王からの伝文は、「すぐに王都イスタンへ。王宮へ、今すぐ出頭せよ。」だった。



 理由が何も添えられていないことが不思議でおかしいと思った。



 しかし忠義心の厚い彼は、急いで数人の家臣とともに出頭した。



 イスタンに着き、王宮の城門に向かうと多くの城兵が警備にあたっていた。



(何かあわてて混乱しているような動き。戦いが始まるのかな。)



 ランカスター公爵が城門に近づくと、城兵達が一斉に彼を見た。



 そして一応に安心したような表情を見せた。



 彼の到着を待ち構えていた騎士団長が言った。



「よかった! 公爵様! 早く早く陛下のおそばにお出でください! 」



 騎士団長は、せかすようにランカスター公爵を謁見の間に引っ張って行った。



 謁見の間の扉を開くまでは、そこには見慣れた光景があると彼は思っていた。



 しかし、全く様子が変わっていた。



 その中は宇宙の中にいるような仮想空間だった。



 そして両側には司令席のような2つの席が設けられていた。



 仮想空間を隔てて向かい合った2つの席。



 片方には疲れ切ったようなヘンリー国王が座っていた。



 そして対局の席には、青白い顔をした騎士が座っていた。



 ランカスター公爵はすぐにわかった。



(クリスタが教えてくれたことがある。これが、クラリスとアーサー王子様が戦っている暗黒騎士の1人だな。今どのくらいの国の災厄を防いだのだろう。ゴード王国も災厄が起きる国の1つなのか。)



 国王がほっとしたような声で言った。



「ランカスター。来てくれたのか。こっちに来てくれ。」



「わかりました。陛下、今すぐ御前に参ります。」



 ランカスター公爵は急いで、国王の席のそばに急いだ。



「あっ! 陛下、この席に縛られているのですね。」



 国王の体には光りの縄が何重にも巻かれており、席から立つことができないようになっていた。



 その時、対局に座っていた青白い顔をした暗黒騎士が話しかけてきた。







「これはこれは、ゴード王国最高の将軍ランカスター公爵様ですね。あなたにお会いすることを私は楽しみにしていたのですよ。」



 ぼそぼそと、単調で、機械的な口調で暗黒騎士は話しかけてきた。



 一瞬、ランカスターはその暗黒騎士と目が合った。



 そして悟った。



「この暗黒騎士の心は深い。そしてとても強い。はるか先を見て、はるか遠くを見ることができる。」



「ランカスター公爵様。言い忘れました。私はイブリース、悪しき心を映す世界では副王イブリースと呼ばれている暗黒騎士、絶対のイブリースです。」



「副王イブリース‥‥ 」



「はい。私は魔王アスモデウス様を直接補助する者。暗黒騎士としてもの力も、魔王様とほとんど同等とされております。」



「副王様。お聞きしたいのですが。私の陛下を相手にして、いったい何をなさっているのでしょうか。戦いのゲームであるのなら、それは陛下がおやりになることではなく、臣下の私がやることです。」



「ほんの少しだけ、国王様と戦いのゲームをしただけです。しかし、国王様も相当な力がお有りになります。敗北の代償がゴード王国全領土だけで済んだのですから。」



 イブリースがそう言っても、ランカスターは顔色を変えなかった。



 そして、イブリースに提案をした。



「副王と呼ばれる方が、戦いの専門家でない我が陛下とゲームをして満足していることはないでしょう。どうですか、今から私とゲームをしませんか。」



「うれしい御提案です。良いでしょう。国王様と後退してください。しかし、ランカスター公爵様が負け続けたら、私はゴード王国だけではなく、この全世界を征服してしまいますよ。」



 ランカスターは顔色を全く変えなかった。



 それを見てイブリースが言った。



「さすがに魔女の国の女王、真実に至る魔女の種馬に選ばれた方だ! 最上級の人間だ! 」



 その言葉を聞くと、ランカスターの心の中には大きな怒りの心が生じた。



 しかし、その変化は彼の顔色には全く現われなかった。



「頭が良い副王様なのに、大切なことがわからないのですね。クリスタは私のことを選んでくれたのですが、私もクリスタのことを選んだのです。そして、人生で一番の幸運が私に訪れた。」



「まあ、愛ですか。そこの部分のことを私は良くわかりません。それでは、国王様に代わって、その席にお座りください。」



 イブリースがそう言うと、国王を席に縛り着けていた光りの縄が消えた。



 国王は少しよろけるように席から立つと、代わってランカスター公爵が座った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

【完結】侍女が王女に転生?!英雄と結婚して破滅の国を救います!

カナタカエデ
ファンタジー
八十歳で生涯を終えた、元王宮侍女カリナ。 その最期の瞬間――枕元に、かつて仕えた王女アメリアが現れた。 「お願い…私の人生をやり直して。国を、私を、救って――」 次に目を開くと、カリナは十八歳の“王女アメリア”として転生していた。 彼女は知っている。 このままでは王国は滅び、愛する主君が破滅する未来を。 未来を変えるため、アメリアは 冷徹と噂される英雄ヴァルクとの政略結婚を選ぶ。 これは、かつて守れなかった主人のための転生。 そのはずなのに――彼への想いは、気づけば変わり始めていた。 王女と英雄が紡ぐ、破滅回避ラブファンタジー開幕。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜 挿絵はA I画像を使用 10/20 第一章完結 12/20 第二章完結 2/16 第三章完結 他サイト掲載 (小説家になろう、Caita)

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

処理中です...