入り江物語~異世界との切れ目を踏み転移し古代女王の元へ、そして勇者になります!!

ゆきちゃん

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3 僕に何ができるだろう

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 質問した兵士が、再び入江八広いりえやひろに聞いた。



「勇者様は怖くないのですか。あの石の国の兵士達は、人間を殺すのに、なんのためらいもありません。人間の心が無いといっても良いでしょう。ましてや、あの怪物のようなアテルイには誰もかないません」



「みなさん。教えてください。アテルイはどのくらい強い男なのですか」



 彼がそう聞くと、その場にいた兵士達が神殿の上にいる登与とよを見上げた。



 みんなを代表して登与とよが話し始めた。



「あれは人間ではありません。きっと、既に別のものです。絶対に、人間の力であれに勝つことができません。なにしろ、神秘の力をもつおばさまですら勝てなかったのですから―― 」



 その後、彼女は数年前に起きた戦いのことを話し始めた。







 大陸は人間の数が多く、多くの人間達が平和に生きることができる十分な富とみがなかった。



 そのため、常に富を奪い合う非常に多くの悲惨な戦いが、絶え間なく続いていた。



 人間達が命をかけて競い合う中で、中には、歴史史上卓越した力を持つ者を多く輩出した。



 卓越した力を持つ者は、多くの人々を従え広大な領土を支配した。



 力を持つ者はさらに力を求め、より多くの人々の上に君臨しようとする。



 このことで、さらに非常に悲惨な多くの戦いが絶え間なく起きていた。



 これに対して、八島やしまは周囲を海に囲まれた水と緑豊かな国だった。



 その、豊かな水と食糧を略奪するために――







「おばさま。何か、特別なお告げがあったのでしょうか? 」



 海見山の頂上にある邪馬台国の神殿の奥から出てきた卑弥呼の険しい表情を見て、姪の登与が心配して聞いた。



「八島の神々から私に信託が下りました。この広い世界で、唯一自分のことしか認めない残虐な神がこの八島も自分のものだと宣言したようです。その神が加護する者達がやがて、ここに攻めてきます。」



「その者達は強いのですか? 」



「はい。人間として最も大切な優しい心を捨てています。唯一神の命ずるままに、他の人々を殺すことになんのためらいもありません。できるだけ早く、たくさん、殺すことが尊いことと固く信じています。」



「そうなのですね。でも、おばさまを信じて、みんなで協力して生きている邪馬台国の人々は強いのです。そして、兵士達も強いに違いありません。」



 登与はそう言ったが、ただの空虚な理想の言葉だけで、何の根拠もないことがはっきりとわかっていた。







 数日後、卑弥呼の予言は当たった。



 海見山の頂上にある邪馬台国の神殿から見ることができる入り江は、多くの巨大な帆船で構成される艦隊で埋め尽くされていた。



「卑弥呼様。入り江が全て、見たことのない巨大な船で埋め尽くされています。」



 防衛司令官が報告に来た。



「漁村のみなさんはどうしていますか。」



「もうみんな。この海見山の頂上に避難しています。」



「それでは、みなさんにこの神殿に入ってもらってください。外にいるとあぶなくなります。」



 その後、卑弥呼は大鏡の前に設けられた祭壇の前に座り、祝詞のりとをあげ始めた。



「かしこみ、かしこみ‥‥八島に集う八百万やおよろずの神々よ。我に力を与えん。八島の国に仇なそうとする者に罰を与えん」



 卑弥呼は祭壇の前でいつも以上に香を焚き、亀の甲羅を炎の上にかざした。



 すると、やがて「ばりっ」という大きな音が聞こえたかと思うと、



 亀の甲羅に亀裂が入った。



 上から下に抜けようとした大きな亀裂を、途中で、横一直線に入った亀裂がさえぎっていた。



「そう‥‥‥‥‥‥ 」



 卑弥呼は何かわかったようなひとり言をいった。



 外では、すこしづつ風が強くなっていった。



 そして、大粒の雨が滝のように落ち始めた。



 だんだん風はさらに強くなり、入り江の船は入り江だというのに外洋のような大波に襲われた。



 大波の海水は多くの帆船の中に流れ込み、沈没する船が多くなった。



 ところが、



 その中の最も大きな船で異変が起きていた。



 2メートルを超す、大きな男が船首に立った。



「我の前には陸が続く。誰も我の歩みを止めることはできない! 」



 その男は海に飛び降りた。



 しかし、彼は海の中に飲み込まれなかった。



 なんと、海の上に立った。次に、海の上を大股で歩き始めた。



 入り江は大嵐の中で、強烈な風雨が暴れまくっていた。



 しかし、海の上を歩く大男には全く関係なかった。



 彼は最後に陸にたどりついた。



 そして、最後には海見山の階段に近づき、ゆっくりと登り始めた。



 その男、アテルイは最後に山の頂上にたどり着き、邪馬台国の神殿の前に近づいた。



 大きな声でどなった。



「八島の支配者。邪馬台国の女王よ。我の前に姿をみせよ! 」



 アテルイの呼び掛けに応じ、卑弥呼が神殿の前から出て来た。



「この大嵐は、あなたの鬼道が起しているのか。さすがに、我が父、世界を統べる皇帝陛下が一目置く方だ。しかし、我に鬼道は通じないぞ。我と一緒に我が帝国に来ていただこう。」



「私は、この邪馬台国を統べ、多くの人々の幸せを守る者。なんであなたの命令に従う必要があるのか」



「そう言われるとわかっていた。ではこれならばどうか―― 」



 アテルイはそう言うと、どこから出したのかチェーンを卑弥呼に向かって投げつけた。



 すると、そのチェーンは生き物のように卑弥呼に巻き付いた。



 卑弥呼は急いでそのチェーンをはずそうと、いろいろ試したが無駄だった。



 やがて、アテルイはチェーンで卑弥呼を縛り着けたまま引っ張って、海見山を降り始めた。



 2人はチェーンでつながったまま階段を降りていった。



 引っ張られる卑弥呼が、階段の333段目を踏んだ時、あることに気がついた。



「いた! これは2千年後の世界! 邪馬台国、八島の国の未来を託します。八‥‥ 」



 卑弥呼の体全体が太陽のように光った。



 その影響で、周囲がまるで真昼にように明るくなった。



 すぐに、光りは消え、卑弥呼は全ての力を使い尽くしたかのように、そこに倒れた。



「誰かに、鬼道の力、神秘の力を全て分け与えたな! もう、生きてはいまい。皇帝陛下に叱られる」



 アテルイは卑弥呼の体にかかっていたチェーンをはずした。



 そして、ゆっくりと階段を降りていった。



「卑弥呼は誰に力を分け与えたのだろうか」



 彼は階段の上を振り返り、倒れている卑弥呼を見た。



「333段目、時空の切れ目。あの若者だな、やがて我の前に現われるのか―――― 」
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