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11 王女との婚約
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大通りに出ると、入江八広はおんぶしていた登与を下ろした。
そしてその後は、コーラ酔いで体調を悪くした登与とよを入江八広と北川風香が両側で支えるような態勢で移動した。
途中で、空きタクシーがとまっていた。
「八広。あのタクシーであなたの神社の山のふもとまで行くわよ」
「ええ、だけど僕は自転車を置いていますから、自転車で追っかけます」
「そうしよ」
北川風香がタクシーで、コーラ酔いした登与をなんとか運んだ。
海見神社の山のふもとで2人は待っており、ほどなく入江八広が着いた。
○○を吐いたことで、登与のコーラ酔いはなんとか直っていた。
自転車が、ほどなく着いたことを見ると風香が言った。
「早い、早い、さすがね。私達がタクシーで着いてからほんの5分も経っていないわよ」
「あの、風香さん‥‥‥‥ 」
「気にしないで。今日はたまたまお金を多く持っていたから、また何かで埋め合わせをお願いするから」
タクシー代について案外あっさりと言われて、八広はかえって気にしてしまった。
「それから八広、今日私、あなたの所の神社に泊るから」
「えっ! 家の神社に泊るのですか」
「当たり前じゃない。現代と古代が産んだ絶世の美少女2人よ。ちゃんと保護しなさい」
「わかりました。本殿に寝具があるから、そこで泊ってください」
その後、八広と風香は登与を真ん中にして支えながら、海見神社の階段を登った。
「そうそう、333段目に注意しないといけないのね。何か目印はあるの」
「たぶん、僕と登与さんが近づくと明るく光るから分りますよ」
もう日が落ちて、周囲は暗くなっていた。
頂上まで登ると、神社の社やしろの正面階段の所に風香と登与は腰かけて。
「今、準備してきます。しばし、お待ちを」
八広は板張りの広い本殿の中に来客用のふとんをしいた。
がさがさしている物音を聞いて、父の総記が様子を見にきた。
「八広、来客用のふとんなんか持ち出して、何やってるんだ」
「うん。ちょっとね、今晩、この本殿に2人のお客さんを泊めていいかな」
「泊めるって誰を」
「知り合いの女の子2人さ」
「女の子か―――― しかも2人も―――― よし、父として御挨拶に参ろう」
実は、八広の母親は数年前に蒸発してしまい、どこに行ったのかわからないのであった。
それ以来、男1人で八広を育ててきた父親の総記は、八広に2人も女の子の知り合いがいたことが、とてもうれしかった。
「その女の子達は、今どこにいるんだ」
「本殿に入る階段の所だよ」
それを聞いて、総記は本殿を出て階段を見下ろした。
すると――――
歴史がある海見神社の宮司の家系に生まれた総記にはわかった。
2人のうちの1人の女の子から、神秘の霊気が出ていた。
しかも、それは高潔で、この海見神社のご神体が持つものとほとんど同じだった。
「あの子はいったい誰だ? 何か初めて出会ったような気がしないな」
総記は密かに深くそう考えていたが、チェックしていなかった女の子に気づかれた。
「あ――――っ お父様、私です。おぼえていますか? 」
自分をお父様と呼んだ女の子は、かなりの美少女で明るい性格であることがすぐにわかった。
「ど、どなた、でございましょうか。前にお会いしたことがあるのですか‥‥‥‥ 」
ものすごい美少女から、いきなり、お父様と呼ばれて総記はかなり面食らった。
「お忘れですか。5年前の夏休みに家族と1回お邪魔して、この本殿に一泊させていただきました」
そう言われて、彼もその時の様子を想い出した。
(そういえば、日本の古代史を研究している大学教授、北川サンとか言ったな。家族旅行もかねていらっしゃったことがあったな。しかし、その時の小学生のお子さんは‥‥‥‥ )
「あっ!!! 『5年目には男の子だったのに』と今、思いましたね。いいですよ、小学生の時の私はかなり日に焼けていて、よく、誰にでも男の子と間違えられました。ところで‥‥‥‥ 」
「はいはい、おっしゃりたいことは良くわかりますよ。5年前にお目にかかったであろう、私の妻、八広の母親、もう少し詳しく言うと超美人は実は蒸発してしまい、今は所在不明なんです」
その言葉を聞いて、今度は、登与が振り向いて言った。
「八広様には、そんなに悲しい御事情があったのですね。でも立派な方です、大きな悲しみを背負っていられることをおくびにも出しません」
(え――――っ お父さんびっくり!!! この娘も超超美少女じゃないか!!! )
「あの―――― 髪の長いお嬢さん(登与)、妻が蒸発したのは私と仲が大変悪くて離婚したとかいう、家庭不和とかの問題ではありません。実はほんとうに仲の良い夫婦だったのですよ」
総記は心の底で密かに思っていた。
(そうそう、1人は髪の長い純和風の美少女、もう1人は髪の短い現代風で再先端の美少女だな)
「八広様のお父様。奥様が今どこにいらっしゃるのか、ほんとうに心配なさっていると思います。私、霊感が強くて人探しもうまくできるのですよ。どうですか」
「はい。お嬢さんのお申し出はほんとうにうれしいです。でも私の妻がいなくなったのにかかわらず、私の気持ちは少しも落ち込んでいません。必ず、彼女は帰ってきます。お気持ちだけいただきます」
その日の夕食は、父の総記が腕を振るって御馳走を振る舞った。
八広は本殿を出て自分の家の中の自分の部屋に戻ると、その日の疲れが急激に出て、すぐ眠った。
今日、父親が言った言葉で、彼は少し気になっていることがあった。
(おとうさんはお母さんがいなくなったのに、ほんとうに少しも落ち込んでいないのかな? )
次の日、八広は朝早く起きて、神社の敷地の掃除を始めていた。
すると階段の降り口に、登与がもう起きて立っていた。
「登与さん。おはようございます。板張りの本殿だったから、あまりよく眠れませんでしたか」
「いえいえ。ほんとうによく眠れましたよ。だって昔昔、私はあの場所で毎日寝ていましたから」
「そこから見る景色はどうですか」
「『昔と全く変わっていないな』と思いました。でも、さっき、ある恐るべきことに気がつきました」
「それは??? 」
登与は入り江と外海がつながっている場所を指さした。
八広には特に異常がわからなかったが、登与が言った。
「災厄の海流が、この入り江に流れ込んでいます‥‥‥‥過去に何があったか理解しました」
そしてその後は、コーラ酔いで体調を悪くした登与とよを入江八広と北川風香が両側で支えるような態勢で移動した。
途中で、空きタクシーがとまっていた。
「八広。あのタクシーであなたの神社の山のふもとまで行くわよ」
「ええ、だけど僕は自転車を置いていますから、自転車で追っかけます」
「そうしよ」
北川風香がタクシーで、コーラ酔いした登与をなんとか運んだ。
海見神社の山のふもとで2人は待っており、ほどなく入江八広が着いた。
○○を吐いたことで、登与のコーラ酔いはなんとか直っていた。
自転車が、ほどなく着いたことを見ると風香が言った。
「早い、早い、さすがね。私達がタクシーで着いてからほんの5分も経っていないわよ」
「あの、風香さん‥‥‥‥ 」
「気にしないで。今日はたまたまお金を多く持っていたから、また何かで埋め合わせをお願いするから」
タクシー代について案外あっさりと言われて、八広はかえって気にしてしまった。
「それから八広、今日私、あなたの所の神社に泊るから」
「えっ! 家の神社に泊るのですか」
「当たり前じゃない。現代と古代が産んだ絶世の美少女2人よ。ちゃんと保護しなさい」
「わかりました。本殿に寝具があるから、そこで泊ってください」
その後、八広と風香は登与を真ん中にして支えながら、海見神社の階段を登った。
「そうそう、333段目に注意しないといけないのね。何か目印はあるの」
「たぶん、僕と登与さんが近づくと明るく光るから分りますよ」
もう日が落ちて、周囲は暗くなっていた。
頂上まで登ると、神社の社やしろの正面階段の所に風香と登与は腰かけて。
「今、準備してきます。しばし、お待ちを」
八広は板張りの広い本殿の中に来客用のふとんをしいた。
がさがさしている物音を聞いて、父の総記が様子を見にきた。
「八広、来客用のふとんなんか持ち出して、何やってるんだ」
「うん。ちょっとね、今晩、この本殿に2人のお客さんを泊めていいかな」
「泊めるって誰を」
「知り合いの女の子2人さ」
「女の子か―――― しかも2人も―――― よし、父として御挨拶に参ろう」
実は、八広の母親は数年前に蒸発してしまい、どこに行ったのかわからないのであった。
それ以来、男1人で八広を育ててきた父親の総記は、八広に2人も女の子の知り合いがいたことが、とてもうれしかった。
「その女の子達は、今どこにいるんだ」
「本殿に入る階段の所だよ」
それを聞いて、総記は本殿を出て階段を見下ろした。
すると――――
歴史がある海見神社の宮司の家系に生まれた総記にはわかった。
2人のうちの1人の女の子から、神秘の霊気が出ていた。
しかも、それは高潔で、この海見神社のご神体が持つものとほとんど同じだった。
「あの子はいったい誰だ? 何か初めて出会ったような気がしないな」
総記は密かに深くそう考えていたが、チェックしていなかった女の子に気づかれた。
「あ――――っ お父様、私です。おぼえていますか? 」
自分をお父様と呼んだ女の子は、かなりの美少女で明るい性格であることがすぐにわかった。
「ど、どなた、でございましょうか。前にお会いしたことがあるのですか‥‥‥‥ 」
ものすごい美少女から、いきなり、お父様と呼ばれて総記はかなり面食らった。
「お忘れですか。5年前の夏休みに家族と1回お邪魔して、この本殿に一泊させていただきました」
そう言われて、彼もその時の様子を想い出した。
(そういえば、日本の古代史を研究している大学教授、北川サンとか言ったな。家族旅行もかねていらっしゃったことがあったな。しかし、その時の小学生のお子さんは‥‥‥‥ )
「あっ!!! 『5年目には男の子だったのに』と今、思いましたね。いいですよ、小学生の時の私はかなり日に焼けていて、よく、誰にでも男の子と間違えられました。ところで‥‥‥‥ 」
「はいはい、おっしゃりたいことは良くわかりますよ。5年前にお目にかかったであろう、私の妻、八広の母親、もう少し詳しく言うと超美人は実は蒸発してしまい、今は所在不明なんです」
その言葉を聞いて、今度は、登与が振り向いて言った。
「八広様には、そんなに悲しい御事情があったのですね。でも立派な方です、大きな悲しみを背負っていられることをおくびにも出しません」
(え――――っ お父さんびっくり!!! この娘も超超美少女じゃないか!!! )
「あの―――― 髪の長いお嬢さん(登与)、妻が蒸発したのは私と仲が大変悪くて離婚したとかいう、家庭不和とかの問題ではありません。実はほんとうに仲の良い夫婦だったのですよ」
総記は心の底で密かに思っていた。
(そうそう、1人は髪の長い純和風の美少女、もう1人は髪の短い現代風で再先端の美少女だな)
「八広様のお父様。奥様が今どこにいらっしゃるのか、ほんとうに心配なさっていると思います。私、霊感が強くて人探しもうまくできるのですよ。どうですか」
「はい。お嬢さんのお申し出はほんとうにうれしいです。でも私の妻がいなくなったのにかかわらず、私の気持ちは少しも落ち込んでいません。必ず、彼女は帰ってきます。お気持ちだけいただきます」
その日の夕食は、父の総記が腕を振るって御馳走を振る舞った。
八広は本殿を出て自分の家の中の自分の部屋に戻ると、その日の疲れが急激に出て、すぐ眠った。
今日、父親が言った言葉で、彼は少し気になっていることがあった。
(おとうさんはお母さんがいなくなったのに、ほんとうに少しも落ち込んでいないのかな? )
次の日、八広は朝早く起きて、神社の敷地の掃除を始めていた。
すると階段の降り口に、登与がもう起きて立っていた。
「登与さん。おはようございます。板張りの本殿だったから、あまりよく眠れませんでしたか」
「いえいえ。ほんとうによく眠れましたよ。だって昔昔、私はあの場所で毎日寝ていましたから」
「そこから見る景色はどうですか」
「『昔と全く変わっていないな』と思いました。でも、さっき、ある恐るべきことに気がつきました」
「それは??? 」
登与は入り江と外海がつながっている場所を指さした。
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