2 / 71
2 最後の時の回想
しおりを挟む
グネビア王女がたずねた。
「検査神様、お聞きしたいことがあります。」
「王女よ、なんですか。」
「『生き返り』後の人生において、ランスロがワンチャンスをつかむことができるように、昔の記憶を頼りに私が助けてもよいのですか。」
「もちろんです。王女の助けがなければ、勇者がワンチャンスをつかむことはできないでしょう。」
「もしも、もしものことですが、ワンチャンスをつかむことができなければどうなるのでしょうか。」
「第1回目と同じ結末になります。あなたも勇者も魔王に殺されるでしょう。そして、あなたの国であるゴード王国は蹂躙され、国民達は悲惨な暗黒の毎日を暮らし続けなければなりません。」
「王女様、私にお任せください。あなたの騎士、ゴード王国の勇者として、2度とあのような最後の時がおとずれないよう、全身全霊でやりとげて見せます。」
「ランスロ、あなたはどんな時も逃げることもなく、いつも全力で敵に向かってくれます。自分のことはかえりみず、どんなに傷ついても勇者として進んでくれます。」
王女は涙ぐんであの最後の時を想い出してした。
‥‥‥‥
平和だったゴード王国の辺境に、ある日、魔族の大軍勢が現れた。
魔王軍は無慈悲なほど強かった。
そして、抵抗する者達を容赦なく消していった。
やがて、王都イスタンに近い所まで進軍すると、ぱったりと動かなくなった。
しかし、それから真の恐怖が始まった。
最強と呼ばれる魔王ザラは、イスタンに向けて数万匹の魔界の暗黒蝶を放った。
暗黒蝶の羽ばたきは、黒い鱗粉を大量に落していった。
鱗粉は人々の日常から光りを奪うとともに、とても強い恐怖を振りまいた。
そのため、人々の日常は恐怖に支配され、動くことさえできなくなった。
そして、魔王ザラの言葉が聞こえた。
「王都イスタンの人々よ、恐怖に耐えられないのなら、この世界で最強の私にすがりなさい。ゴード王国を捨てて、私の支配を受け入れなさい。今すぐ王都イスタンを捨てて降参し、こちらに作った魔界への入口を通るのです。魔界の住人になりなさい。」
その言葉を聞いて、恐怖に絶えきれなくなった王都イスタンの人々の半数、約50万人が降参し魔界への入口を通った。
彼らには、光りがほとんどない魔界での過酷な生活が待っていた。
その後、魔王軍の進軍が再び開始され、王都イスタンの攻防戦が始まった。
ゴード国軍と王都に残った住民は勇敢に戦い、ぎりぎりでなんとか1か月が過ぎた。
ある日の朝、王都イスタンの大手門の前に1人の背の高い女性戦士が立っていた。
ぞっとするような完璧な美しさで、額からは2本の角が出ていた。
「私は魔王ザラだ。これからゴードの騎士10人と一騎討ちを行う。そして、その中のたった1人でも私を傷つけることができれば、魔王軍を引き今回の侵攻を終わりにしよう。ただし、誰も傷つけることができなかったのなら、私が先頭に立ち総攻撃を開始する。」
魔王の申し出は、宮殿にいた国王ヘンリーに伝えられた。
「陛下、魔王ザラが我が方の騎士10人との一騎討ちを申し出ています。そしてその中の1人でも魔王を傷つけることができれば、侵攻を止めると言っています。」
騎士長ボーンが申し出た。
「陛下、私がまず、相手をしましょう。」
「騎士長ボーンよ。ありがとう。お前の他に我が国の騎士達の中で、上位10人を選んで一騎討ちを挑めば可能性が高まるのだろうか。」
「いいえ、陛下――これまでも時々、魔王ザラが先頭に立ち攻めてきたことがありましたが、魔王は圧倒的な力をもち、魔王1人のために我が軍1万人が犠牲になっています。どんなに強い騎士であっても、誰も傷をつけることなど絶対にできません。」
国王は、大勢が控えていた身分の高い騎士達に向かって叫んだ。
「おまえ達の中で魔王ザラとの一騎討ちに手を上げる者は、いったい何人いるのだ。無理強いはしないが、魔王に傷をつけて国を救った騎士には、褒美として王女グネビアと結婚し私の後継者とすることをここに約束するぞ。」
ところが、身分の高い騎士達は、自分の命を惜しんで1人も手をあげようとしなかった。
「ゼロか‥‥ 」
その時、そばに控えていた王女グネビアが言った。
「お父様、騎士ではありませんが。あそこに、しっかりと手を上げている者がいます。」
国王がそちらを見ると、はるか末席の一般兵にひざまずきながら確かに手を上げている者がいた。
「手を上げている者よ、身分は問わない。前に出て顔を見せてくれ。」
国王の承認を受けて、手を上げた一般兵は立ち上がり前に歩いてきた。
背のとても高い、筋肉質の兵士だった。
強い意思を秘めた両目と、特徴的なくせ毛が印象的だった。
「勇気を出して手をあげた者よ、名乗るが良い。」
「ランスロ、兵士ランスロでございます。」
良く通る神秘的な声が宮殿中に響いた。
「検査神様、お聞きしたいことがあります。」
「王女よ、なんですか。」
「『生き返り』後の人生において、ランスロがワンチャンスをつかむことができるように、昔の記憶を頼りに私が助けてもよいのですか。」
「もちろんです。王女の助けがなければ、勇者がワンチャンスをつかむことはできないでしょう。」
「もしも、もしものことですが、ワンチャンスをつかむことができなければどうなるのでしょうか。」
「第1回目と同じ結末になります。あなたも勇者も魔王に殺されるでしょう。そして、あなたの国であるゴード王国は蹂躙され、国民達は悲惨な暗黒の毎日を暮らし続けなければなりません。」
「王女様、私にお任せください。あなたの騎士、ゴード王国の勇者として、2度とあのような最後の時がおとずれないよう、全身全霊でやりとげて見せます。」
「ランスロ、あなたはどんな時も逃げることもなく、いつも全力で敵に向かってくれます。自分のことはかえりみず、どんなに傷ついても勇者として進んでくれます。」
王女は涙ぐんであの最後の時を想い出してした。
‥‥‥‥
平和だったゴード王国の辺境に、ある日、魔族の大軍勢が現れた。
魔王軍は無慈悲なほど強かった。
そして、抵抗する者達を容赦なく消していった。
やがて、王都イスタンに近い所まで進軍すると、ぱったりと動かなくなった。
しかし、それから真の恐怖が始まった。
最強と呼ばれる魔王ザラは、イスタンに向けて数万匹の魔界の暗黒蝶を放った。
暗黒蝶の羽ばたきは、黒い鱗粉を大量に落していった。
鱗粉は人々の日常から光りを奪うとともに、とても強い恐怖を振りまいた。
そのため、人々の日常は恐怖に支配され、動くことさえできなくなった。
そして、魔王ザラの言葉が聞こえた。
「王都イスタンの人々よ、恐怖に耐えられないのなら、この世界で最強の私にすがりなさい。ゴード王国を捨てて、私の支配を受け入れなさい。今すぐ王都イスタンを捨てて降参し、こちらに作った魔界への入口を通るのです。魔界の住人になりなさい。」
その言葉を聞いて、恐怖に絶えきれなくなった王都イスタンの人々の半数、約50万人が降参し魔界への入口を通った。
彼らには、光りがほとんどない魔界での過酷な生活が待っていた。
その後、魔王軍の進軍が再び開始され、王都イスタンの攻防戦が始まった。
ゴード国軍と王都に残った住民は勇敢に戦い、ぎりぎりでなんとか1か月が過ぎた。
ある日の朝、王都イスタンの大手門の前に1人の背の高い女性戦士が立っていた。
ぞっとするような完璧な美しさで、額からは2本の角が出ていた。
「私は魔王ザラだ。これからゴードの騎士10人と一騎討ちを行う。そして、その中のたった1人でも私を傷つけることができれば、魔王軍を引き今回の侵攻を終わりにしよう。ただし、誰も傷つけることができなかったのなら、私が先頭に立ち総攻撃を開始する。」
魔王の申し出は、宮殿にいた国王ヘンリーに伝えられた。
「陛下、魔王ザラが我が方の騎士10人との一騎討ちを申し出ています。そしてその中の1人でも魔王を傷つけることができれば、侵攻を止めると言っています。」
騎士長ボーンが申し出た。
「陛下、私がまず、相手をしましょう。」
「騎士長ボーンよ。ありがとう。お前の他に我が国の騎士達の中で、上位10人を選んで一騎討ちを挑めば可能性が高まるのだろうか。」
「いいえ、陛下――これまでも時々、魔王ザラが先頭に立ち攻めてきたことがありましたが、魔王は圧倒的な力をもち、魔王1人のために我が軍1万人が犠牲になっています。どんなに強い騎士であっても、誰も傷をつけることなど絶対にできません。」
国王は、大勢が控えていた身分の高い騎士達に向かって叫んだ。
「おまえ達の中で魔王ザラとの一騎討ちに手を上げる者は、いったい何人いるのだ。無理強いはしないが、魔王に傷をつけて国を救った騎士には、褒美として王女グネビアと結婚し私の後継者とすることをここに約束するぞ。」
ところが、身分の高い騎士達は、自分の命を惜しんで1人も手をあげようとしなかった。
「ゼロか‥‥ 」
その時、そばに控えていた王女グネビアが言った。
「お父様、騎士ではありませんが。あそこに、しっかりと手を上げている者がいます。」
国王がそちらを見ると、はるか末席の一般兵にひざまずきながら確かに手を上げている者がいた。
「手を上げている者よ、身分は問わない。前に出て顔を見せてくれ。」
国王の承認を受けて、手を上げた一般兵は立ち上がり前に歩いてきた。
背のとても高い、筋肉質の兵士だった。
強い意思を秘めた両目と、特徴的なくせ毛が印象的だった。
「勇気を出して手をあげた者よ、名乗るが良い。」
「ランスロ、兵士ランスロでございます。」
良く通る神秘的な声が宮殿中に響いた。
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる