私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

文字の大きさ
32 / 71

32 勇者の偽候補2

しおりを挟む
 休日のある日、ランスロとフィリップは寄宿舎の部屋にいた。



「ランスロ、この頃ゴード王国の広い範囲、さまざまな場所に魔族が出現していることをどう思う。あまり強くない低級魔族ばかりなのに大群ではなく、少ない数にまとまった現れるそうだ。当然、2~3人の騎士がわずかな時間で討伐している。」



「少なくとも、人間と戦うことを目的としているのではないと思います。戦術の講義の時、『威力偵察』ということを習いましたが、彼らは人間の騎士団がどのように配置され、それぞれに所属する騎士がどのくらいの実力なのか調査しているのではないですか。」



「なるほど、将来の本格的な侵攻のためにゴード王国の軍事力を調べているのか。だけど、勇者のことはどう考えているのだろう。人間の戦闘に立って魔族と戦い、最強の魔王と一騎討ちする勇者の候補の力は調べなくでもいいのかな。」



「僕も、魔族側にとって最も必要な情報だとは思います。」



「……そうか、だから士官学校に魔族を出現させているんだ。魔族は、ランスロが勇者の候補だと認識し始めているんじゃないのかな。」



「もし、そうだとすれば僕は毎日もっともっと努力して、勇者になった時どのくらいの力をもつのかわからないくらい成長する必要があります。相手にわからない底知れない力をもてば、戦いを有利に進めることができ、最後には勝利につながります。」



 その時、2人の部屋の扉がノックされた。

「コンラートです。中に入ってもいいでしょうか。」

「どうぞ。」



 ゴード王国最高の鍛冶師の一族、ゾイゼンのコンラートが入ってきた。

 彼はその背に、布に包んだ長い物を背負っていた。

「今日は、前にランスロさんとお約束した者をお届けに来ました。」



 その後、背負っていた長い物を机の上に置き布を取り外すと、きれいな鞘さやに収まった剣だった。

 その剣は、大人が使う剣より若干小ぶりの、子供にも使いやすい大きさだった。



「最新の注意を払い、細部に神経を集中させてこの刀を打ちました。まだ完全とはいえませんが、剣を振る使い手の神聖な力が純粋であれば純粋であるほど、その力を何倍にも増加させ助ける刀です。勇者の候補、ランスロさんに使ってほしいのです。」



「コンラート君、ありがとう。とてもうれしいです。僕はこの剣と一緒に毎日鍛錬して、最強の勇者になれるよう努力します。」



「伝説の『勇者の剣』聖剣『希望』にはまだまだ遠く及びません。だけど、我がゾイゼンの一族の技術の究極の目的、純粋で美しい金属の結晶が刀を形作っています。だから、少しずつ成長していくかもしれません。」



「楽しみです。ところで『勇者の剣』に『希望』という名前があるように、この剣にも名前をつけてあげたいのですが。この剣の作者であるランスロ君は、何か思いつきませんか。」



「実はこの剣を打ち上げた時、思いついた名前があったのです。『リトルウィン』という名前です。小さな勝利という意味ですが、僕はこの剣を打てた自分に満足していて、これから『希望』を打つために必要な足がかりができたと思ったからです。」



「『リトルウイン』ですか、とてもすばらいい名前ですね! 小さな勝利はとても価値があると僕も思います。『リトルウイン』にしましょう! 」







 ちょうどその頃、チャールズ辺境伯の城に、最高位の魔女サバトが多くの家臣を引き連れて来訪していた。

 豪勢な四頭立て馬車が止り、そこからサバトがゆっくり降りてきた。



 背が高く、その容姿はぞっとする完璧な美しさだった。

 出迎えた辺境伯と多くの家臣達は、心を完全に奪われ何もしゃべることができなかった。



 ようやく我に返った辺境伯が、たどたどしく話し始めた。

「最高位の魔女と名高いサバト殿、今日は我が城に遠くからお越しいただき心から歓迎します。」

 そう言った後、またサバトのとても美しい顔に見とれてしまった。



「ふふふふ、チャールズ辺境伯様、私には夫がおりますのよ。ロスチャイルド家の当主ゲールは、ゴード王国だけではなく世界屈指の大富豪。大実業家。そして、美形でもありますわ――ほんの少しだけ、チャールズ辺境伯様に勝るだけですけど。」



「失礼しました。さあ、我が城の中にお入りください。マリ様もどうぞ。」



 応接室にサバトが通されて座った。

 その横にはマリが控えていた。



 辺境伯が家臣に命じた。

「アルフレッドをここに連れてくるのだ。」

 しばらくして、辺境伯の息子のアルフレッドがおずおずと扉を開けて入ってきた。



 それを見たサバトは勢いよく立ち上がってアルフレッドに駆け寄り、抱きしめながら言った。

「なんて美しい方でしょう。私にはわかります。この方が真の勇者の候補です。」



 突然、ものすごい美人に抱きしめられたアルフレッドは顔を真っ赤にした。

 その様子を見て、サバトはアルフレッドを手から離し元の席に戻った。

「誠に申し訳ありませんでした。レディとして失格ですね。――マリ、出して! 」



 マリは持ってきた長いケースを机の上に置き、それを開いた。

 そこに収納されていたのは、黒い色が強く光る刀だった。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

処理中です...