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33 勇者の偽候補3
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「最高位の魔女サバト様、この刀が『勇者の剣』である聖剣『希望』ですか。」
チャールズ辺境伯が聞いた。
「はい、確かにこれが『希望』です。『希望』は真の勇者候補が所有し、候補が勇者に成長していくとともに力を高めるのです。真の勇者候補でいらっしゃるアルフレッド様であれば、この剣を手で握ることができます。」
「確か真の勇者候補でない者が手で握ろうとすると、最大限の高温になって拒否するのですね。手に大けがを負ってしまいます。」
「おっしゃるとおりですが、アルフレッド様は真の勇者候補であるので心配御無用です。私、最高位の魔女サバトが断言します。」
「そうか、それならば。アルフレッドよ、この剣を手で握ってみよ。」
「父上、私がもし偽の勇者候補なら手を焼かれてしまうのですね……」
アルフレッドは恐怖でなかなか剣を握ることができなかった。
その時だった。
サバトが大きな声でしかりつけた。
「臆病者! そんなことでどうするのですか! 私を信じられないのですか! 」
その言葉を聞いて、アルフレッドは反射的に長いケースの中に収納されていた剣に手が触れた。
「熱くない! 」
少しも熱くなかった。
感動したアルフレッドは、黒い色が強く光る刀を両手で握った。
最高位の魔女サバトがアルフレッドの前にひざまづいた。
「アルフレッド様、先ほどの私の大変御無礼な物言い、誠に申し訳ありませんでした。真の勇者の第一歩を踏み出していただくため、思わず口から出てしまいました。」
「サバト様は、僕のためにしかっていただいたのです。何も問題ありません。この剣を持つと心が晴れ晴れとします。誰にでも勝てそうです。」
「さすが、真の勇者候補ですね。アルフレッド様、あなたは強いのですから、どんどん敵をやっつけてください。切って切って切りまくるのですよ。」
「はい。もちろん。そうして、僕をばかにしていた国民達を仰天させます。」
「ほほほほ、楽しみでございます。これで、私の娘があなたに与えてしまった大きな屈辱の罪滅ぼしをすることができます。」
帰りの馬車の中、秘書のマリがサバトに言った。
「奥様、うまくいきましたね。これで、辺境伯の息子を我々のために働かせることができます。」
「そうね――今日、あの子が手に取ったのは狂気を増殖させる暗黒の剣。これから辺境伯の息子は、だんだん大きくなる自分の虚栄心に支配されていくのよ。勇者の候補は国民から最も嫌われるようになるに違いないわ。偽の勇者候補が、真の勇者候補の行く道を塞ふさぐのよ。」
しばらくして、突然、チャールズ辺境伯の領地に魔族の大群が出現した。
低級魔族ばかりだったが、今までは異なり数億もの数だった。
住民達は驚愕し恐れおののいた。
辺境伯は自分が保有する全軍に出撃を命じた。
ところが、すぐに魔族の数に圧倒された前線から緊急報告がされた。
「辺境伯様、魔族の大軍はとても弱い低級魔族ばかりなのですが、なにしろ数が多いのです。殺しても殺してもとりつかれて、最後は気力と体力を奪われて倒れてしまう兵士が多くなっています。」
「どうすればよいのだ! 既に王都イスタンに早馬をとばして、兄上に援軍を頼んでいるが、それでは間に合わないではないか。援軍が加わったとしても全軍の数は10万人、それに対して魔族は数億もいるのだぞ。」
その時、そばに控えていたアルフレッドが辺境伯に願い出た。
「父上、僕を出陣させてください。必ず魔族の大軍を壊滅させてみせます。」
「アルフレッド、何を言うのだ。おまえはまだ10歳で、魔族と戦った経験が全くない。低級魔族ばかりとはいえ数億の大軍だから、我が精鋭達が苦労しているのだ。」
「お忘れですか。私は最高位の魔女サバト様から、真の勇者の候補であるとお墨付きをいただきました。そして、『勇者の剣』聖剣、『希望』はこの手の中にあります。こういう時こそ、勇者は戦いの前面に出てその力を示すのです。」
「そうだな、最高位の魔女サバト様が、おまえを真の勇者の候補であると断言したのだったな。悪かった。それでは出陣しろ。真の勇者の候補であることを国民達に見せてやるのだ。そうそう、既におまえと同じ年で中級魔族キラーマンティスの大群を壊滅させた者がいたな。負けるな! 」
「はい、父上。直ちに出陣します。」
アルフレッドは魔族との戦いの前線に姿を現わした。
辺境伯軍の司令官が心配して言った。
「御子息様、我々を奮い立たせるために、ここまでお出でいただき心から感謝致します。危険を避けるため、できるだけこの司令部の中にいてください。」
「そのようなことはできません。既に父上からも了解を得ています。僕は前線に立ちます! これは父上からの命令だと理解してください。」
「――わかりました。今、前線にお連れします。」
数人の騎士が回りを護衛しながら、アルフレッドを前線に案内した。
前線にすき間なく並べられた防護楯の中に、アルフレッドは着いた。
地面や空が見えなくなるほど低級魔族の大群がいた。
そして絶え間なく動いて、防護楯に突進してくる音がうるさいほどだった。
前線で指揮をしていた騎士がたずねた。
「最初の戦い方を変えて、ひたすらこの防護楯の中で耐えて、たまに侵入してくる魔族だけを切り伏せています。御子息、どうなされますか。」
「今すぐ前に出ます。」
そう言うと、あっけにとられる騎士や兵士達をそのままにして、アルフレッドは防護楯の外に出た。
すぐに腰に差している剣を抜いた。
すると、タクトを振られたかのように魔族の動きがピタリと止った。
そして、魔族の大群は後退し始めた。
チャールズ辺境伯が聞いた。
「はい、確かにこれが『希望』です。『希望』は真の勇者候補が所有し、候補が勇者に成長していくとともに力を高めるのです。真の勇者候補でいらっしゃるアルフレッド様であれば、この剣を手で握ることができます。」
「確か真の勇者候補でない者が手で握ろうとすると、最大限の高温になって拒否するのですね。手に大けがを負ってしまいます。」
「おっしゃるとおりですが、アルフレッド様は真の勇者候補であるので心配御無用です。私、最高位の魔女サバトが断言します。」
「そうか、それならば。アルフレッドよ、この剣を手で握ってみよ。」
「父上、私がもし偽の勇者候補なら手を焼かれてしまうのですね……」
アルフレッドは恐怖でなかなか剣を握ることができなかった。
その時だった。
サバトが大きな声でしかりつけた。
「臆病者! そんなことでどうするのですか! 私を信じられないのですか! 」
その言葉を聞いて、アルフレッドは反射的に長いケースの中に収納されていた剣に手が触れた。
「熱くない! 」
少しも熱くなかった。
感動したアルフレッドは、黒い色が強く光る刀を両手で握った。
最高位の魔女サバトがアルフレッドの前にひざまづいた。
「アルフレッド様、先ほどの私の大変御無礼な物言い、誠に申し訳ありませんでした。真の勇者の第一歩を踏み出していただくため、思わず口から出てしまいました。」
「サバト様は、僕のためにしかっていただいたのです。何も問題ありません。この剣を持つと心が晴れ晴れとします。誰にでも勝てそうです。」
「さすが、真の勇者候補ですね。アルフレッド様、あなたは強いのですから、どんどん敵をやっつけてください。切って切って切りまくるのですよ。」
「はい。もちろん。そうして、僕をばかにしていた国民達を仰天させます。」
「ほほほほ、楽しみでございます。これで、私の娘があなたに与えてしまった大きな屈辱の罪滅ぼしをすることができます。」
帰りの馬車の中、秘書のマリがサバトに言った。
「奥様、うまくいきましたね。これで、辺境伯の息子を我々のために働かせることができます。」
「そうね――今日、あの子が手に取ったのは狂気を増殖させる暗黒の剣。これから辺境伯の息子は、だんだん大きくなる自分の虚栄心に支配されていくのよ。勇者の候補は国民から最も嫌われるようになるに違いないわ。偽の勇者候補が、真の勇者候補の行く道を塞ふさぐのよ。」
しばらくして、突然、チャールズ辺境伯の領地に魔族の大群が出現した。
低級魔族ばかりだったが、今までは異なり数億もの数だった。
住民達は驚愕し恐れおののいた。
辺境伯は自分が保有する全軍に出撃を命じた。
ところが、すぐに魔族の数に圧倒された前線から緊急報告がされた。
「辺境伯様、魔族の大軍はとても弱い低級魔族ばかりなのですが、なにしろ数が多いのです。殺しても殺してもとりつかれて、最後は気力と体力を奪われて倒れてしまう兵士が多くなっています。」
「どうすればよいのだ! 既に王都イスタンに早馬をとばして、兄上に援軍を頼んでいるが、それでは間に合わないではないか。援軍が加わったとしても全軍の数は10万人、それに対して魔族は数億もいるのだぞ。」
その時、そばに控えていたアルフレッドが辺境伯に願い出た。
「父上、僕を出陣させてください。必ず魔族の大軍を壊滅させてみせます。」
「アルフレッド、何を言うのだ。おまえはまだ10歳で、魔族と戦った経験が全くない。低級魔族ばかりとはいえ数億の大軍だから、我が精鋭達が苦労しているのだ。」
「お忘れですか。私は最高位の魔女サバト様から、真の勇者の候補であるとお墨付きをいただきました。そして、『勇者の剣』聖剣、『希望』はこの手の中にあります。こういう時こそ、勇者は戦いの前面に出てその力を示すのです。」
「そうだな、最高位の魔女サバト様が、おまえを真の勇者の候補であると断言したのだったな。悪かった。それでは出陣しろ。真の勇者の候補であることを国民達に見せてやるのだ。そうそう、既におまえと同じ年で中級魔族キラーマンティスの大群を壊滅させた者がいたな。負けるな! 」
「はい、父上。直ちに出陣します。」
アルフレッドは魔族との戦いの前線に姿を現わした。
辺境伯軍の司令官が心配して言った。
「御子息様、我々を奮い立たせるために、ここまでお出でいただき心から感謝致します。危険を避けるため、できるだけこの司令部の中にいてください。」
「そのようなことはできません。既に父上からも了解を得ています。僕は前線に立ちます! これは父上からの命令だと理解してください。」
「――わかりました。今、前線にお連れします。」
数人の騎士が回りを護衛しながら、アルフレッドを前線に案内した。
前線にすき間なく並べられた防護楯の中に、アルフレッドは着いた。
地面や空が見えなくなるほど低級魔族の大群がいた。
そして絶え間なく動いて、防護楯に突進してくる音がうるさいほどだった。
前線で指揮をしていた騎士がたずねた。
「最初の戦い方を変えて、ひたすらこの防護楯の中で耐えて、たまに侵入してくる魔族だけを切り伏せています。御子息、どうなされますか。」
「今すぐ前に出ます。」
そう言うと、あっけにとられる騎士や兵士達をそのままにして、アルフレッドは防護楯の外に出た。
すぐに腰に差している剣を抜いた。
すると、タクトを振られたかのように魔族の動きがピタリと止った。
そして、魔族の大群は後退し始めた。
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