私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

文字の大きさ
34 / 71

34 偽の勇者候補4

しおりを挟む
 防護楯の中で見ていた騎士や兵士達はびっくりした。

 地面や空を覆い尽くしていた魔族が、みるみるうちに消えてしまった。



 わ―――――っ

 辺境伯軍全体から大歓声が上がった。

「御子息、見事でございます。魔族はあなた様を恐れてすべて逃げ去りました。」

 感動した司令官がアルフレッドに言った。



「やっと、自分の実力を見せることができました。実は、僕は真の勇者候補なのです。そして、この剣は『勇者の剣』である聖剣『希望』です。」



「なるほど、それでは全軍に御子息のことを号令しましょう。」

 その後、司令官は全軍に大号令をかけた。



「魔族は、真の勇者候補であるアルフレッド様を恐れて全て逃げ去った。私に続けてアルフレッド様を讃たたえるのだ。真の勇者候補。アルフレッド、万歳! 」



「真の勇者候補。アルフレッド、万歳! 真の勇者候補。アルフレッド、万歳! ………………」



 辺境伯軍3万人が一斉に声を合わせてアルフレッドを讃えた。

 その歓声を心地よく聞いていた彼は考えていた。



(あの娘は僕を見直してくれるだろうか…… 剣術大会で僕に勝ったザラという女の子、とても強かったけど、とても美しかったな…… 最後は優勝した平民のランスロに負けて唇にキスしたみたいだけど、僕はランスロに必ず勝って、彼女を振り向かせるぞ! )







 その日から、ゴード王国全域で不思議なことが連続して起こった。

 さまざまな地域で、低級魔族が数億の大群で出現したのだ。



 既に辺境伯の領地での戦いは全国に知れ渡っており、その息子のアルフレッドは、聖剣『希望』を使う真の勇者ではないかとうわさが広まっていた。



 各地域の領主達は、こぞって辺境伯に援軍を求めた。

 合せて、アルフレッドの出陣を求めたのである。



 結果は全て同じで、アルフレッドが前線に出て剣を抜くと、魔族は全て退却し消えてしまった。



 城に引きこもっていた彼は、だんだん自分に自信をもった。

 やがて、ほんとうに自分が真の勇者の候補であり、人々が自分を讃たたえるのは当たり前だと思うようになり、ひどく傲慢になっていった。



 ある田舎の領地で魔族達を退却させた後、お礼に領主がアルフレッドに食事を振る舞った。

 食事が始まってすぐ、アルフレッドがテーブルの上に並んでいた料理をすぐに乱暴に手で振り払い、料理は全て床に散乱してしまった。



 領主がたずねた。

「アルフレッド殿、どうなされました。何かお気に障りましたか。」



「領主殿、その意味もわからないのですか。だから田舎の領主は困る。僕は王弟チャールズ辺境伯の息子で王位継承権をもつ者ですよ。そして、みなさんのために戦い続ける真の勇者候補なのです。その僕にこんな田舎料理など――」



 彼は立ち上がり、何も言わず無礼に帰ってしまった。



 それからも、このようなことが何回も続き、性格が悪い最悪な者が「真の勇者候補」になったという噂うわさが広がっていった。







 士官学校の講堂の廊下をランスロとザラが歩いていた。

 すると、廊下の壁に1人の男子学生が何かを持って寄りかかっていた。



 ランスロとザラがその前を通り過ぎようとすると、いきなりその学生がザラの前に出て、行く手をふさいだ。

 そして豪華な花束をザラに差し出した。



「マドモアゼル。これはお久し振りにお会いした記念です。」

「だれ? 」



「いやですね、剣術大会で最高の戦いをした相手です。そして今、ゴード王国の中で真の勇者候補として名高き者です。」

「だれ? 」



「王弟チャールズ辺境伯の息子で、王位継承権をもつアルフレッドです。」

「だれ? 」



「照れ隠しで僕を知らないように装っているのでしょう。それでは、今から超豪華な宮廷料理をご馳走

しますから、外に待たせている馬車にお乗りください。」



「ほんとうに王位継承権をもつのか。世の中の常識すら知らないのに、王位継承権があるとは思えない。私は今、『ランスロと長く話す』という生きるための最高の時を楽しんでいたのだ。国民の生きる楽しみを簡単に奪うとは最低だな。」



「ザラさん。そのような錯乱しているようなことをおっしゃるとは、とても信じられません。――わかりました。この横にいるランスロに脅かされているのですね。僕があなたからランスロから引き離して差し上げます。」



 その後、アルフレッドはランスロの方を憎々しげに見た。

「君が偽の勇者候補だな。魔族の大群を壊滅させてアベロン市の人々を救ったことは、まあ認めるよ。でも1回だけだろ。運がよかっただけかもしれないよね。」



 アルフレッドの挑発をランスロは冷静に少し微笑んで聞いていたが、隣にいたザラの顔が一瞬にして大きく変わった。

 完璧に美しい顔が心の底からの怒りに包まれた。



「どこかの王位継承権をもつ方は、低級魔族を選んでいらっしゃるらしい! なぜか戦わず剣を抜いただけで低級魔族は後退していく! ランスロが戦ったのは中級魔族のキラーマンティスだ! その中級魔族と戦って全て壊滅させたのだぞ! 」



 アルフレッドはなおも食い下がった。

「『勇者の剣』である聖剣『希望』を僕は持っているんだ。それに比べて、偽の勇者は得体の知れない価値の無い剣しか持っていない。」



 その言葉を聞いた瞬間、ランスロの顔から微笑みが消えた。

 それを察したザラがランスロの気持ちを代弁した。



「ランスロが今、腰に刺している剣は相当な力を発している。たぶん、ゴード王国最高の鍛冶屋、ゾイゼンの一族の中でも一番の名工が、心を込めて打ったものだろう。母様からもらった聖剣『希望』の何倍も価値のある剣だぞ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します

スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」 眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。 隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。 エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。 しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。 彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。 「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」 裏切りへのカウントダウンが今、始まる。 スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

処理中です...