私の勇者ならワンチャンあれば十分です!全く問題ありません!!

ゆきちゃん

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35 偽の勇者候補5

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 ザラがランスロの剣をほめると、アルフレッドは自信満々に提案した。

「どうですかランスロ君、しっかり甲冑を着ければ、真剣で戦っても大きなケガはしないはずです。僕と真剣で決闘しませんか。剣だけではなく、君の価値もはっきりさせることができるはずです。」



 アルフレッドの挑発に、ランスロは乗らなかった。

「折角のお申し出ですがお断りします。僕は人間と戦うために、剣術の訓練をしているわけではありません。何年か後にやってくる魔族の大侵攻に備えるためです。そして魔王と戦うためです。」



「どうしても僕から逃げたいのですか。やはり君は臆病者だ。臆病者が勇者になれるはずがない。」



「違いますよ。臆病者であることも大切なのです。自分を過信して、他人を下に見下すようなことでは勇者とはいえません。アルフレッド様、王位継承権をもつ方として恥ずかしくないようになられることを願っております。」



 ランスロは深くおじぎをして、その場を去った。


「ランスロ。ほれぼれとするくらい立派な態度だったな。」

 そう言ってザラは、彼の後ろからふざけて抱きついた。



 その様子を見ながら、アルフレッドは大変怒っていた。

「平民出であるのに、僕を差し置いて真の勇者候補きどりか。許さない! 絶対に許さないぞ! 」







 ロスチャイルド家の書斎で、当主のゲールが妻のサバトとお茶を飲んでいた。

「我が愛しの妻の薬が効き過ぎたようだ。まだ未熟な子供をあんなに増長させるなんて、かわいそうだな。もう、止めてやることはできないだろうか。」



「偽の勇者候補を仕立てることで、勇者に対する人間の期待を砕き、失望させるという目的は、残念ながら達成できませんでした。娘のザラがとても気に入っているランスロを真の勇者候補だと信じている人々が大変多いのです。」



「私も大変気に入っているランスロ君を未来の勇者だと信じるのは、ある意味では当然のことだったな。――偽の勇者候補はもう終わりにしよう。我が愛する妻よ、うまく終わらせないだろうか。」



「そうですね。貴方あなたのおっしゃるとおりに、うまく終わらせるかどうかはわかりません。

王弟の息子アルフレッドをザラは大変嫌っています。ランスロをひどく挑発して、挙げ句の果てには決闘を申し込んだそうです。」



「ザラがそんなに嫌っているのか。それならばしようがない。増長した心を叩きたたきのめしても問題無いな。アスタロトよ、偽の勇者候補の化けの皮をはがすのだ。」



「旦那さま。御意のままに。」







 王都イスタン近郊の草原は、さまざな花々が咲き乱れとてもきれいだった。

 季節も大変よい時期で、王都から多くの国民が花々を見にピクニックに来ていた。

 その数は何万人にも及び、人々はとても楽しい時間を過ごしていた。



 草原の中で特別な空間があった。

 国王ヘンリーが王族を引き連れてピクニックに来ていたのだった。

 国王が王女に聞いた。



「グネビアよ。今日の草原に来たのは正解だったな。私を誘ってくれてありがとう。」

「父様。国王のお仕事は激務で、心や体に大きなストレスになっています。たまには、このような美しい自然の中で十分にお休みになられなければ身がもちません。」



「そうだな。太陽に照らされた自然の色はなんときれいな光景を造ることよ。王宮の中には有名画家が描いた多くの風景画があるか、この光景には全く及ばないな。ところで、先ほどから、いやにそわそわしているが、何か心配ごとでもあるのか。私に申してみよ。」



「はい、父様。実は今日、父様に会っていただきたい人がいるのです。」



「え――――っ。国民の中での常識では、娘が父親にそのように言うのは結婚相手を紹介する時だということだが。まさか! 」



「違います。でも、父様の今の反応を見て気が変わりました。今日、父様に会っていただきたい人と私は結婚しても、いやまだ10歳だから婚約しても良いのです…………父様に会っていただく目的を変えようかしら。」



「グネビア、それは誰だ。」

「ただ今、御前に。」



 しばらくして、士官学校の制服を着た学生が王の前に進んでひざまづいた。



「今日は、拝謁の名誉を賜たまわり、心から感謝致します。私は貧困の平民の出身ですが、陛下の御慈悲で士官学校に入学を許されたランスロでございます。」



「うん。そちのことは大変よく知っているぞ。アベロン市民100万人の命を救った英雄だ。私の回りでも『真の勇者候補』だと断言する者が多いぞ。たった一人で中級魔族キラーマンティスの大群に立ち向かった勇気、実力は見事だ!!! 」



「陛下、過分なお言葉をいただき感謝致します。」



「グネビアよ。会わせたいのはランスロだったのか。ランスロならば婚約することを許そう。」



「父様、とてもうれしいですけど、急に話を進めすぎます。」



「はははははは。」



 国王はとても愉快に笑い始めたが、グネビアとランスロは突然のことでどぎまぎして、顔を赤くして黙り込んでいた。







 瞬間的に回りが暗くなった。

 そして、周囲には多くの人々の悲鳴が聞こえてきた。

 何万もの人々がピクニックを楽しんでいた空が、魔族の大群で覆い尽くされていた。
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