69 / 71
70 テイク・ラスト・ワンチャンス5
しおりを挟む
大きな穴である連結空間から完全に出て、ゴーレムのクレイは立ち上がった。
見上げると1つの山が動いていると思えるくらい、かなり背が高かった。
「魔界ではたびたび姿を見たことがあったが、人間界で見るとさらに巨大に見えますね。」
炎人バーンが驚きの声を上げた。
連結空間から出た後、クレイはそこで止り動かなくなった。
「やはり、1000年魔王から指示を受けている。連結空間を守ることに撤するのか。」
魔神グリゲイドが言うと、バーンもうなづいた。
「それでは、我が動かすしかないか。」
魔神はそう言うと、手で印を結んで詠唱した。
「疾風――」
先の戦いの影響で、回復度合いはまだ半分程度だったが、魔神は今自分の能力で出しうる最大の魔力を使い暴風を起した。
それはゴーレムのクレイを横殴りに強く吹き付けた。
しかし、巨大な体は少し横に動いただけで、あいかわらず連結空間をカバーする場所に立っていた。
「やはり、1億人の魔族と戦った魔力の消耗は激しいのか。」
悔しそうに魔神は言った。
「どうでしょうか。我々獣人がクレイを挑発して、動くかどうか試してみては。」
先に人間側に10万人の眷属とともに加わっていた獣人レオが提案した。
「そうだ、お願いしましょう。」
炎人バーンの了解を得て、獣人の中から特に早く動くことができる者が飛び出し、ゴーレムのクレイを挑発し始めた。
「でかいだけの土人形、俺たちを捕まえられるか。」
「ダンスができるかい。こんな感じさ。」
「ほんとうに生きているのかい。うすのろやろう。」
その様子を見て魔神グリゲイドが言った。
「バーン殿。いかに戦いに必要でも、あんな下品な言い方は許されるのか」
「そうです。そうですが、仕方が――」
バーンは最後の言葉をごまかそうとしたが続けた。
「――ゴーレムのクレイは、はるか古代に人間の伝説的な王が、自分の城を守るために生み出した人工の生命体。生命がない機械のようなものだから、挑発してもその意味を深く受け取らないんです。連結空間を守るため動くなと命令されたら、動く可能性は少ない。どうすれば…………」
獣人達は、聴くに堪えない挑発をしつこく続けた。
彼らは一生懸命にやっていたが、効果は全くなくゴーレムのクレイは全く動かなかった。
「あまり長くなると、魔界が魔族8億人の進軍に踏み切るだろう。ここはもう仕様がない。私は今できる最高絶対高温の炎球を放とう。クレイがそれを土で作られた自分の体で阻止できるかどうかは、かけになるのだけれど。」
炎人バーンが決心したと同時に、戦場にハプニングが発生した。
背中に何かを入れている袋を背負い、走り回っている狼の獣人がいた。
ところが、あんまり複雑な動きをした瞬間、背中の袋を落してしまった。
すると中から、まだ獣人に成りきっていない3匹の子狼が飛び出し、3匹そろって走り出した。
「えっ! 戦場に子連れとは――」
指揮をしていた獣人レオが驚いて叫んだ。
3匹の子狼は獣人達が走り回っている真ん中に出てしまい。踏みつぶされそうになった!
ところが、3匹の子狼の回りに突然壁ができて、獣人達をブロックした。
戦場にいた誰もが、いったい何が起こったのか全くわからなかった。
しかし、落ち着いてよく見るとゴーレムのクレイだった。
立っていたクレイが、子狼達があぶないことを察知して、かがんで手を差し伸べたのだった。
序列第1位とされた炎人バーンは、強いだけではなく状況の理解と判断が素早かった。
クレイがかがんだことで、連結空間の上部までの空間が開いた。
バーンは一瞬で、できる限り最大の魔力を体に集中させ炎のかたまりとなり絶対高温の炎球を放った。
炎球は見事に連結空間の上部に命中して、絶対高温が連結空間を形づくる魔術式を解かし始めた。
連結空間は全て溶かされ消滅したようだった。
あっけない最後だった。
バーンが言った。
「これでは、魔界と人間界との間の次元空間が少ない場所の調査、魔術式の構築をゼロから始めなければならない。魔族の大群が通過できる大きな連結空間は、後百年くらいできないだろう。」
竜人ドランが獣人レオに、半ばふざけたような口ぶりで話しかけた。
「獣人族の長レオどの、あなたの部下には戦場に子連れで来るような戦士がいますね。それは軍法違反ではないですか。厳しいレオ殿がどのように処分されるんだろう? 」
レオは困ったような口調で答えた。
「それは………………家族サービスも大切な仕事だ。だから問題ない。」
それを聞いてドランはにっこりと微笑んだ。
ゴーレムのクレイは座り込んで、3匹の子狼と遊び始めていた。
その時だった。その場にいた上級魔族5名は巨大な力を感じた。
炎人バーンが叫んだ。
「来た! 早く勇者ランスロに連絡を! 」
全部消滅したと思われた魔界との連結空間は、ほんのわずかな面積だけ残っていた。
そして、まぶしいほどの赤い光りで輝いた。
そこから投射されるように、背の高い完璧な美しさをもつ女性が現れた。
彼女の背には黒を基調にした剣がしばられていた。
髪が長い完璧な美貌の顔が笑いながら言った。
その両目は赤く光っていた。
「おやおや、出迎え御苦労だな。私に服従しなければならない5人の上級魔族達。 」
見上げると1つの山が動いていると思えるくらい、かなり背が高かった。
「魔界ではたびたび姿を見たことがあったが、人間界で見るとさらに巨大に見えますね。」
炎人バーンが驚きの声を上げた。
連結空間から出た後、クレイはそこで止り動かなくなった。
「やはり、1000年魔王から指示を受けている。連結空間を守ることに撤するのか。」
魔神グリゲイドが言うと、バーンもうなづいた。
「それでは、我が動かすしかないか。」
魔神はそう言うと、手で印を結んで詠唱した。
「疾風――」
先の戦いの影響で、回復度合いはまだ半分程度だったが、魔神は今自分の能力で出しうる最大の魔力を使い暴風を起した。
それはゴーレムのクレイを横殴りに強く吹き付けた。
しかし、巨大な体は少し横に動いただけで、あいかわらず連結空間をカバーする場所に立っていた。
「やはり、1億人の魔族と戦った魔力の消耗は激しいのか。」
悔しそうに魔神は言った。
「どうでしょうか。我々獣人がクレイを挑発して、動くかどうか試してみては。」
先に人間側に10万人の眷属とともに加わっていた獣人レオが提案した。
「そうだ、お願いしましょう。」
炎人バーンの了解を得て、獣人の中から特に早く動くことができる者が飛び出し、ゴーレムのクレイを挑発し始めた。
「でかいだけの土人形、俺たちを捕まえられるか。」
「ダンスができるかい。こんな感じさ。」
「ほんとうに生きているのかい。うすのろやろう。」
その様子を見て魔神グリゲイドが言った。
「バーン殿。いかに戦いに必要でも、あんな下品な言い方は許されるのか」
「そうです。そうですが、仕方が――」
バーンは最後の言葉をごまかそうとしたが続けた。
「――ゴーレムのクレイは、はるか古代に人間の伝説的な王が、自分の城を守るために生み出した人工の生命体。生命がない機械のようなものだから、挑発してもその意味を深く受け取らないんです。連結空間を守るため動くなと命令されたら、動く可能性は少ない。どうすれば…………」
獣人達は、聴くに堪えない挑発をしつこく続けた。
彼らは一生懸命にやっていたが、効果は全くなくゴーレムのクレイは全く動かなかった。
「あまり長くなると、魔界が魔族8億人の進軍に踏み切るだろう。ここはもう仕様がない。私は今できる最高絶対高温の炎球を放とう。クレイがそれを土で作られた自分の体で阻止できるかどうかは、かけになるのだけれど。」
炎人バーンが決心したと同時に、戦場にハプニングが発生した。
背中に何かを入れている袋を背負い、走り回っている狼の獣人がいた。
ところが、あんまり複雑な動きをした瞬間、背中の袋を落してしまった。
すると中から、まだ獣人に成りきっていない3匹の子狼が飛び出し、3匹そろって走り出した。
「えっ! 戦場に子連れとは――」
指揮をしていた獣人レオが驚いて叫んだ。
3匹の子狼は獣人達が走り回っている真ん中に出てしまい。踏みつぶされそうになった!
ところが、3匹の子狼の回りに突然壁ができて、獣人達をブロックした。
戦場にいた誰もが、いったい何が起こったのか全くわからなかった。
しかし、落ち着いてよく見るとゴーレムのクレイだった。
立っていたクレイが、子狼達があぶないことを察知して、かがんで手を差し伸べたのだった。
序列第1位とされた炎人バーンは、強いだけではなく状況の理解と判断が素早かった。
クレイがかがんだことで、連結空間の上部までの空間が開いた。
バーンは一瞬で、できる限り最大の魔力を体に集中させ炎のかたまりとなり絶対高温の炎球を放った。
炎球は見事に連結空間の上部に命中して、絶対高温が連結空間を形づくる魔術式を解かし始めた。
連結空間は全て溶かされ消滅したようだった。
あっけない最後だった。
バーンが言った。
「これでは、魔界と人間界との間の次元空間が少ない場所の調査、魔術式の構築をゼロから始めなければならない。魔族の大群が通過できる大きな連結空間は、後百年くらいできないだろう。」
竜人ドランが獣人レオに、半ばふざけたような口ぶりで話しかけた。
「獣人族の長レオどの、あなたの部下には戦場に子連れで来るような戦士がいますね。それは軍法違反ではないですか。厳しいレオ殿がどのように処分されるんだろう? 」
レオは困ったような口調で答えた。
「それは………………家族サービスも大切な仕事だ。だから問題ない。」
それを聞いてドランはにっこりと微笑んだ。
ゴーレムのクレイは座り込んで、3匹の子狼と遊び始めていた。
その時だった。その場にいた上級魔族5名は巨大な力を感じた。
炎人バーンが叫んだ。
「来た! 早く勇者ランスロに連絡を! 」
全部消滅したと思われた魔界との連結空間は、ほんのわずかな面積だけ残っていた。
そして、まぶしいほどの赤い光りで輝いた。
そこから投射されるように、背の高い完璧な美しさをもつ女性が現れた。
彼女の背には黒を基調にした剣がしばられていた。
髪が長い完璧な美貌の顔が笑いながら言った。
その両目は赤く光っていた。
「おやおや、出迎え御苦労だな。私に服従しなければならない5人の上級魔族達。 」
0
あなたにおすすめの小説
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜
丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。
与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。
専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、
失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。
そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、
セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。
「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」
彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、
彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。
嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、
広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、
独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。
栄養と愛情を取り戻したセレナは、
誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、
社交界で注目される存在となる。
一方、セレナを失った伯爵家は、
彼女の能力なしでは立ち行かず、
ゆっくりと没落していくのだった――。
虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
「地味ブス」と捨てられた私、文化祭の大型スクリーンで王子様の裏の顔を全校生に配信します
スカッと文庫
恋愛
「お前みたいな地味女、引き立て役にもならないんだよ」
眼鏡にボサボサ頭の特待生・澪(みお)は、全校生徒が見守る中、恋人だった学園の王子・ハルトから冷酷に捨てられた。
隣には、可憐な微笑みを浮かべる転校生・エマ。
エマの自作自演により「いじめの犯人」という濡れ衣まで着せられ、学園中から蔑まれる澪。
しかし、彼女を嘲笑う者たちはまだ知らない。
彼女が眼鏡の奥に、誰もが平伏す「真実の美貌」と、学園さえも支配できる「最強の背景」を隠していることを――。
「……ねぇ、文化祭、最高のステージにしてあげる」
裏切りへのカウントダウンが今、始まる。
スクリーンの裏側を暴き、傲慢な王子と偽りのヒロインを奈落へ突き落とす、痛快・学園下剋上ファンタジー!
【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜
るあか
ファンタジー
僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。
でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。
どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。
そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。
家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます
なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。
過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。
魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。
そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。
これはシナリオなのかバグなのか?
その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。
【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる