Ｗ転生してあなたを必ず助けます！悲劇のヒロインには絶対なりません！～私のハートは重いのです～

86 現実世界の２人ｒｅｒｅ

　北川風香と夜見は、自分達の世界に戻ってきた。

「ほとんど同じですけれど、吸い込む空気が少し違いますね。でも、とても懐かしくて落ち着きます。」
　そう言った後、彼女が時計を見ると異世界に瞬間移動してから戻るまで、わずか３分しか進んでいなかった。

「姫様、これでＷ転生の旅も終わりになりました。人間の社会のビジネス人として、魔界の宝石レッドハート、魔王として、これからも毎日大変です。」

「これからも大変です。けれど私には人生を生きていくための基礎、ささえるものがしっかりとありますから大丈夫ですよ。」
「それは何でしょうか？」

　夜見のその問いかけに、彼女は笑って答えただけだった。

「夜見さん、そろそろ佐藤さんの精神体がこちらの世界に着いて体に中に入り、意識が覚醒するはずです。彼をお迎えに病院に行きたいと思うのですが。」

「急がれた方が良いと思います。ところで、少し体全体が汚れていらっしゃいます。このまま行かないほうが………」

「ほんとうは一旦自分の部屋に帰り、シャワーを浴びて、メイクや服のコーディネートをばっちりしたいのですが、もう時間がありません。昔、何かのアニメのシーンであったのですが、魔術で一気にやりたいと思うのですが。」

「姫様、もちろん、そうされても全く問題ありません。魔術は私が使って良いでしょうか。」
「お願いします。」

　彼女に向かって夜見が手を振ると、彼女の美しさがさらに引き立つ姿に変わった。
「夜見さん、言って来ます。」
「いってらっしゃいませ。」

　夜見は思った。
（姫様の人生を生きていくための基礎、ささえるもの。それはもちろん………）

　………

　北川風香は、大きな病院の１階にある大待合室を歩いて、エレベータに近づいた。その首には赤いハートのネックレスがかけられ、それは彼女に非常に似合っていた。

「きれいな人ね…」
　男性も女性も、彼女の不思議な魅力に完全に捕らわれていた。

　彼女はもう何回も来た階でエレベーターを降りて、よく知っている個室の前に立っていた。
（少しイベント性をもたせましょう！！！）

「トン、トン、トン」
　佐藤直人のドアがまたノックされた。彼はさっきの看護師が忘れ物をして取りに来たのではないかと思った。
「どうぞ、何か忘れましたか。」

　ドアが開けられた。しかし、誰も入って来なかった。
「えっ、誰」
　彼はとても不審に思ったが、次の瞬間………

　彼が大変良く知っている人が、満面の笑顔で病室に入って来た。

「フーカ！！！…ではなく北川さん！！！」
　彼はあんまり驚きすぎで少し心臓に痛みを感じた。

「佐藤さん。心筋梗塞が治りかけなのに配慮が足りませんでした。すいません。」
　北川風香はお辞儀をした。

「北川さん。よかったです。僕はあなたを異世界で殺してしまい、僕だけぬくぬくと生き続け、この世界に帰ってきたのかと絶望していました。」
　彼女は事情を彼に話した。

「最後は賭けだったのです。佐藤さんとＷ転生して、この現実世界と同じように、異世界で２人の内１人が死の直前までいって、最後に死の直前までいった人が生きることができれば、過酷な運命に勝ったことになったのです。それは、『ミカちゃん』が教えてくれました。」

「『ミカちゃん』？」

「私が名づけた大天使様、天使長様のことです。最初は、神のもくろみどおりのことを私に説明しました。私達が真剣に相手を殺そうと戦い、月の剣と太陽の剣がぶつかった時に、異世界で起こりうる最大の衝撃波を発生させ異世界を消滅させれば、代償として２人とも生き延びることができると。」

「絶対、そうはなりませんね。私は太陽の剣を弱く振り、北川さんの月の剣をこの身で受けようと思いました。」

「私も絶対そうはならないと思いました。佐藤さんが振る太陽の剣は必ず弱く振られると思いました。そして、月の剣を手から離し私が切られたとしても、ドワーフの最高職人のエンジンさんが作った最高の甲冑が衝撃を緩めてくれると思いました。さらに、姉様が回復魔法をかけてくれると確信していました。」

「姉様？」

「魔王ザラ様です。」
　彼女は首からかけたハートのネックレスを握り締めた。

「佐藤さん。体が回復したら約束を絶対守ってくださいよ。」

「もちらん、ものすごく美味しいイタリアンをごちそうしますので、一緒に食事にいってください。………それから、僕と付き合ってください。」

「はい、喜んでお願いします。それから、提案ですが、私のことはこれから『風香』と呼んでください。」

「はい、もちろん。提案ですが、僕のことはこれから『直人』と呼んでください。」

「はい、もちろん。」

　風香は心の中で思った。

（もうひとつ、魔界の宝石レッドハートという名前もあるのですが、秘密です。）