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5 運命に抗う
31 運命に抗う2
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魔王ゲールと参謀ラモンが人間界への侵攻について、最後の打ち合わせをしていた。
その途中で魔王が言った。
「ラモンよ。作戦の内容を私に説明したのは、今が初めてなのか。」
「魔王様、さきほど初めて申し上げました。」
「何かおかしい。私はラモンが言おうとしたことを、既に知っていた。それから、結果もわかっていたぞ。」
「どのようにですか。」
「私は王都イスタンの城門の前で、騎士ランスロに率いられた国軍を待つ。それを確認したランスロは、私に一騎打ちを挑んでくる。ランスロが宝剣プライラスを私に向かって振ろうとした瞬間、セイレンの歌声に支配され城門から続くメインストリートに横たわる住民を殺してしまうかもしれないと告げると、あの世界最強の騎士に大きな隙は生じる。」
「大チャンスですね、それからどうなるのでしょうか。」
「私の魔風斬が甲冑の上からランスロの心臓を貫き、勝つのだ。」
参謀ラモンが言った。
「私の作戦を信頼していただいて、その結末が明確に浮かんできたのではないでしょうか。」
「いや、あれは想像ではない。新しい別の未来だ。前に時間を10年間遡る前に起きた出来事は忘れない。一度私は、ランスロが宝剣プライラスを振って放たれた聖なる光りのせいで、細胞1個まで消滅させられてしまった。だから、未来を変えようとして侵攻を早めて、ラモンに作戦を考えてもらったのだ。」
「でも、時間を遡る砂時計は1回しか使えないのですね。大魔法使いのクレストが、魔王様の復活を防ぐために、そうしたんですよね。」
「…そうか。きっと未来を予知したのだな。それでは、私は王都イスタンの城門の前に転移するぞ。ラモンよ、全軍を周辺に伏せておけ。騎士ランスロを私が討った後、戦意を喪失した国軍を殲滅してしまうのだ。」
参謀ラモンとその場に控えていた上級魔物が声をそろえて言った。
「御意のままに。人間界を魔物の世界に。」
ランスロが簡易テントの中で甲冑の下にローブを着て、外に出ると魔女が待っていた。そして、言った。
「あの娘は運命にあらがうために、先に王都イスタンに向かったよ。私が魔法の扉で送ったんだ。おまえさんも国軍を出発させな。」
さらに続けた。
「あの娘の愛が一杯つまったローブを着ているおまえさんは無敵だから、これから経験したことのない恐怖に出くわしても、未来をつかむんだ。騎士にとって、住民達や国軍の兵士、他人の命を守ることは大切だけど、自分の命も大切しなさい。………あの娘のために。」
ランスロは言った。
「おばあさんは魔女様でしたか。レディがローブを編み上げるのを手伝っていただいたのですね。ご忠告、ほんとうにありがとうございます。」
ランスロは国軍を出発させ、王都イスタンに向かった。
魔王ゲールは王都イスタンの城門の前に転移した。
それとほぼ同時に、ランスロに率いられて帰還した国軍は王都イスタンに入ろうとしていた。ところが、普段は住民でごったがえしている町の城門近くに人影は全く見えなかった。多くの住民が歓声を上げて国軍を迎えるはずだった。
ランスロは見た。
人間ではないものが正面に立ち、待ち構えていた。赤い鋭い目に黄金の髪、背中には黒色の翼を生やしていた。
先頭を進んでいたランスロが驚いて言った。
「あれは、文献で見たことがある。魔王ゲールだ。」
文献には、これまで何人もの伝説の勇者が魔王ゲールと戦い、自分の命と代償に魔王に大きなダメージを与え、回復までの何十年の平和を人間界に与えたと歴史が書かれていた。
ランスロは思った。
(これまでの多くの勇者と同様に私もここで死ぬのか。いやいや、魔女様の忠告どおり恐怖を克服するんだ。未来をつかむんだ。)
そして副官に告げた。
「みなさんはここで待機していてください。魔王ゲールは奇跡的に誕生した最上級の魔物、どれほど強いかわかりません。私が戦います。」
そう言うとランスロは前に進んだ。近づいてくるランスロに向かって、魔王ゲールが言った。
「世界最強の騎士ランスロ、ナイト・グランドクロス。初めてお目に掛かることができて誠に光栄です。いや、この時間では初めてお目に掛かると言った方が正確かもしれないな。」
ランスロが言った。
「あなたは人間に大きな災厄をもたらす者、王都イスタンのその場に立つことすら私は許さない。魔王ゲール、住民の皆さんをどうしたのだ。」
魔王ゲールが答えた。
「立つことすら許さないとは、ひどいじゃないですか。それから教えましょう。私は王都イスタンの住民達が動けなくなる大魔術をかけただけですよ。宮殿までの道を見てください、皆さんが横たわっているでしょう。」
ところが、
ランスロがよく見ても、道には誰も横たわっていなかった。
未来がかわっていた。
その時、ランスロにはグネビア王女の声が聞こえた。
「ランスロ。大丈夫よ、住民の皆さんは家の中に避難しているわ。それと、王都イスタンの結界が張られているから、魔物は中に入れない。魔王ゲールも入れないわ。」
ランスロがメインストリートのかなたを見ると、グネビアが宮殿のテラスに立っていた。
「グネビア王女様。ありがとうございました。あなたの騎士として、恥ずかしくない戦いをします。」
時間を再び遡ったことで、遡りの交換転移は元に戻っていたが、グネビアとランスロの間の認識は王女と騎士との関係が当たり前であり、違和感は全くなかった。
(そうだ。グネビア様が私の命を守るために織ってくださったローブを着ているんだ。負けるはずがない。)
そしてランスロは宝剣プライラスを鞘から抜き、魔王ゲールに剣戟を加えようとした。しかし、魔王ゲールが言った。
「私の後ろを見るがいい。王女が宝剣プライラスの光りを浴びて死ぬがいいのか。」
グネビアが言った。
「私を讃える宝剣プライラスの光りを浴びて、私が死ぬわけがないわ。」
しかし、ランスロには小さな隙ができてしまった。それを見て、魔王ゲールは剣を振るい魔風斬を起こした。そして、不意をつかれたランスロの心臓を甲冑の上から貫いたように見えた。
その場にランスロは倒れた。
しかし、爆風が消えると人間の歴史上、世界最強の騎士は立ち上がっていた。ローブは見事に魔風斬を跳ね返した。
最高にカッコ良い騎士の姿だった。
その途中で魔王が言った。
「ラモンよ。作戦の内容を私に説明したのは、今が初めてなのか。」
「魔王様、さきほど初めて申し上げました。」
「何かおかしい。私はラモンが言おうとしたことを、既に知っていた。それから、結果もわかっていたぞ。」
「どのようにですか。」
「私は王都イスタンの城門の前で、騎士ランスロに率いられた国軍を待つ。それを確認したランスロは、私に一騎打ちを挑んでくる。ランスロが宝剣プライラスを私に向かって振ろうとした瞬間、セイレンの歌声に支配され城門から続くメインストリートに横たわる住民を殺してしまうかもしれないと告げると、あの世界最強の騎士に大きな隙は生じる。」
「大チャンスですね、それからどうなるのでしょうか。」
「私の魔風斬が甲冑の上からランスロの心臓を貫き、勝つのだ。」
参謀ラモンが言った。
「私の作戦を信頼していただいて、その結末が明確に浮かんできたのではないでしょうか。」
「いや、あれは想像ではない。新しい別の未来だ。前に時間を10年間遡る前に起きた出来事は忘れない。一度私は、ランスロが宝剣プライラスを振って放たれた聖なる光りのせいで、細胞1個まで消滅させられてしまった。だから、未来を変えようとして侵攻を早めて、ラモンに作戦を考えてもらったのだ。」
「でも、時間を遡る砂時計は1回しか使えないのですね。大魔法使いのクレストが、魔王様の復活を防ぐために、そうしたんですよね。」
「…そうか。きっと未来を予知したのだな。それでは、私は王都イスタンの城門の前に転移するぞ。ラモンよ、全軍を周辺に伏せておけ。騎士ランスロを私が討った後、戦意を喪失した国軍を殲滅してしまうのだ。」
参謀ラモンとその場に控えていた上級魔物が声をそろえて言った。
「御意のままに。人間界を魔物の世界に。」
ランスロが簡易テントの中で甲冑の下にローブを着て、外に出ると魔女が待っていた。そして、言った。
「あの娘は運命にあらがうために、先に王都イスタンに向かったよ。私が魔法の扉で送ったんだ。おまえさんも国軍を出発させな。」
さらに続けた。
「あの娘の愛が一杯つまったローブを着ているおまえさんは無敵だから、これから経験したことのない恐怖に出くわしても、未来をつかむんだ。騎士にとって、住民達や国軍の兵士、他人の命を守ることは大切だけど、自分の命も大切しなさい。………あの娘のために。」
ランスロは言った。
「おばあさんは魔女様でしたか。レディがローブを編み上げるのを手伝っていただいたのですね。ご忠告、ほんとうにありがとうございます。」
ランスロは国軍を出発させ、王都イスタンに向かった。
魔王ゲールは王都イスタンの城門の前に転移した。
それとほぼ同時に、ランスロに率いられて帰還した国軍は王都イスタンに入ろうとしていた。ところが、普段は住民でごったがえしている町の城門近くに人影は全く見えなかった。多くの住民が歓声を上げて国軍を迎えるはずだった。
ランスロは見た。
人間ではないものが正面に立ち、待ち構えていた。赤い鋭い目に黄金の髪、背中には黒色の翼を生やしていた。
先頭を進んでいたランスロが驚いて言った。
「あれは、文献で見たことがある。魔王ゲールだ。」
文献には、これまで何人もの伝説の勇者が魔王ゲールと戦い、自分の命と代償に魔王に大きなダメージを与え、回復までの何十年の平和を人間界に与えたと歴史が書かれていた。
ランスロは思った。
(これまでの多くの勇者と同様に私もここで死ぬのか。いやいや、魔女様の忠告どおり恐怖を克服するんだ。未来をつかむんだ。)
そして副官に告げた。
「みなさんはここで待機していてください。魔王ゲールは奇跡的に誕生した最上級の魔物、どれほど強いかわかりません。私が戦います。」
そう言うとランスロは前に進んだ。近づいてくるランスロに向かって、魔王ゲールが言った。
「世界最強の騎士ランスロ、ナイト・グランドクロス。初めてお目に掛かることができて誠に光栄です。いや、この時間では初めてお目に掛かると言った方が正確かもしれないな。」
ランスロが言った。
「あなたは人間に大きな災厄をもたらす者、王都イスタンのその場に立つことすら私は許さない。魔王ゲール、住民の皆さんをどうしたのだ。」
魔王ゲールが答えた。
「立つことすら許さないとは、ひどいじゃないですか。それから教えましょう。私は王都イスタンの住民達が動けなくなる大魔術をかけただけですよ。宮殿までの道を見てください、皆さんが横たわっているでしょう。」
ところが、
ランスロがよく見ても、道には誰も横たわっていなかった。
未来がかわっていた。
その時、ランスロにはグネビア王女の声が聞こえた。
「ランスロ。大丈夫よ、住民の皆さんは家の中に避難しているわ。それと、王都イスタンの結界が張られているから、魔物は中に入れない。魔王ゲールも入れないわ。」
ランスロがメインストリートのかなたを見ると、グネビアが宮殿のテラスに立っていた。
「グネビア王女様。ありがとうございました。あなたの騎士として、恥ずかしくない戦いをします。」
時間を再び遡ったことで、遡りの交換転移は元に戻っていたが、グネビアとランスロの間の認識は王女と騎士との関係が当たり前であり、違和感は全くなかった。
(そうだ。グネビア様が私の命を守るために織ってくださったローブを着ているんだ。負けるはずがない。)
そしてランスロは宝剣プライラスを鞘から抜き、魔王ゲールに剣戟を加えようとした。しかし、魔王ゲールが言った。
「私の後ろを見るがいい。王女が宝剣プライラスの光りを浴びて死ぬがいいのか。」
グネビアが言った。
「私を讃える宝剣プライラスの光りを浴びて、私が死ぬわけがないわ。」
しかし、ランスロには小さな隙ができてしまった。それを見て、魔王ゲールは剣を振るい魔風斬を起こした。そして、不意をつかれたランスロの心臓を甲冑の上から貫いたように見えた。
その場にランスロは倒れた。
しかし、爆風が消えると人間の歴史上、世界最強の騎士は立ち上がっていた。ローブは見事に魔風斬を跳ね返した。
最高にカッコ良い騎士の姿だった。
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