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情けは人のためならず④
しおりを挟む桐生さんはキチンと、約束を守ってくれた。
早々に、毒島Dとの顔合わせと、ロケ打ち合わせを済ませた。一旦GOサインが出れば、その後の展開はムチャクチャ早い。それが、テレビ業界の仕事。
週末は、ロケ隊は、人里離れた古い山荘へと向かった。最近、心霊現象がおこっており、経営者家族を悩ませているのだ。
桐生さんにとっては、初めてのテレビ取材となる。ああいう性格だから、現場でもめたりしないか、私は心配
だった。リサーチャーは基本的にロケには同行しないのだ。
後日、制作フロアのモニターで、ロケ収録のビデオテープを見た。
山荘の座敷部屋のシーンである。真ん中に、桐生さんが佇んでいた。
細長い指先で、ガラス窓から床の間へとスッと直線を引くと、
「ここが霊の通り道になっています。水を杯一杯でいいから、床の間にお供えをして下さい」と、カメラ目線で言った。
神秘的なルックスと眼差し。ブラックスーツで長身を包み、凛とした佇まい。
「それさえ守ってくだされば、奇妙な物音や現象は、すぐにおさまるはずです」
よく通る声が耳に心地好い。
春風のように優しくて、ずっと聞いていたい声質だ。
よかった。そして、安堵を溜め息を吐いた。
桐生さん、散々心配させといて、しっかり馴染んでるじゃない!
毒島さんによると、桐生さんの収録は全く問題なかったらしい。
ロケ中、ADの不手際が何度もあったが、文句一つ言わなかったとか。不平不満が多々あっただろうに、ジッとガマンの子。驚いたことに、逆に、スタッフを気遣っていたらしい。
あの、辛口、皮肉屋の、桐生さんがだよ!
思わず、声を荒げたくなる。だって、おかしいよ。
あの人、「テレビ嫌い」って宣言していなかったっけ?
あれは一体なんだったの? 私は文句をつけたくなる。
……。
でも、まぁ、心配していたことは何も起こらずに、ロケは無事完了したのだ。
ここは広い心で、許してやろう。
毒島さんのオフライン編集は、カモメTVでプレビューされた。プレビューというのは、簡単に言えば、オンエア前に試写だ。
憧れの結城Pは何と、満面の笑顔で拍手してくれたらしい。その場に立ち会えなかったことが、めちゃくちゃ悔しいんですけどっ。
しかも、その場で、〈イケメン霊能者シリーズ〉第二弾が決定したのである。
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