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エピローグ
しおりを挟む毒島さんは上機嫌である。腹が立つぐらいに。
「ミルコ、テレビ映えのする逸材を、よく見つけてくれたよ。プレビューを見た局の反応はバッチリでさ。今後も、この調子で頼む。次は、レギュラー化を目指すからな」
「はぁ、そうですか」
「いやぁ、ミルコは出来る子だと思ってたよ」
おい、チンピラD、何なんだ、その態度の急変ぶりは!
いい年して、恥ずかしくないのかよっ!
「そう思いませんか、真希さん」
先輩リサーチャーに愚痴をこぼすと、こんな言葉が返っていた。
「ああ、誤解しない方がいい。たぶん、ミルコじゃなくて、ミルコのツキを大事にしているだけだから」
「はぁ? ツキ?」
「業界では、予想外の出来事がいくらでも起きるから、どうしてもツキに頼ることが多くなる。
「ツキにある人間は、ただ、それだけで重宝されるんだよ」
へ、そういうものなの?
「あのう、大事なのはツキだけですか」
「そう、ツキだけ。今、ミルコには、いい風が吹いているんだよ。とりあえず、クビはなくなったみたいだし、よかったじゃない。でもツキが落ちたら、すぐ逆戻りだからね。いつまでも浮かれていちゃダメ。危機感をもって仕事してよ。若いうちは、それこそフル回転でね」
「……」
「最後に、これだけは教えておこうか。この業界では褒められてもけなされても、一喜一憂しない方が無難だからね」
「そういうもんですか」
「褒められたと喜んで、けなされたと落ち込んで、そんな上がったり下がったりの繰り返しじゃ、頭がどうにかなってしまうでしょ。業界では、うつ病になっちゃう子も多いし、新人は半年も経つと皆、無表情になっちゃう。ミルコも気をつけなよ。自分の考えをしっかり持っていないと、何もわからないままに、ただ流されるだけで終わってしまうからね」
「あの、おっしゃっていることが、少し……」
「ああ、ミルコには難しすぎたかな。要は、自分の頭で考えて、行動することが大事だってこと。また落ち込むことがあったら思い出してみてよ」
何はともあれ、今回、初めて仕事で褒められたのだけど……。
なぜかしら、素直に喜べない自分がいる。ただツキがあっただけで、「やり遂げた感」がなかったからだろうか。
もし、自分自身の考えと行動によって、人々の心を動かすことができたのなら、例えば、出演を渋っていた人間をテレビに出てもらえるように、誠意によって、説得できたのなら、それは、めちゃくちゃ面白いことなのかもね。
マジ、そう思うよ。
もっとも、私、椎名ミルコの野望は、売れっ子シナリオライターになって、あの結城Pと組んで、大ヒットドラマをつくることだけどね!
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