もののけ学園 ~天狗隠しのJK~

坂本 光陽

文字の大きさ
4 / 10

天狗もどきと眠り姫①

しおりを挟む
 雷神社が鬱蒼うっそうとした森の中にあるせいか、街中よりも早く夕暮れがやってくる。森が紅葉に色づいていることを相まって、亜湖と天音が到着したときには、すでに境内は茜色に包まれていた。人の気配は皆無であり、静寂が支配している。時折り、鳥のさえずりが聞こえるぐらいである。

「この時間帯に来るのは初めてだけど……」と、亜湖が呟く。「少し気味が悪い」
 天音は微笑みながら、
「空が黄昏色に染まる時間帯は逢魔おうまときといって、魔物に出会いやすいと言うからね」

「ちょっと、あまり怖いこと言わないでよ」
「でも、この時間帯だからこそ、意味がある。目的が魔物ではなく、七海さんたちをさがす意味でもね」
「どうして? 本当に天狗が関わっているから?」
「当たらずとも遠からず。少なくとも妖怪がらみだな」

 境内が不気味な雰囲気なので、亜湖は笑うに笑えない。
「ねぇ、天音くんって、一体何者?」

 天音は何も答えず、古びた本殿に向かっていく。亜湖も後に続く。昨日は本殿の中までは確認できなかったのだ。

 しかし、5m手前で天音が立ち止まる。
「天音くん、どうしたの?」
「少し離れて。出てくるぞ」
「出てくる? 何が?」
「とにかく禍々まがまがしいものだ」

 本殿から大きな音が上がり、亜湖は飛び上がるほど驚いた。見ると、古びた扉を乱暴に開いて、巨大な人影が姿を現したところだった。

 これは人間なのだろうか? スウェットの上下に身を包んでいるが、顔は毛むくじゃらで、髪は伸び放題、靴も履いていない。全身から悪臭を漂わせており、まるでケダモノだった。

 亜湖は悲鳴を上げて、天音の後ろに隠れる。

「何なに、あれは何!?」
「天狗もどき、かな」
「はあっ、天狗もどき?」
「ほら、うぬぼれの強い奴のことを『天狗になった』っていうだろ?」
「それ、どういう意味? わっ、こっちに来る」

 ケダモノが身体を左右にゆらしながら近づいてくる。分厚い胸板、太い腕、まるでプロレスラーのような体格だ。最初は鈍重な動きだったが、コキコキと関節を鳴らし、突然、二人に向かって突進してきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

まばたき怪談

坂本 光陽
ホラー
まばたきをしないうちに読み終えられるかも。そんな短すぎるホラー小説をまとめました。ラスト一行の恐怖。ラスト一行の地獄。ラスト一行で明かされる凄惨な事実。一話140字なので、別名「X(旧ツイッター)・ホラー」。ショートショートよりも短い「まばたき怪談」を公開します。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...