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天狗隠し事件と転校生②
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亜湖は美少年とは二度と会えない、と思っていた。しかし、翌日、二人は再会を果たす。美少年が転校生として、亜湖のいる2年3組にやってきたのである。
担任の城川先生が、いつもと変わらぬ気さくな態度で、
「おまえたちの日常に変化をもたらす予期せぬファクター、新しいクラスメイトを紹介する」転校生に向かって、「とりあえず、自己紹介をいってみようか」
「天音翔です。どうぞ、よろしくお願いします」と、美少年は軽く頭を下げた。
「おいおい、それだけか。もっと自己PRしようよ」
「ええ、まぁ、それはおいおい」と、転校生は輝く笑顔を見せた。
この瞬間、天音翔はクラス全員から、好意を持って迎えられた。
しかし、天音が関心を向けているのは、ただ一人。亜湖だけだった。天音は授業中も休み時間中も、亜湖に熱い視線を向けている。そのくせ、何も話しかけないのが奇妙だった。
亜湖は友人たちから冷やかされ、天音を連れて校内を案内するように命じられる。天音のことが気になっていたので、それは渡りに船だった。
昼食を食べ終えてから5時限目が始まるまで、亜湖は天音と一緒に、体育館や図書館、保健室と巡り歩いた。しかし、案内もそこそこに、天音に向かって質問する。
「ねぇ、天音くん、昨日会ったよね」
「はぁっ? どういうこと?」
「雷神社で会ったじゃない。木にもたれて私のことを見てた」
「へぇ、こちらでは、そういう口説き文句が流行っているの?」
亜湖は顔を赤くして、
「口説き文句じゃない。私は真剣に訊いてるの」
天音は笑いながら、
「こっちも訊かせてよ。そもそも小津野さんは、どうして雷神社に行ったのさ」
「それは、天狗隠し事件が起こったからよ。一般的には神隠しというやつね。3人の女子が行方不明になっていて、1人が同じクラスの七海なの。だから、雷神社に……」
「だから、どうして雷神社に、その七海さんがいると思ったのさ」
「それは……」
幼い頃に天狗隠しにあったからだが、そこまで言う必要があるかな、と亜湖が言い澱んでいると、
「なぁ、放課後になったら、その雷神社に行ってみないか? 俺の直感だけど、そこで七海さんが見つかる気がする」
「えっ、どうして、そう思うの?」
「小津野さんが雷神社にいるって言ったからだよ。ただ、その考えにのっただけ。女の子一人じゃ危ないから、俺がボディガードを務めるよ。OK?」
「えっ、お、OK」
そんなわけで、亜湖は放課後、天音と一緒に雷神社に行くことになったのだ。デートだ、デートだ、とクラスメイトから冷やかされながら。
担任の城川先生が、いつもと変わらぬ気さくな態度で、
「おまえたちの日常に変化をもたらす予期せぬファクター、新しいクラスメイトを紹介する」転校生に向かって、「とりあえず、自己紹介をいってみようか」
「天音翔です。どうぞ、よろしくお願いします」と、美少年は軽く頭を下げた。
「おいおい、それだけか。もっと自己PRしようよ」
「ええ、まぁ、それはおいおい」と、転校生は輝く笑顔を見せた。
この瞬間、天音翔はクラス全員から、好意を持って迎えられた。
しかし、天音が関心を向けているのは、ただ一人。亜湖だけだった。天音は授業中も休み時間中も、亜湖に熱い視線を向けている。そのくせ、何も話しかけないのが奇妙だった。
亜湖は友人たちから冷やかされ、天音を連れて校内を案内するように命じられる。天音のことが気になっていたので、それは渡りに船だった。
昼食を食べ終えてから5時限目が始まるまで、亜湖は天音と一緒に、体育館や図書館、保健室と巡り歩いた。しかし、案内もそこそこに、天音に向かって質問する。
「ねぇ、天音くん、昨日会ったよね」
「はぁっ? どういうこと?」
「雷神社で会ったじゃない。木にもたれて私のことを見てた」
「へぇ、こちらでは、そういう口説き文句が流行っているの?」
亜湖は顔を赤くして、
「口説き文句じゃない。私は真剣に訊いてるの」
天音は笑いながら、
「こっちも訊かせてよ。そもそも小津野さんは、どうして雷神社に行ったのさ」
「それは、天狗隠し事件が起こったからよ。一般的には神隠しというやつね。3人の女子が行方不明になっていて、1人が同じクラスの七海なの。だから、雷神社に……」
「だから、どうして雷神社に、その七海さんがいると思ったのさ」
「それは……」
幼い頃に天狗隠しにあったからだが、そこまで言う必要があるかな、と亜湖が言い澱んでいると、
「なぁ、放課後になったら、その雷神社に行ってみないか? 俺の直感だけど、そこで七海さんが見つかる気がする」
「えっ、どうして、そう思うの?」
「小津野さんが雷神社にいるって言ったからだよ。ただ、その考えにのっただけ。女の子一人じゃ危ないから、俺がボディガードを務めるよ。OK?」
「えっ、お、OK」
そんなわけで、亜湖は放課後、天音と一緒に雷神社に行くことになったのだ。デートだ、デートだ、とクラスメイトから冷やかされながら。
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