純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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「おい、何をしているんだ?」
「いやぁ、こんな場所でバッタリなんて、すごい偶然だねぇ」
「猿芝居はよせ。何を企んでいるんだ」顔をよせて小声で追及する僕。
「別にぃ。一体何のことぉ?」あからさまに、そらとぼけている香里。

 魅子さんがこっちに気づいた。

「ありがとうございます。駿介くんのお友達でしょ。よかったら、御一緒しませんか。お礼に何か、ごちそうさせてください」
「まぁ、それじゃ、お言葉に甘えて」香里はにっこり微笑む。

 何てことをするんだ。魅子さんとの二人きりが台無しじゃないか。僕は天を仰いだ。
 喫茶室に入った僕たちは、窓際のテーブル席に案内された。

「へぇ、駿介くんと香里さん、中学から大学まで同じなんだ」と、魅子さん。
「ええ、同じクラスになって、大好きな作家さんの息子と知った時は、もうびっくりでしたよ」と、香里。

 二人とも、エリさんの大ファンという点で意気投合。悔しいことに、僕そっちのけで話が弾んでいる。黙り込んでいる僕に気を使ったのか、魅子さんが朗らかに話を振ってきた。

「ねぇ駿介くん、香里さんって、ひょっとして駿介くんの彼女?」
 僕は思わず、コーヒーを吹き出しそうになった。
「やめてくださいよ。ただの腐れ縁です」と、慌てて否定する。

「ちょっと何よ、その言い方、失礼ねぇ」と、ふくれる香里。その上、とんでもないことを言い出した。「正確には、元カノですから」
「ちょっと待て。心当たりがない。僕たちは一体、いつ付き合ったんだ?」

「忘れたの? 高校2年の二学期よ。中間テストの後、お試し期間ということで1週間」
「それって、テストの点数で賭けをして、僅差で負けた僕がこうむった罰ゲームのことか?」
「言葉は正確に使いなさいよ。こんな美人と付き合えたんだから、むしろ御褒美ごほうびでしょ?」

 ああ、やめてくれ。憧れの人の前で、マジ勘弁してほしい。
「魅子さん、誤解しないでください」
 だけど、僕が弁明すればするほど、逆効果。
「ほんと仲良しなのねぇ」と、魅子さんは笑っている。

 その素敵な笑顔に、僕は見惚れてしまう。年上の女性に対して失礼な言い方だけど、とても可愛らしいと思う。
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