純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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「ふふっ、我が家では、駿介が母親役ね。あ、このブルーベリージャム、おいしい」

 亡くなった父は、エリさんとどんな感じで暮らしていたのだろう。エリさんは、あまり父のことを語らない。
 周囲から聞いた断片的な話を総合すると、「優しくて、よくできた人」ということらしい。会社社長の息子なので「世間知らずのボンボン育ち」という意見もあった。いわゆる、バカ息子ではなかった、と思うけど。

「ね、唐突だけど、父さんってどんな人だったの?」
「いきなり、なぁに。ホント唐突ね」エリさんは少し考えて、ただ一言、
「大らかな人」と言った。

「懐が大きいとか、包容力があるとか、細かいことにこだわらないとか。そういうこと?」
「僕と似ているのかな?」
「ううん、似ていないね。駿介は細かいことを気にしすぎ。父さんとは全然ちがうよ」

 失敬な。エリさん、少しは細かいことに気にしてよ。言ってもムダだから、口には出さないけど。
 おそらく父は、笑って聞き流していたのだろう。今の僕と同じような目に合っても、どんな理不尽な仕打ちをこうむっても、笑って受け入れていたのだろう。

 それって、ただのバカじゃないの? やっぱり、バカ息子だったの? 結婚したのだから、当然愛し合っていたのだ、とは思うけど。

「あ、そうそう。ね、魅子ちゃんに聞いたけど、私の〈缶詰め〉中に香里ちゃんと一緒に来たんだって。もしかして、デートだったの? 駿介、あの子とお付き合いしているの?」
「ああ、それはない。魅子さんの誤解。ちゃんと否定したのに、やっぱり聞いてなかったんだ。魅子さん、思い込みが強いなぁ」

 しかも、僕にはとても辛い思い込み。

「何だ、そうなの。香里ちゃん、可愛らしくて、とてもいい子なのに。私は好きよ。私が男だったら、絶対ほっとかないな。駿介って贅沢なのね」
「そうかな」
「……でも、避妊だけはキチンとしなさいよ」
「どうして、避妊の話になるのさ。香里とは付き合ってない。そう言っているじゃない。嘘じゃないって」

 フランクな母というのは、いささか困り物だ。僕は高校入学と同時に、コンドームをもたされた。「避妊は男子の義務だからね」と、言われて。そういう御縁がなかったので、まだ使ったことはないけれど。
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