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恵比寿駅から徒歩10分の高台に、辺りを見下ろすようなインテリジェンスビルが建っており、セントラル重工業の社長室は最上階である33階にあった。
エレベーターホールで出会うのは、スーツ姿のサラリーマンと制服姿のOLばかり。ジャケットにデニムパンツ姿の僕は、明らかに浮いている。あと2年半もすれば、どこかの会社にもぐりこんで、彼ら社会人の中に違和感なく溶け込めるのだろうか。あまり自信がない。
秘書さんに言われた通り、受付で手続きを済ませた。数分後、応接室に通され、多忙であるはずの真中さんを待った。
応接室といってもテニスコートほどの広さがあるし、あまりにも静かすぎて逆に落ち着けない。30分ほど待たされて、ようやく社長さんは現れた。
真中桐人。70歳。メーカー市場をリードするカリスマ経営者。テレビのイメージより小柄に見えるけど、背筋はピンと伸びていているし、ピンク色の肌が艶々している。年齢よりもはるかに若々しい。
「待たせてすまなかったな」
「いえ、御無沙汰をしています。深水駿介です」
「……なるほど」マジマジと見つめられた。「確かに、あいつの面影がある。血は争えんというわけか」
いかつい顔に似合わぬ、にこやかな表情。口をへの字にしていた印象しかなかったけど。
「母からは、父に似ていないと言われます」
「そうか。電話で話しただけだが、彼女は元気そうだな」
「はい、母子とも健康と元気だけは自信があります」
差しさわりのない世間話。もちろん、本題に入るための前振りだ。
「君は確か、統王大の経営学部だったな」
「はい、20歳になりました。今、2年生です」
「いいか、駿介。君の卒業後のことで話しておきたいことがある」
どうやら、本題に入る気配だ。
「亡くなった君の父親には、私の後を継がせるはずだった。もちろん、誰もが納得する実績を重ねた上での話だ。血筋だけで後継者に据えるつもりは毛頭ない」
やはり、そういう話になるのか。
「ここからは、君が弊社への入社を希望した、と仮定しての話になる。君には君の考えがあるだろうが、とりあえずは黙って聞いてほしい」
ひっかかる言われ方だけど、僕は素直に頷いた。
「まさか、そんな期待はしていないだろうが、君にコネ入社はありえない。もし入社を目指すなら、ぜひ実力で勝ち取ってもらいたい」
「……」
「ただ一つだけ、君の入社を無条件で認める場合がある。それは君が母親の元から離れて、私の元にくることだ」
エレベーターホールで出会うのは、スーツ姿のサラリーマンと制服姿のOLばかり。ジャケットにデニムパンツ姿の僕は、明らかに浮いている。あと2年半もすれば、どこかの会社にもぐりこんで、彼ら社会人の中に違和感なく溶け込めるのだろうか。あまり自信がない。
秘書さんに言われた通り、受付で手続きを済ませた。数分後、応接室に通され、多忙であるはずの真中さんを待った。
応接室といってもテニスコートほどの広さがあるし、あまりにも静かすぎて逆に落ち着けない。30分ほど待たされて、ようやく社長さんは現れた。
真中桐人。70歳。メーカー市場をリードするカリスマ経営者。テレビのイメージより小柄に見えるけど、背筋はピンと伸びていているし、ピンク色の肌が艶々している。年齢よりもはるかに若々しい。
「待たせてすまなかったな」
「いえ、御無沙汰をしています。深水駿介です」
「……なるほど」マジマジと見つめられた。「確かに、あいつの面影がある。血は争えんというわけか」
いかつい顔に似合わぬ、にこやかな表情。口をへの字にしていた印象しかなかったけど。
「母からは、父に似ていないと言われます」
「そうか。電話で話しただけだが、彼女は元気そうだな」
「はい、母子とも健康と元気だけは自信があります」
差しさわりのない世間話。もちろん、本題に入るための前振りだ。
「君は確か、統王大の経営学部だったな」
「はい、20歳になりました。今、2年生です」
「いいか、駿介。君の卒業後のことで話しておきたいことがある」
どうやら、本題に入る気配だ。
「亡くなった君の父親には、私の後を継がせるはずだった。もちろん、誰もが納得する実績を重ねた上での話だ。血筋だけで後継者に据えるつもりは毛頭ない」
やはり、そういう話になるのか。
「ここからは、君が弊社への入社を希望した、と仮定しての話になる。君には君の考えがあるだろうが、とりあえずは黙って聞いてほしい」
ひっかかる言われ方だけど、僕は素直に頷いた。
「まさか、そんな期待はしていないだろうが、君にコネ入社はありえない。もし入社を目指すなら、ぜひ実力で勝ち取ってもらいたい」
「……」
「ただ一つだけ、君の入社を無条件で認める場合がある。それは君が母親の元から離れて、私の元にくることだ」
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