純情 パッションフルーツ

坂本 光陽

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 どうやら、短編集らしい。120ページの中に三つの作品が入っていた。


【深水エリ著『ブルースカイの壁』から一部抜粋】


 自由は素敵だ。自由は素晴らしい。
 ただ、自由は不自由でもある。自由と不自由は同じコインの裏表。
 何を言っているんだ? あなたはきっと、怪訝けげんな表情をする。

 ああ、やっぱり、わかってもらえないか。
 でも、考えてみて。私に心を重ねてみて。
 自由は不自由でもある。矛盾して聞こえるだろうけど、これは嘘じゃない。19歳の私は、そのことをよく知っている。

 私は自由を求めて家を出た。うるさい父親はいないし、監視者のような母親もいない。自分のペースで生きていける。何をしようが、私の思うままだ。
 昼まで寝ていてもいいし、嫌いなものは食べなくていい。夜更かしだって好きなだけできる。何なら、オールナイトだってかまわない。

 だけど、同時に、私の自由の限界を思い知ることになった。
 なぜかしら、無意識のうちにブレーキをかけてしまうのだ。
 誰からも命じられていないのに、私は遅くても午後8時には帰宅する。毎朝7時には起きて、毎日かかさず大学に行く。講義をさぼるなんて、もってのほか。出席をとられる語学や体育だけでなく、さぼり放題の一般教養にも欠かさず出る。

 極めて真面目で健全な大学生活を送っている。
 なぜだ、なぜなんだ。受験勉強をしていた頃は、大学に入ったら思い切り遊んでやる。そう思っていたはずなのに。これでは、高校時代の延長線上でもたもたしているにすぎない。
 私は眼に見えない何かに縛られている。まるで、檻から解放されたはずなのに、一回り大きな檻がそこにあった、というイメージだ。

 私は腕組みをして考えた。何が〈自分の限界〉を形成しているのだろうか?
 情操教育? 生来の危機感? 不安感、恐怖感? 両親から刷り込まれたモラル? 
 よくわからないが、なすべきことはわかっている。

 私は一歩、踏み出さなくてはならない。
 小さな一歩。だけど、人生に関わる大きな一歩だ。
 私は勇気を出して、これまでの殻を脱いで、生まれ変わらなくてはならない。


                   *


 僕と同じ年頃のエリさんがそこにいた。初々しく、未熟で、純情そのものだ。
 大学入学を機に一人暮らしを始めた彼女が、自分の殻を破るために行ったこととは? 僕ははやる気持ちを押さえてページをめくる。
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