いきなり最終話(クライマックス)

アルファ・D・H・デルタ

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ゴードン・エルフィンドワーフ

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「ゴードン!」




カナタ達の目の前で大賢者ゴードン・エルフィンドワーフは刺された。




カナタはゴードンを刺した刺客を切り伏せ、床に倒れる年老いたエルフの元へと駆け寄った。




「クソ!傷が深い!アルファ、ベータ!他の刺客の相手を頼む!俺は回復魔法を…」




「無駄じゃよ、この傷は呪いが掛けられておる…」




ゴードンがよわよわしく答えた。それを聞いたカナタが傷跡をよく見ると、傷口には呪術による紫色の刻印が現れた。

刺客はおそらく呪いの短剣を使ったのだろう。致命傷であった。







大賢者ゴードン・エルフィンドワーフはエルフとドワーフの混血者で構成された者達の末裔エルフィンドワーフ族の長老であり、今世の大賢者であり、カナタ達の大事な協力者だった。

もっとも今やエルフィンドワーフ族には本物のエルフィンドワーフはほとんどない、一部の先祖返りかエルフ寄り、あるいはドワーフ寄りのエルフィンドワーフ同士の婚姻によって生まれたエルフィンドワーフしかその肉体的特徴を有していない。

その意味ではゴードンはエルフ寄りのエルフィンドワーフだ。




しかし素性の知れないカナタ達の突飛とも言える話を信じてくれた良き理解者であり、カナタ達がこの世界で比較的早く活動を開始できたのも全てゴードンの協力があっての事だ。

そしてカナタ達がこの世界において信頼している今のところ唯一の人物でもあった。




「誰か!解呪魔法を使える者を呼んでくれ!早く!」




カナタは周りの者達に声を掛けた。

しかしゴードンは手を上げてそれを制した。




「よい無駄じゃよ。それに儂はもう十分生きた」




ゴードンはそんな事よりも、とカナタに向かって訪ねて来た。




「のうカナタよ、この老いぼれの冥土の土産に聞かせてくれんか?お主達が本当は何者で、お前の本当の目的がなんであったのか…」




ゴードンは本来であれば激しい苦痛を耐えているはずであった、だがその声は穏やかであり、まるで孫にでも話し掛けるような表情でカナタに聞いた。




「儂にこれまで話した事が全てではあるまい?のう、何故にお主はそこまで勇者の為に命を懸けようとしておる?お主の真の目的は何じゃ?儂にはそれが一番の謎だったのじゃよ」




ゴードンの声が段々と小さくなっていた。最後の時は近い。




「くだらない理由さ、本当に俺の自己満足、いや、これは俺のエゴだな」




カナタはそう前置きをしつつもゴードンの耳元に顔を寄せ、そっと自分の真の目的を語った。

全てを聞き終えたゴードンはフォッフォッフォッと楽しそうに笑った。




「やはり、お主は豪気なやつよ。そうか女子の為に命を懸けるか」




「言っただろ?くだらない目的だと」




「いや、儂はそうは思わんぞ」




「…ゴードン、俺はな正直に言うなら別に世界を救う事など二の次なんだ、この一言をあいつに伝える為だけに、そのエゴの為にこんな騒ぎを起こし今やお前の命まで犠牲にしようとしている。最低な男さ」




「のうカナタよ。お主は儂を阿呆だと思っておるのか?」




「は、じーさんが阿呆ならこの世界の人間全てが阿呆だろうよ」




「ならば、そのような戯言で誤魔化すでない。儂はお主の事を知っておる。高潔で気高い男じゃよ、お主は。儂はお主がその目的を果たす所を見たかったのう…」




ゴードンはゴホッゴホッと苦しそうに咽ながらも笑顔で言った。




「最後に儂からも頼みがある。儂の孫のユーリィの事じゃ。もうあまり時間は無いようじゃの」




カナタはゴードンの小さくなる声を必死で聞き取ろうと耳を寄せた。







「…分かった必ずお前の頼みは遂行する」




話を聞き終えたカナタはゴードンにそう言った。

その言葉を聞くとゴードンは安心したように静かに頷き…事切れた。













「ゴードンは?」




刺客たちを片付けたアルファがカナタに声を掛けた。

カナタは首を横に振った。




「そう、残念だけど。時間がないわ、新手が来そうよ。早くここから離れましょう」




アルファはそう言ってカナタに移動を促した。




「あぁ、行こう」




カナタは最後にゴードンに向かって頭を下げ、心の中で必ず約束は守ると誓い。その場から逃走した。
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