いきなり最終話(クライマックス)

アルファ・D・H・デルタ

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ベータの考察

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ベータはルクレシアの言葉を思い出していた。



「もし彼女だけが召喚されたのなら、彼は気付かなかったはず」



その意味が、今は痛いほど理解できた。



おそらくギルゴマは、勇者召喚の時に、地球側の召喚陣に介入したに違いない。



もし、この世界に魔王とカナが召喚されてから介入していたなら、それを間近で見ていた私達が異変に気付く。



召喚の儀式を行っている人間達に、自分の企みを邪魔されないようにするのは、ギルゴマにとってみれば当然。



そして地球ではその時、本来、勇者となるべき存在には、ギルゴマの力が流れた。



それは人の身に余る、恐ろしい程の力だった。



生命の自己防衛反応として、身に余る力を得た魔王は恐怖した。



だから咄嗟に、一番近くにいる信頼できる存在に、救いを求めた。



それがカナ。



カナは魔王が怯えている事に気付き、魔王を助けなくてはいけないと、無意識に考えた。



魔王は、その僅かな気配に気が付き、彼女を頼った。



そして、結果的に、カナへもギルゴマの力が流れた。



カナはカナで、召喚に巻き込まれた時に、カナタの事を考えていた。



当時のカナタを置いて、このままどこか、遠くへ連れていかれる事は、カナにとって、痛恨の出来事だったはず。



結果的に、その思いがカナタへと届き、ギルゴマの力は、カナタにも流れた。



カナタはその時に、おそらく何かしらのイメージを見た。



だからカナタには、カナが異世界へと召喚された事が理解できた。



カナタの、あの確信めいた行動は、ギルゴマの力が大元だった。



その後も不思議な力に導かれて、カナ失踪の真相へと、着実に近付いて行った。



これが人間の、愛の力と呼ばれているモノなのだろうか?



これが、全ての奇跡の正体。







だとしたら…もしかして、はは様も気付いていた?



はは様は、ギルゴマが全ての原因だと、気が付いた上で、カナタに提案を持ち掛けた?



という事は…カナタに授けたと言っていた、人の領分を超えた力もギルゴマの力を素にしている?



つまり、カナタは元々ギルゴマの力だったモノを、ギルゴマ自身にぶつける事で倒そうとしている?



その代償として、己の命を失うという事?



もし、そうなのだとしたら、それはまるで…マッチポンプ。



このままではその犠牲になるカナタは、道化師のようなモノ。



…母様、ベータは貴女からの指示を、産まれて初めて、自分の意思で逆らう事になる。



その結果がどうなるのか、まだ私にも分からない。





でも私は…自分の成すべきことを成す。



それが例え、貴女の意思に逆らう事になるとしても。





こんな事を考えるなんて、私も…そして、おそらく姉様も、管理者の娘としては失格。



でもきっと、私達は後悔しない。



予知など無くても、それだけは“視える”。

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