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季節が過ぎていくのは本当にあっという間だ。気付けば5月も半ば。那月の心にある傷はまだ形を残したまま、大きくなったり小さくなったりを繰り返しながら日々を越えていく。
何事もなく終わる日もあれば、男子生徒と関わるチャンスに上手く話せず落ち込む日もある。心ない言葉をかけられることもしばしば。
それでも、視聴覚室で襲おうとしてきた3人はあの時以来、那月に付き纏ったりからかいに来ることは無くなった。先輩に腕を捻り上げられたおかげか、明衣が心配してよく近くにいてくれるおかげか。クラスも離れているらしく関わりはないし、集会でも廊下でも見かける程度だ。
最初こそあの時の恐怖を思い出してビクついていたが、最近は少し気持ちが保たれている。那月はまだ自覚していないが、わずかに男性に対して耐性がついてきているのだ。そしてその理由は明らかだ。
「…………あっ」
「おっそ」
「いや、あの……え、っと、うう、授業が、長引いて」
「ふーん」
中庭で彩世と遭遇したあの日から、那月と彩世がよくここで昼休憩の時に会うようになったからだろう。いつも示し合わせているわけではない。たまたま中庭に来て、たまたま隣同士のベンチに座っているだけ。もちろん、大きな木を間に挟んで。
那月は基本的に中庭に来るが、彩世はいる日といない日が半々。だけどいる時は必ず那月の方には来ず、隣のベンチに座る。
そして那月が昼食を食べるまでの間、彩世は口を聞いたり聞かなかったり。何も話さずに「じゃ」と言って去っていく時もあった。それでも、絶対那月が食べ終わるまでは出て行かない。こんなに近くに居る、同じ空間にいるという事実が那月の男性に対する耐性を作っていったのだろう。
その証拠に、初めて会った時は明衣についていてもらっても冷や汗と震えが止まらなかったが、今となっては1人で彩世と会うことができ、時間はかかっても受け答えができる。まだこうやって受け答えができるのは彩世限定だが、僅かながらもそれは那月にとって大きな進歩だった。
「今日も弁当?」
「あ、は……っ、はい」
「へー」
「………う、あの、え、せ、先輩は、その、ご飯」
「ん?もう食べた、カツパン」
「そっ………で、すか」
お互いの顔も見えない状態で、他愛もない話をする。静かに呼吸をして、近くにいると感じて、同じ音や温度を感じてる。
すごく不思議な感覚だった。こうしようと話した訳でもないのに、いつの間にかこれが日常の1部になっていることが。
今までこんなに近くに男の人がいたら、那月は食事なんて喉を通らなかった。だけど、彩世のそばにいる時は自然とそれができるようになっている。
「…ナツくんって、体育とかどうしてんの?男子と女子別れるし、隣のクラスと合同でしょ」
「えっ…、あ、えっと。個人競技…とかは問題、な、な、ないです。球技とかは…先生に事情、は、話して、けっ見学…その、補習…で、」
「あー揉みくちゃになる球技とかは見学して、居残り補習で単位繋いでるわけね」
「あ、は……は、はい」
何事もなく終わる日もあれば、男子生徒と関わるチャンスに上手く話せず落ち込む日もある。心ない言葉をかけられることもしばしば。
それでも、視聴覚室で襲おうとしてきた3人はあの時以来、那月に付き纏ったりからかいに来ることは無くなった。先輩に腕を捻り上げられたおかげか、明衣が心配してよく近くにいてくれるおかげか。クラスも離れているらしく関わりはないし、集会でも廊下でも見かける程度だ。
最初こそあの時の恐怖を思い出してビクついていたが、最近は少し気持ちが保たれている。那月はまだ自覚していないが、わずかに男性に対して耐性がついてきているのだ。そしてその理由は明らかだ。
「…………あっ」
「おっそ」
「いや、あの……え、っと、うう、授業が、長引いて」
「ふーん」
中庭で彩世と遭遇したあの日から、那月と彩世がよくここで昼休憩の時に会うようになったからだろう。いつも示し合わせているわけではない。たまたま中庭に来て、たまたま隣同士のベンチに座っているだけ。もちろん、大きな木を間に挟んで。
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そして那月が昼食を食べるまでの間、彩世は口を聞いたり聞かなかったり。何も話さずに「じゃ」と言って去っていく時もあった。それでも、絶対那月が食べ終わるまでは出て行かない。こんなに近くに居る、同じ空間にいるという事実が那月の男性に対する耐性を作っていったのだろう。
その証拠に、初めて会った時は明衣についていてもらっても冷や汗と震えが止まらなかったが、今となっては1人で彩世と会うことができ、時間はかかっても受け答えができる。まだこうやって受け答えができるのは彩世限定だが、僅かながらもそれは那月にとって大きな進歩だった。
「今日も弁当?」
「あ、は……っ、はい」
「へー」
「………う、あの、え、せ、先輩は、その、ご飯」
「ん?もう食べた、カツパン」
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「えっ…、あ、えっと。個人競技…とかは問題、な、な、ないです。球技とかは…先生に事情、は、話して、けっ見学…その、補習…で、」
「あー揉みくちゃになる球技とかは見学して、居残り補習で単位繋いでるわけね」
「あ、は……は、はい」
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