早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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ダメじゃない

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「あーうん、ちょっと寝っ転がってた」
「そ、そ、なんで…すね…」
「寝っ転がってボーッとしてたんだけど。そしたら、なんで先輩いないの寂しいって、誰かさんの独り言が聞こえてきて…」
「!!!!?」

一一一え!??違う違う!そこまでは言ってないし、話逸らしても意味無いくらいしっかり聞かれてた!!!!

「いっ…!!!いいいい!言ってない、です!!!」

那月は恥ずかしさのあまり立ち上がって、彩世の方へ慌てふためき叫んだ。自分でも驚くぐらいの声量で、思わず手で口を覆った。

「あっ…、そ、の……」
「…ぶはっ」
「え?」
「声でか、そんな腹から声出てんの初めて見た」

一一一あれ、先輩気悪くするどころか、独り言も全然気にしてなさそう…。それよりも、ぶはって吹き出してた。ちょっと笑いながら喋ってる。なんで?なんだろう、これ…。

声色から、彩世が笑っているということに気付いた那月。初めて聞こえた、初めて見たその新たな一面。あの彩世が一体どんな表情で笑っているのか、無性に気になってしまった。

「…っ」

でも、今日のこともあって、まだこの木を越えて顔を合わせる勇気は出てこない。じりじりと踏み出した足を引っ込めて、またベンチに座り手付かずだった弁当の蓋を開けた。

「…っ、す、すみません。あの、いい今のは聞かなかった、ことに…して…くださ」
「無理。もう聞いちゃったし」
「えっ…!うぅ……」
「いいから早く食べなよ。それか食欲ないの?」
「え……」
「なんか、さっきここ来た時、ちょっと落ち込んでそうな感じしたから」

一一一ここ来た時に…?何も話してないのに、なんで落ち込んでるって分かったんだろう。

「……え、と、」
「違うならいいけど」

一一一なんで、不思議だ。彩世先輩も男の人なのに…よく会って慣れてきたっていうだけじゃない。なぜか、この人には聞いてほしいって思ってしまう。からかわれるって思って、こんなこと明衣以外に話したことなかったのに…。

彩世先輩には…やっぱり…。

「…っ僕、さ、最近、彩世先輩と、こやって会って…な、慣れ、てきたと思って…それで、クラスの男子にも…、は、話せるかと思っ…で、でも化学の授業で…全然だ、だめで…」

まだ上手く話せないが、精一杯那月は言葉を振り絞り、彩世にさっきの授業でのことを話した。彩世は「うん」や「ふーん」といった相槌をしながら、静かにそれを聞いていた。

「…あー、そう。それで落ち込んでたと」
「あ、は……は、はい」
「てか食べてる?昼休み終わっちゃうから食べながら話して」
「!!あ!は、はい…」

言われた通り、那月は弁当のおかずを口に運ぶ。さっきまで彩世の言った通り、あまり食欲がなかったが意外と喉を通ることに驚いた。これも、この2人の空間のおかげだろうか。

「まあ、俺は別に男が怖くないから、気持ちは分かんないけど」
「……は、はい」
「ナツくんが早く男が怖いのを克服して、変わりたいって思うのはまあ分かる。でも、誰でも彼でも信用して相手していけばいいって訳でもないでしょ」
「……へ、?」
「確かに、大勢の人と話して接してみるのはいいことだけど…そこからは見極めないとね。自分がこれからその人と関わっていくべきなのか、その人と関係を深く持っていきたいのか」

一一一関わっていきたいか、深く関係を持っていきたいかどうか…。

「…そう、な、んですね」

「んーまあナツくんはまだ難しいかもだけど。苦手な人とも建前は上手くやっていかないといけない時もあるし。でも、まあ今日グループになったそんな男達は、ほっとけばいいんじゃないって話」

彩世の話し方は少し雑な感じがするが、それ以上に自分の話を聞いてくれて、親身になってくれているのが那月の心にひしひしと伝わってくる。

「とりあえず、そんな奴らの言うこと気にしなくていいんじゃない?ナツくんは頑張ってるじゃん。全然ダメじゃないでしょ。俺はそう思う」
「先輩……」

一一一どうしよう。違う意味で泣きそう、なんだこれ。本当に分かんない。

少し鼻を啜って、那月は目頭をごしごしと擦った。その鼻音が、彩世に聞こえたか聞こえてないかは定かではない。

だが、彩世は何も聞かずにまた話し始めた。

「…え、だってさ。その状況って俺からしたら…苦手な犬が学校中にたくさんいて、その中で生活しなきゃいけないってことでしょ?うわ、辛すぎ、無理すぎ。すごいねナツくんは」
「……え、あの。い、犬苦手、なんですか?」
「…うん。昔、チワワに追いかけられてからずっと怖い」
「え………くふっ」

一一一あれ、僕笑った…?無意識に…。

「お、今笑ったな?」
「えっ!!!あ、ああ!ご、ごめ、ごめごめ、んなさ……!」
「ふはっ…!慌てすぎ…、そんなんで怒んないって」
「ぇっ…」

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