早く惚れてよ、怖がりナツ

ぱんなこった。

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交わり

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彩世がしばらく中庭に来ないと言った日から数週間が経った。7月に入り季節は本格的に夏を迎えている。夏夜行祭も目前だ。

「那月~、今日も先輩来なかったの?」
「う、うん…」
「そっかぁ。連絡しても返信ないんだっけ?」
「そう…。3年生の教室に行けば会えるけど…でも今どんな顔して会えばいいか分かんなくて」

あの中庭での出来事は、その日に明衣にだけ相談していた。最初こそ驚いてから興奮していた明衣だったが、それ以降は真剣に那月の話を聞いていた。

その時那月の気持ちを全て聞いた明衣は一言、「それって恋じゃん」と悟ったように呟いた。

検索して見たことと、明衣から言われたことを考えるとやはりこの気持ちは恋なのか?とあれから自問自答を繰り返す那月。

「あー…、どうしたらいいんだろう。もう調べることも尽きた…」

「まあ調べたってどうにかなるもんでもないし?自分次第でしょ。那月はどう思ってんの?」

「僕は…、恋したことないし実感がないっていうか…まさか自分が男の人をっていうのも信じられないし…。ハッキリ分からなくて」

「んーじゃあ、もう先輩には会いたくない?」

「いや!会いたいよ!」

「だったらー、とりあえず会ってみれば?このままだとどっちかが動かないと解決しないと思う。もうすぐ夏夜行祭もあるし、その前にスッキリさせたいでしょ」

「…う、うん」

今日は明衣がバイトもなく一緒に帰れる日だったため、ホームルームを終えた那月と明衣は2人で校門を出る。

「まあ恋すると自分じゃなくなるみたいなとこあるもんねー?モヤモヤするのだって、何とも思ってない人には感じないでしょ?」

「…確かに。本当、自分じゃないみたいで…。明衣が前に言ってたひっくり返すって意味が分かった気がするよ…」

「だろだろー?だから固定概念とか今までの自分とか、周りの目とかそういうのに囚われないでさ。自分の気持ちに正直になるのが1番だよ」

「明衣は…引かないでいてくれるんだね。僕がどんな奴でも、男の人を…好きだとしても」

明衣はきょとんと目を丸くして、那月の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。

「当たり前でしょ!友達なんだから!引くとかないっつーの!」

「わわ!!ちょ、髪の毛…」

「むしろ嬉しいんだよ。那月が男を克服してきたことも…それに関しては私は傍で支えるしかできなかったから。それに恋愛にも踏み入れるとか…悩みはするけどやっぱり恋って楽しいものだからさ。那月が幸せだと私も嬉しいの。私は応援してるから!」

「…明衣、」 

一一一こんないい友達を持って僕は幸せだな…。今までも明衣には感謝でいっぱいだったけど、自分が変われて少し余裕を持てたからかな。前よりもよく周りが見えるようになった気がする。

一一一こんなふうに思ってくれてる人がいるんだ。僕ももうひと踏ん張り頑張りたい。もっとって欲張ってみてもいいのかな。

「ありがとう…。明衣が支えてくれたからだよ」
「へへっ!照れるだろ~いいってことよ」
「ていうか、明衣も悩みとかあったら話してよ?全然恋の話も聞かないけど…、あっ僕じゃ何のアドバイスも出来ないかもだけど…」
「そんなことないし!てか私はいいの!今は恋人いらないかなーって感じで何も無いし……って、あれ?」
「ん?どうしたの?」
「あそこ…男の人いない?うちの制服じゃないっぽいけど…」
「え?どこ?」
「ほらあそこ。なんかフェンス掴まってない?うちの学校ん中覗いてるような…」
「……え?あ!!」

明衣の指差した方をよく見てみると、確かに1人男が学校のフェンスに掴まって中を覗いている。不審そうに見えるが、派手な金髪と他校の制服を着ているのが分かり那月はそれが誰かすぐに気付いた。

「夏希さん…?」
「え、誰?知り合い?」

少しずつ歩み寄り近付くと、その人物もこちらに気付いたらしくフェンスを離して「あー!」と声を出す。

「あれー?君は確か、那月くんだっけ?1年生の」
「…っ!!あ、は、はい。こ、こんにちは」

一一一やっぱり夏希さんだ…。中庭に侵入してきた時以来だ、会うの…。

「今帰り?俺はいろを迎えに来たんだけど…会ってない?」

夏希はニコニコと無邪気な笑顔を見せながら、那月と明衣の目の前まで擦り寄る。だが、那月にはそれがどうしても本当に笑っているようには見えなかった。

「…会ってない、です」

一一一迎えに来たって…また前みたいに突然会いに来たのかな。それに…こんなタイミングで顔を合わせるなんて。

一一一先輩にあの独占欲のマークをつけたって聞いた後だから想像してしまう。先輩が僕にしてきたみたいに、夏希さんもやったんだろうか。何だか胸痛い…。
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