73 / 94
6
頭の中
しおりを挟む
そして準備は順調に進み、ある程度キリがついた所でこの日は終わることになった。委員会のメンバーは道具の後片付けなどでまだ残ることになっているらしい。
先に帰るよう促された1年生達は、続々とグラウンドを出ていく。那月と相野もカバンを持ち出ようとしていた所だ。
「篠井くん、お疲れ様」
「あ!お、おつかれさま。相野くん、力仕事多くて大変だったよね」
「全然大丈夫。体力だけはあるから」
「すごい…、ぼ、僕は全然重いもの持てなくて情けなかった…。鍛えなきゃかな」
2人がグラウンドを出る時、風紀委員は一角に招集されていた。その中にいる真面目に話をしている彩世を見つけた那月。
一一一先輩がいる。まだ委員会の人は帰れないんだ…。というか前も思ったけど真面目に委員会の仕事してる所、やっぱりかっこいいな…。
その姿に見惚れていると、相野はその視界を遮るように顔を覗き込ませた。
「ねぇ」
「わっ…!び、びっくりした!」
「ごめんごめん。あのさ、駅まで一緒に帰らない?」
「えっ」
「篠井くん電車だよね?逆方向だけど俺も電車だから。最寄り一緒だし行こうよ」
「あ、そ、そうなんだ!うん、行こう!」
笑顔を見せる相野だが、どこからか少し圧を感じで那月は慌てて頷いた。
一一一そういえば、明衣以外の同級生と帰るの初めてかも…。しかも男子と…。入学した頃はこんなふうになれるなんて夢のまた夢だったな。
学校を出た相野と那月は肩を並べて駅へ向かい歩き出した。夏の夕方はまだほんのり明るく、ぬるい風が2人の間を抜けていく。
「篠井くん、だいぶ俺に慣れてくれたんだね。こうやって一緒に隣で歩けるし、自然に話せるようになってきた」
「え!あ、うん。僕もそう思う…。前と全然違うなって」
「…よかった。嬉しいよ。こうやって話せるようになって」
「うん…!ありがとう」
「そういえば、さっきの彩世先輩とは話せた?」
「あ…!うん!ゆ、勇気ふり絞って…荷物運ぶ時に話せたんだ。実は、ちょっと訳あって気まずかったんだけど…元に戻れて、も、もっと近くなれた気がする」
那月はそう言って嬉しそうにはにかむ。頭の中に彩世の顔が浮かんでいるのだろうと分かる表情。相野はそんな那月から目を逸らすと、気まずそうに作り笑いを浮かべた。
「そっか…よかったね」
「相野くんも…話聞いてくれて、あ、ありがとう!そのおかげで勇気出せたよ」
「…ううん。そんなことないよ、何もしてない」
「いやいや!励ましてくれただけでも、心強かったから…」
一一一なんか相野くんさっきから元気ない気がする…。心ここに在らずっていうか…。
「相野くん大丈夫…?疲れちゃった?」
「え、あ!大丈夫だよ。ちょっと考え事してた」
「そっか」
「あのさ、前篠井くんはあの先輩に対する気持ちが分からないって言ってたよね?」
「あ、う、うん…」
「それはもう分かってきたの?」
相野は那月の方を振り返り、問いかけながら消え入りそうに微笑んだ。那月はその質問に、意識と関係なく勝手に顔が赤らんでしまう。もちろん相変わらず頭の中は彩世でいっぱいだ。
「えっ…と。さっき話してみて、一つ一つ分かってきた気がする。僕、恋愛とかしたことないから…よく分からなかった、けど、もっと触れたいとか…離れてたら会いたい、とか…」
「うん…」
「あっごめん!!こんな面白くない話、ペラペラ勝手に…」
「いいよ。篠井くんの話聞きたい」
「え…」
「俺は篠井くんが話してくれることなら、何でも聞きたい」
「そっ、そうなの…?」
一一一どこまでいい人なんだ、相野くんは…。拙いし大して面白くない僕の話を聞きたいなんて…。
「先輩ってどんな人なの?」
「えっ…、うーんと。そうだな…。ぶっきらぼうに見えて優しくて…落ち着いてて…でもたまに無邪気に笑う、自分を犠牲にしちゃうほど相手のことを考える人…かな」
「……へぇ」
その少しの沈黙の後、駅へ辿り着いた2人。那月達の高校の唯一の最寄り駅なのもあって制服姿の生徒達が多く見える。
「篠井くん…あのさ」
「え?」
「那月くんって…呼んでもいい?」
「あ!う、うん!いいよ!」
「ありがとう。俺のことも名前で呼んでほしいな」
「えっ、いいの…?」
「うん。蓮って呼んで」
一一一そうだ、相野くん蓮って名前だ。みんな名字で呼ぶからちょっと慣れないけど…。
一一一同級生の男の子を名前で呼べるなんて…いつぶりだろう。最後に呼んでたのは…小学生の頃かな。あの時仲良かった…
「…………れ、蓮くん」
「うん」
「蓮、くん…」
「うん」
「あ、あのさ。あの…もしかして」
その時、後ろから2人に向かって呼ぶ声が聞こえてきた。男子の元気そうな大きな声が。
「あ!!あれ?相野と篠井じゃん!」
「…っ!わっ!あ、あれ!浜野くんと…市早くん…!」
「何してんのー!?帰り!?遅くない?」
こちらへ近付いてきたのはクラスメイトの浜野と市早だった。最近那月がノートを見せてもらい、話せるようになった2人だ。ハツラツとした能天気な浜野を落ち着かせるように、市早がすかさずフォローに入った。
「お前うるさい。あれだろ?夏夜行祭の準備」
「そ、そうそう!それで残ってて…」
「なるほどー!そんなんあったっけ?そういえばあったような…おつかれ!」
「うん!ふ、ふ、2人は部活とか?」
「そーそー!市早が部活だったから終わるの待ってた!」
「そうなんだ…!」
先に帰るよう促された1年生達は、続々とグラウンドを出ていく。那月と相野もカバンを持ち出ようとしていた所だ。
「篠井くん、お疲れ様」
「あ!お、おつかれさま。相野くん、力仕事多くて大変だったよね」
「全然大丈夫。体力だけはあるから」
「すごい…、ぼ、僕は全然重いもの持てなくて情けなかった…。鍛えなきゃかな」
2人がグラウンドを出る時、風紀委員は一角に招集されていた。その中にいる真面目に話をしている彩世を見つけた那月。
一一一先輩がいる。まだ委員会の人は帰れないんだ…。というか前も思ったけど真面目に委員会の仕事してる所、やっぱりかっこいいな…。
その姿に見惚れていると、相野はその視界を遮るように顔を覗き込ませた。
「ねぇ」
「わっ…!び、びっくりした!」
「ごめんごめん。あのさ、駅まで一緒に帰らない?」
「えっ」
「篠井くん電車だよね?逆方向だけど俺も電車だから。最寄り一緒だし行こうよ」
「あ、そ、そうなんだ!うん、行こう!」
笑顔を見せる相野だが、どこからか少し圧を感じで那月は慌てて頷いた。
一一一そういえば、明衣以外の同級生と帰るの初めてかも…。しかも男子と…。入学した頃はこんなふうになれるなんて夢のまた夢だったな。
学校を出た相野と那月は肩を並べて駅へ向かい歩き出した。夏の夕方はまだほんのり明るく、ぬるい風が2人の間を抜けていく。
「篠井くん、だいぶ俺に慣れてくれたんだね。こうやって一緒に隣で歩けるし、自然に話せるようになってきた」
「え!あ、うん。僕もそう思う…。前と全然違うなって」
「…よかった。嬉しいよ。こうやって話せるようになって」
「うん…!ありがとう」
「そういえば、さっきの彩世先輩とは話せた?」
「あ…!うん!ゆ、勇気ふり絞って…荷物運ぶ時に話せたんだ。実は、ちょっと訳あって気まずかったんだけど…元に戻れて、も、もっと近くなれた気がする」
那月はそう言って嬉しそうにはにかむ。頭の中に彩世の顔が浮かんでいるのだろうと分かる表情。相野はそんな那月から目を逸らすと、気まずそうに作り笑いを浮かべた。
「そっか…よかったね」
「相野くんも…話聞いてくれて、あ、ありがとう!そのおかげで勇気出せたよ」
「…ううん。そんなことないよ、何もしてない」
「いやいや!励ましてくれただけでも、心強かったから…」
一一一なんか相野くんさっきから元気ない気がする…。心ここに在らずっていうか…。
「相野くん大丈夫…?疲れちゃった?」
「え、あ!大丈夫だよ。ちょっと考え事してた」
「そっか」
「あのさ、前篠井くんはあの先輩に対する気持ちが分からないって言ってたよね?」
「あ、う、うん…」
「それはもう分かってきたの?」
相野は那月の方を振り返り、問いかけながら消え入りそうに微笑んだ。那月はその質問に、意識と関係なく勝手に顔が赤らんでしまう。もちろん相変わらず頭の中は彩世でいっぱいだ。
「えっ…と。さっき話してみて、一つ一つ分かってきた気がする。僕、恋愛とかしたことないから…よく分からなかった、けど、もっと触れたいとか…離れてたら会いたい、とか…」
「うん…」
「あっごめん!!こんな面白くない話、ペラペラ勝手に…」
「いいよ。篠井くんの話聞きたい」
「え…」
「俺は篠井くんが話してくれることなら、何でも聞きたい」
「そっ、そうなの…?」
一一一どこまでいい人なんだ、相野くんは…。拙いし大して面白くない僕の話を聞きたいなんて…。
「先輩ってどんな人なの?」
「えっ…、うーんと。そうだな…。ぶっきらぼうに見えて優しくて…落ち着いてて…でもたまに無邪気に笑う、自分を犠牲にしちゃうほど相手のことを考える人…かな」
「……へぇ」
その少しの沈黙の後、駅へ辿り着いた2人。那月達の高校の唯一の最寄り駅なのもあって制服姿の生徒達が多く見える。
「篠井くん…あのさ」
「え?」
「那月くんって…呼んでもいい?」
「あ!う、うん!いいよ!」
「ありがとう。俺のことも名前で呼んでほしいな」
「えっ、いいの…?」
「うん。蓮って呼んで」
一一一そうだ、相野くん蓮って名前だ。みんな名字で呼ぶからちょっと慣れないけど…。
一一一同級生の男の子を名前で呼べるなんて…いつぶりだろう。最後に呼んでたのは…小学生の頃かな。あの時仲良かった…
「…………れ、蓮くん」
「うん」
「蓮、くん…」
「うん」
「あ、あのさ。あの…もしかして」
その時、後ろから2人に向かって呼ぶ声が聞こえてきた。男子の元気そうな大きな声が。
「あ!!あれ?相野と篠井じゃん!」
「…っ!わっ!あ、あれ!浜野くんと…市早くん…!」
「何してんのー!?帰り!?遅くない?」
こちらへ近付いてきたのはクラスメイトの浜野と市早だった。最近那月がノートを見せてもらい、話せるようになった2人だ。ハツラツとした能天気な浜野を落ち着かせるように、市早がすかさずフォローに入った。
「お前うるさい。あれだろ?夏夜行祭の準備」
「そ、そうそう!それで残ってて…」
「なるほどー!そんなんあったっけ?そういえばあったような…おつかれ!」
「うん!ふ、ふ、2人は部活とか?」
「そーそー!市早が部活だったから終わるの待ってた!」
「そうなんだ…!」
0
あなたにおすすめの小説
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる