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90.メイド服は妻の誇り

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「もういい、下がってくれ」
眠気覚ましのコーヒーを運んで、お夜食をご用意しようかお聞きしたら、ご主人さまに部屋から追い出されてしまった。
明日からの出張に備えて、彼は書斎に篭って準備に余念がないみたい。
あ~あ、今晩は独り寝かぁ。
あたしは納戸に入って、自分の寝るスペースを準備する。
掃除用具にゴミ袋や古雑誌が占拠していて結構狭苦しいし、ちょっと匂う。
でも、納戸で寝るのって久しぶり。
なんだか、結婚前の婚約期間の頃を思い出してしまう。
あの時って、ご主人さまのご実家で花嫁修行してたのよね。
婚約期間中、妻候補の女性は彼の実家の納戸で寝起きするのが慣例だ。
でも、花嫁修行って結構厳しかったなぁ。
古着のメイド服を着せられ、家事全般はもちろん、義父母の雑用までさせらる。
そして、ちょっとしたミスがあっても、乗馬鞭でお尻を叩かれるの。
もうっ、調教権があるのはご主人さまだけなのに。
でも、お義父さまや、お義母さまに逆らう訳にはいかない。
だって、ここで義父母の印象を悪くして婚約解消でもされたら女子一生の恥。
周りにだって、どんな噂をたてられるか判らない。
破談の時って、何故かたいてい女性側に問題があるって思われるんだもん。
ヤリマンのビッチだったとか、嫁の癖に生意気で我が儘な女だったとか...
あたしだって、我が儘で生意気な女とか、だらしのないビッチな尻軽女なんて言われたくない。
それに、会社だって早々と寿退社したんだもの。
退職後数年間は元の一般職で会社に復職できる制度はあったけど、破断して出戻りだなんて、恥ずかしくって、元の職場になんて戻れない。
あたしは必死で花嫁修行に萬進し、ご主人さまの両親に認めてもらった。
そして、その証として新品のメイド服をプレゼントされたんだぁ。
そしてそれが今着ているメイド服。
あたしが立派な妻である証。
うふふっ、メイド服は妻の誇りなの。

翌朝、あたしは貞操帯を自分からご主人さまに手渡して鍵を掛けてもらった。
だって、あたしって貞淑で従順な立派な妻なんだもん。
「いってらっしゃいませ、ご主人さま」
あたしは深々と頭を下げて、彼を送り出す。
そして、道路から見えなくなるまで見送った後、指先にキスしてその指を首元に押し付けた。
彼に嵌めてもらった結婚首輪。
銀色に輝く愛のしるし。
『愛しています、ご主人さま』
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