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1 ルーンカレッジ編
038 ゼノビアの王都案内4
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買い物が終わると、すでに時間は夕方に近づいていた。ゼノビアは王都を一望できる高台にジルを案内した。そこは王都に来る者が一度は訪れる必須のスポットであるらしい。
日も落ちそうなことから、展望台はすでに人がまばらであった。ジルは展望台から景色を見渡してみた。「水晶宮」と呼ばれる王宮が遠目に見え、夕日を浴びて美しい。そして王都の歴史ある街並みは、荘厳な雰囲気を作り出し、目を楽しませてくれる。
「今日は王都の案内ありがとうございました」
ジルが隣で肩を並べるゼノビアに礼を述べる。ジルとしても、今日はゼノビアと一緒に過ごし、なかなかに楽しい一日だった。
「ああ、君への礼のつもりだからな。気にしなくていい」
「礼と言えば、サイファーやガストンにも礼をしたんですか?」
「ああ、サイファーにはもうしたぞ。奴の希望で剣の稽古をしたんだ」
いかにもサイファーらしい無骨な願いである。
「晩餐会の日、君は朝遅く起きてきたようだが、サイファーと午前中、近衛騎士団の稽古場でな」
「どうでした?」
「ああ、サイファーはなかなか強かったぞ。もちろん真剣じゃなく、稽古用の剣だったがね。力では完全にサイファーの方が強かった。あの体だから想像できてはいたが、力比べでは完全に押されていたよ。だが、技術がともなっていなかった。力の受け流し、相手を追いつめる組み立てなど、剣の勝負というのは単なる力で決まるものではなく、技術や戦略が大事なんだ。とくに“試合”のような場合はな。私はこれでも騎士団で長年もまれてきて、密度の濃い経験を積んでいる。遠い先のことはともかく、今はまだサイファーに負けないよ」
ゼノビアは剣の腕だけでも近衛騎士団で上位の実力がある。さすがに力では勝てないが、その分戦いの技術は磨かれている。
「さすがゼノビアさんですね。僕から見ればサイファーも充分に強いのですけれど」
「そうだな、奴は強いよ。10年もすればサイファーに勝てる者はほとんどいなくなるかもしれん」
ゼノビアはサイファーを高く評価しているようだ。しかし稽古であったため、ゼノビアはルミナスブレードを使っていない。もし使っていれば勝負にもなってないだろう。
「それでガストンの方は?」
「……あ、ああ。や、奴はまだ考え中とのことだ」
「!?」
ゼノビアの挙動が急におかしくなった。ガストンと何かあったのかもしれない、とジルは感じた。
(ガストンの奴め、後で問いたださないとな)
**
空を眺めると、日はもう落ちそうになっていた。気づけば当たりも大分暗くなってきている。
「もう大分遅くなりましたね……。そろそろ帰りましょうか」
ジルが元の道に引き返そうとゼノビアに背を向けた。
そのジルの背中を……ゼノビアが抱きしめた。
「ゼ、ゼノビアさん?」
ジルが少し慌てた声をあげる。ゼノビアは何をしているのか?
ゼノビアの豊かな胸が、背中に当たっている……。それに、ゼノビアは意外にも甘い匂いがした。ゼノビアはジルを後ろから抱きしめたまま話しかける。
「ジル、今回は本当にありがとう。姫は私にとってとても大事な方なのだ。私は危うく任務に失敗しそうになった。君たちがいてくれなかったらな」
「いえ……、いいんですよ。お役に立てたなら嬉しいです」
「私は自分の気持ちをどうやって表せば良いか分からないんだ」
「今日ロゴスを案内してもらいましたし、服も買ってもらったじゃないですか」
「それじゃあ足らないんだ。どうしても気持ちを上手く伝えられない」
「……」
「ジル、ありがとう」
ゼノビアはジルの身体を自分の方に向けさせ、そして唇に口づけした。
「!?」
「すまないな、これは今日だけのことにしておいてくれ……。ははは、次はもうしないからな!」
「ゼノビアさん……」
「また近いうちに会おう、ジルフォニア=アンブローズ。私は近衛騎士団、君はルーンカレッジの方で忙しいだろうが、また暇を見つけて王都に来てくれ。また任務かもしれないけどな」
「ええ、姫にも来るように言われていますから、ゼノビアさんのところにも顔を出しますよ」
「それじゃさらばだ、ジル。また会おう!」
ゼノビアは一人早足で王宮へ帰っていった。ジルと一緒に帰る気はないらしい。
ジルは今あった出来事を思い返してみたが、まだ気持ちの整理できないでいた。
(ゼノビアさんはどういうつもりで、あんな事をしたんだろうか……)
日も落ちそうなことから、展望台はすでに人がまばらであった。ジルは展望台から景色を見渡してみた。「水晶宮」と呼ばれる王宮が遠目に見え、夕日を浴びて美しい。そして王都の歴史ある街並みは、荘厳な雰囲気を作り出し、目を楽しませてくれる。
「今日は王都の案内ありがとうございました」
ジルが隣で肩を並べるゼノビアに礼を述べる。ジルとしても、今日はゼノビアと一緒に過ごし、なかなかに楽しい一日だった。
「ああ、君への礼のつもりだからな。気にしなくていい」
「礼と言えば、サイファーやガストンにも礼をしたんですか?」
「ああ、サイファーにはもうしたぞ。奴の希望で剣の稽古をしたんだ」
いかにもサイファーらしい無骨な願いである。
「晩餐会の日、君は朝遅く起きてきたようだが、サイファーと午前中、近衛騎士団の稽古場でな」
「どうでした?」
「ああ、サイファーはなかなか強かったぞ。もちろん真剣じゃなく、稽古用の剣だったがね。力では完全にサイファーの方が強かった。あの体だから想像できてはいたが、力比べでは完全に押されていたよ。だが、技術がともなっていなかった。力の受け流し、相手を追いつめる組み立てなど、剣の勝負というのは単なる力で決まるものではなく、技術や戦略が大事なんだ。とくに“試合”のような場合はな。私はこれでも騎士団で長年もまれてきて、密度の濃い経験を積んでいる。遠い先のことはともかく、今はまだサイファーに負けないよ」
ゼノビアは剣の腕だけでも近衛騎士団で上位の実力がある。さすがに力では勝てないが、その分戦いの技術は磨かれている。
「さすがゼノビアさんですね。僕から見ればサイファーも充分に強いのですけれど」
「そうだな、奴は強いよ。10年もすればサイファーに勝てる者はほとんどいなくなるかもしれん」
ゼノビアはサイファーを高く評価しているようだ。しかし稽古であったため、ゼノビアはルミナスブレードを使っていない。もし使っていれば勝負にもなってないだろう。
「それでガストンの方は?」
「……あ、ああ。や、奴はまだ考え中とのことだ」
「!?」
ゼノビアの挙動が急におかしくなった。ガストンと何かあったのかもしれない、とジルは感じた。
(ガストンの奴め、後で問いたださないとな)
**
空を眺めると、日はもう落ちそうになっていた。気づけば当たりも大分暗くなってきている。
「もう大分遅くなりましたね……。そろそろ帰りましょうか」
ジルが元の道に引き返そうとゼノビアに背を向けた。
そのジルの背中を……ゼノビアが抱きしめた。
「ゼ、ゼノビアさん?」
ジルが少し慌てた声をあげる。ゼノビアは何をしているのか?
ゼノビアの豊かな胸が、背中に当たっている……。それに、ゼノビアは意外にも甘い匂いがした。ゼノビアはジルを後ろから抱きしめたまま話しかける。
「ジル、今回は本当にありがとう。姫は私にとってとても大事な方なのだ。私は危うく任務に失敗しそうになった。君たちがいてくれなかったらな」
「いえ……、いいんですよ。お役に立てたなら嬉しいです」
「私は自分の気持ちをどうやって表せば良いか分からないんだ」
「今日ロゴスを案内してもらいましたし、服も買ってもらったじゃないですか」
「それじゃあ足らないんだ。どうしても気持ちを上手く伝えられない」
「……」
「ジル、ありがとう」
ゼノビアはジルの身体を自分の方に向けさせ、そして唇に口づけした。
「!?」
「すまないな、これは今日だけのことにしておいてくれ……。ははは、次はもうしないからな!」
「ゼノビアさん……」
「また近いうちに会おう、ジルフォニア=アンブローズ。私は近衛騎士団、君はルーンカレッジの方で忙しいだろうが、また暇を見つけて王都に来てくれ。また任務かもしれないけどな」
「ええ、姫にも来るように言われていますから、ゼノビアさんのところにも顔を出しますよ」
「それじゃさらばだ、ジル。また会おう!」
ゼノビアは一人早足で王宮へ帰っていった。ジルと一緒に帰る気はないらしい。
ジルは今あった出来事を思い返してみたが、まだ気持ちの整理できないでいた。
(ゼノビアさんはどういうつもりで、あんな事をしたんだろうか……)
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