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1 ルーンカレッジ編
041 上級魔法講義
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昼休みが終わり、レニが手を振りながら教室へと戻っていった。ジルも午後から授業が一つ入っている。ロクサーヌが担当する上級魔法の授業である。この授業は第三位階以上の魔法に関する講義である。
ジルが教室に入ると、学生たちの間でざわめきが起こった。最近ジルが授業に参加することは無かったので、同級生など学生たちがジルを目にするのも久しぶりだった。同じ中級クラスの学生たちでさえ、最近はジルに会っていなかったから、ジルと話したがっている学生は多かった。
「ジルフォニア! 久しぶりじゃない。あんた随分危ない目にあったんだってね」
遠慮のない口調で話しかけたのは、同じ中級クラスのイレイユである。赤い髪が特徴的な女子で、イレイユは常に「ジルフォニア」と短縮せずに呼ぶ。彼女は北のカラン同盟の出身である。カラン同盟には貴族は存在せず、厳格な身分の上下はない。そのため彼女も地位や身分の上下などに全く頓着しない性格である。
「やあイレイユ。フェニックスは呼び出せたかな?」
ジルは冗談まじりの口調でそう問いかけた。
「まだだよ! まだ出てきてくれないんだ」
冗談かと思いきや、本人はいたって真剣らしい。これがジルとイレイユの恒例の挨拶となっていた。
イレイユがルーンカレッジに入ったのは、実に変わった目的が理由である(と、ジルは考えている)。彼女はとにかく「フェニックス」が好きで、というよりは盲目的に愛しており、フェニックスの召喚だけが魔法を学んでいる理由なのだ。
ただし、フェニックスは召喚魔法で最も難易度が高く、第五位階に属している。これは天使や魔神の召喚レベルに等しい。常識的に言えば、イレイユにフェニックスの召喚が可能になる日が来るとは考えづらい。しかしジルは、イレイユの一念がいつか成就する日が来るような気がしている。
「危険ではあったけど、何とか無事に帰って来れたよ。カレッジの授業も無事に切り抜けたいものだね。授業にはあまり出席できなかったから」
「まっかせてよ! ジルフォニアが出られてなかった時のノートはしっかり見せてあげるから!」
「あの、私もジルさんに協力します……」
そう控えめに話しかけてきたのは、やはり中級クラスのルクシュである。ルクシュはイレイユの親友で、いつも一緒にいることが多い。綺麗な銀髪のわりに地味な性格であまり目立った存在ではないが、実は魔術師としてかなりの実力を持っている。
ルクシュは適正を持つものが少ない神聖魔法の優れた使い手なのである。神聖魔法は、魔術師としての適正とはまた別に適正があり、高い適正を持つものは稀である。ジルが使える神聖魔法はせいぜい第一位階までであるし、ロクサーヌにいたってはそもそも神聖魔法を全く使うことができない。
神聖魔法の適正についてはまだ詳しいことが分かっていない。ただ、ルクシュの実家が有名な神殿であり、一族がみな神官で神聖魔法の使い手であるように、祖先から積まれたカルマや遺伝が関係しているのではないか、というのが有力な説となっている。ルクシュは現在第二位階までの神聖魔法が使え、すぐに第三位階にも手が届くだろうと周囲から期待されている。
ジルは中級クラスの中で、イレイユとルクシュに対して一目置いている。それは彼女らが自分にない力や、自分とは異なる角度の情熱を有しているからである。もっともイレイユの方は将来性こみの評価ではあるが……。
「イレイユもルクシュもありがとう。お言葉に甘えて、この授業が終わってから休んでいたときの授業について教えてくれるかな。この礼は必ずするから」
「にゃははは、そんなこと良いのに。じゃあ、遠慮無く近いうちに返してもらからね!」
イレイユは良くも悪くも元気な子だ。疲れている時には迷惑に感じることがないでもないが、基本的に好感がもてる性格である。
「あっ、やば。ロクサーヌ先生が来た!」
イレイユとルクシュが急いで自分の席へと戻る。戻ってからもジルに手を振っている。
ジルが教室に入ると、学生たちの間でざわめきが起こった。最近ジルが授業に参加することは無かったので、同級生など学生たちがジルを目にするのも久しぶりだった。同じ中級クラスの学生たちでさえ、最近はジルに会っていなかったから、ジルと話したがっている学生は多かった。
「ジルフォニア! 久しぶりじゃない。あんた随分危ない目にあったんだってね」
遠慮のない口調で話しかけたのは、同じ中級クラスのイレイユである。赤い髪が特徴的な女子で、イレイユは常に「ジルフォニア」と短縮せずに呼ぶ。彼女は北のカラン同盟の出身である。カラン同盟には貴族は存在せず、厳格な身分の上下はない。そのため彼女も地位や身分の上下などに全く頓着しない性格である。
「やあイレイユ。フェニックスは呼び出せたかな?」
ジルは冗談まじりの口調でそう問いかけた。
「まだだよ! まだ出てきてくれないんだ」
冗談かと思いきや、本人はいたって真剣らしい。これがジルとイレイユの恒例の挨拶となっていた。
イレイユがルーンカレッジに入ったのは、実に変わった目的が理由である(と、ジルは考えている)。彼女はとにかく「フェニックス」が好きで、というよりは盲目的に愛しており、フェニックスの召喚だけが魔法を学んでいる理由なのだ。
ただし、フェニックスは召喚魔法で最も難易度が高く、第五位階に属している。これは天使や魔神の召喚レベルに等しい。常識的に言えば、イレイユにフェニックスの召喚が可能になる日が来るとは考えづらい。しかしジルは、イレイユの一念がいつか成就する日が来るような気がしている。
「危険ではあったけど、何とか無事に帰って来れたよ。カレッジの授業も無事に切り抜けたいものだね。授業にはあまり出席できなかったから」
「まっかせてよ! ジルフォニアが出られてなかった時のノートはしっかり見せてあげるから!」
「あの、私もジルさんに協力します……」
そう控えめに話しかけてきたのは、やはり中級クラスのルクシュである。ルクシュはイレイユの親友で、いつも一緒にいることが多い。綺麗な銀髪のわりに地味な性格であまり目立った存在ではないが、実は魔術師としてかなりの実力を持っている。
ルクシュは適正を持つものが少ない神聖魔法の優れた使い手なのである。神聖魔法は、魔術師としての適正とはまた別に適正があり、高い適正を持つものは稀である。ジルが使える神聖魔法はせいぜい第一位階までであるし、ロクサーヌにいたってはそもそも神聖魔法を全く使うことができない。
神聖魔法の適正についてはまだ詳しいことが分かっていない。ただ、ルクシュの実家が有名な神殿であり、一族がみな神官で神聖魔法の使い手であるように、祖先から積まれたカルマや遺伝が関係しているのではないか、というのが有力な説となっている。ルクシュは現在第二位階までの神聖魔法が使え、すぐに第三位階にも手が届くだろうと周囲から期待されている。
ジルは中級クラスの中で、イレイユとルクシュに対して一目置いている。それは彼女らが自分にない力や、自分とは異なる角度の情熱を有しているからである。もっともイレイユの方は将来性こみの評価ではあるが……。
「イレイユもルクシュもありがとう。お言葉に甘えて、この授業が終わってから休んでいたときの授業について教えてくれるかな。この礼は必ずするから」
「にゃははは、そんなこと良いのに。じゃあ、遠慮無く近いうちに返してもらからね!」
イレイユは良くも悪くも元気な子だ。疲れている時には迷惑に感じることがないでもないが、基本的に好感がもてる性格である。
「あっ、やば。ロクサーヌ先生が来た!」
イレイユとルクシュが急いで自分の席へと戻る。戻ってからもジルに手を振っている。
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