シュバルツバルトの大魔導師

大澤聖

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2 動乱の始まり編

105 炸裂! ルミナスブレード2

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「くっ」

 予想外の奇襲を受けたベイロンは、自分が危機に陥っていることを認めざるを得なかった。しかし、敵は数が少ないのだ。目の前の女=ゼノビアさえ倒せば、前衛のいない魔法使いなど紙のようなものだ、ベイロンはそう自らを奮い立たせた。

「おい、一緒にその女を倒すぞ!」

 ベイロンは隣の部下に声をかけ、左右から挟み撃ちにしようとした。当然ゼノビアもそうはさせじと、巧みに位置取りを変える。いまやベイロンと彼の部下たちの注意は、明らかにゼノビアに注がれていた。

(いまがチャンスね)

 透明化したまま機をうかがっていたミリエルは、自分の番がやってきたことを悟った。エルンストを見張る男は、ゼノビアがいつ自分に向かってくるか分からないため、前方のゼノビアへ過度に注意を向けているのだ。

 ミリエルは密かにエルンストたちに近づくと、レイピアを抜いて男の背後から心臓を突き刺した。

 グサっ、と刃物が身体を突き抜ける音がして、見張りの男は絶命した。なかなかの技術と言って良いだろう。ミリエルはそのままエルンストの身体を縛っていた紐を切って彼を解放する。そこへ林に潜んでいたバリオスがエルンストに駆け寄ってきた。

「閣下!!」

「!? バリオスか!」

 何事が起こったか分からないエルンストに対して、ミリエルが声をかける。

「わたしよ! 透明化しているといえば分かるでしょ!?」

「おお! お主、あの時のエルフか!」

 エルンストは状況を理解すると、倒された男から剣を奪い、ベイロンを前後から挟む場所に位置取った。

 これで形勢は完全に逆転した。シュバルツバルト側はゼノビア、ジル、ミリエル、バリオス、そしてエルンスト。帝国側はベイロンと部下の2人しかいない。

「くっ、きさまらシュバルツバルトの人間が、こんなところまで追いかけてくるとはな」

「貴様ももう終わりじゃな、ベイロン。ワシの息子と娘の仇、ここで討たせてもらうぞ」

 エルンストが剣を構え、ベイロンににじり寄る。さすがに一流の武人、構えに隙がない。

 ここにいたって、ベイロンは死ぬ覚悟を決めた。もとより闇の世界で暗躍してきた自分である、いつ死んでもおかしくないと日頃から覚悟していた。どうせ死ぬとしても、せめてゼノビアを道連れにしたいところだ、そうベイロンは考えていた。

 ところが、さらに戦いの形勢が変わったのである。

 馬の足音が聞こえてきた。それもかなり大勢のようだ。

「ふふふ、援軍が来たようだな」

 ベイロンがわざとゼノビアたちに聞こえるように言った。

「この男のたわごとはともかく、本当に敵が来ているようだな」

 ゼノビアが冷静にそう判断した。

「ま、待て! せめてこやつを殺してワシの仇を討たせてくれ」

「だめだ! この男はそう簡単には殺せない。時間をかければすぐに敵の軍がここに来るぞ。いまはご自分の命の安全をはかりなさい!」

 ゼノビアも余裕がなくなり、年長者に対する配慮もなくしている。

 ゼノビアがベイロンに剣を向けたまま、ジルとミリエルに指示を出す。

「ジル、ミリエル、フライの魔法を。ジルは私とエルンスト殿を、ミリエルはバリオス殿を頼む!」

 ジルとミリエルはフライの魔法を唱え、他のメンバーがそれぞれジルとミリエルの身体にしがみつく。その間もゼノビアはルミナスブレードをベイロンに向け、妙な動きをしないように警戒していた。

 こうしてゼノビアとジルの一行は空を飛び、難を免れる事に成功した。エルンストは仇を討つ寸前でベイロンを逃したことに腹を立てていたが、彼を救いロゴスに連れて帰ることができるのだ、これは大きな成功と言って良いだろう。ジルたちはそのままアム河の向こう岸に降り立ち、シュバルツバルト領内へと帰還したのであった。
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