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しおりを挟む「ひとつ言っておくがな」
食器を片付け終え、教室に戻る廊下を歩いていると、ふと衣澄が足を止めた。
「一人で食事するのが好きな奴もいる」
高宮も足を止めた。そしてそんなことを言い出す。
「え・・・・でもあの時、衣澄が・・・・っ」
頭痛を押さえるように額に手をあてる衣澄。
「お前は、あれが樋口だと分かっていると思ったんだ」
「・・・・樋口だと分かっているって?衣澄の知り合いだと思ってたんだけど・・・・?」
何を言っているの?と高宮は首を傾げた。
「・・・・・・・・。気にしていただろう。赤い首輪の」
衣澄は目を見開いている高宮から視線を外し、足元に視線を落とす。
「あの子が・・・・・?」
「おとなしくて、抗う術もないタイプはああなるんだ。クラスの娯楽になる」
抗う術、娯楽。高宮の脳裏に浮かんだのは、神津に弄ばれた光景。唇を噛み締め、拳を強く握った。心臓に衝撃が走ったように、肩がびくりと震えた。
「貴久!けいた!」
衣澄の口が開くと同時に、明るい声が2人にかかった。高宮は顔を上げた。
「有安」
「どうした~?お昼はもう食べた?」
衣澄を見る有安に昨夜の弱々しい姿はない。
「ああ。有安は」
「うん!食べたよっ」
昨夜の弱々しい姿はない。よかった、と思うと有安が高宮に顔を向けた。衣澄から見えないその表情は、無理に笑っているように見えた。忘れようとしているのか。
「けいたは何食べたの?貴久はどーせかけうどんでしょ」
甘えるように有安は衣澄の両手首を掴み、顔を覗き込む。高宮自身は女子と付き合ったことはないけれど、友人に出来た彼女とのやりとりにそれは似ていた。
「オレ・・・・・・?オレは醤油ラーメン。っていうか衣澄はいつもかけうどんなの?」
「そうだよ!学食でかけうどん以外食べてるところみたことないもん」
「有安っ。何の用だ」
いつもよりべたべたと接してくる有安に怪訝な目を向けているが、振り払う気はないようで、されるがままだ。
「用なんてないよ。いいじゃない。べ~つに」
有安の仕草が本当に、友人の彼女に似ていてカップルに見えた。雰囲気は真逆だけれど、衣澄はその友人に重なった。そして有安が彼の彼女。
「御崎、俺のカノジョ」
――――懐かしいな・・・・・。
懐かしい響きと、懐かしい声、懐かしい風景を再生させる。
「けいた」
「高宮」
衣澄と有安がじっと高宮を見ている。
「はいっ!」
「次の授業、遅れるぞ」
「帰り、一緒に帰ろっ」
衣澄と有安がお互いに顔を見合わせてから、同時に高宮に、強調するように言った。
「あ、うん、行こう!一緒に帰ろう」
衣澄と有安に頷いた。
「今日も部活休みだからさ!じゃぁね!」
一定間隔に設置された時計を見て、有安は踵を返し、手を振った。無意識なのか、それとも高宮の意識のしすぎなのか、衣澄から視線を外したときの有安の表情は悲しげに見えた。
「どうしたんだ」
「え?」
衣澄は教室に戻る廊下の先を見ていた。高宮は首を傾げて衣澄を見たが、衣澄は高宮を見ようとはしない。
「・・・・・・もといた高校の方が、やはりいいか」
衣澄の言葉に高宮は視線を落として、ふっと笑ってから答えた。
「すごいな、衣澄。・・・・・でも、そういうんじゃないんだ。いいとか悪いとかじゃなくて」
衣澄は何も言わない。
「父さんと離れることになって、こっちに来ても寮だし、母さんとも妹とも別れることになって、寂しかった。今の時期友達だって出来るか不安で、一人なら一人で生活するしかないなって思って。・・・・・・衣澄に、有安さんに会えてよかったなって思ったんだ」
離れた友人の姿を思い出して、目の前にいる新しい友人を恋しく思う。それは本当だけれど。高宮は一呼吸置いた。衣澄に何か言う気配がないのを察するとまた口を開く。
「ただ、衣澄とか、有安さんを重ねてるだけなんじゃないかなって・・・・・・思った・・・・・。雰囲気とか全然違うけど」
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