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20 と
しおりを挟む「有安さんが衣澄の次にできた、ここでの友達なんだ」
「・・・・・・っ」
「有安さんが笑っていられるなら、オレは大丈夫。だから初めて会ったときみたいに、明るい有安さんでいてよ」
どうして有安さんはこんなにも泣いた顔が似合わないんだろうと思った。他の人には屈託のない笑顔を貼り付けていられるのに、自分には悲しい顔を見せるんだろう。それが有安の本音の表情なのに、高宮には嬉しさどころか虚しさしか湧き上がってこない。
腰を屈めて、有安の前髪を搔き上げ、撫で付ける。年の割りに吹き出物ひとつない、なめらかな額に優しく唇を当てた。
「来なかったら 有安も同じ目に遭わせて、学園の慰みものにするかな」
昨夜言われた言葉を反芻し、唇を噛む。
「じゃぁ」
縋りつこうとする有安を振り払って自室に戻る。逃げ出したいけれど、逃げ出せないから。行くな、行かないでなんて言われたら、それに甘えてしまいそうだから。
部屋に入って、エナメルバッグを乱暴に部屋に置き、制服を脱でハンガーに掛ける。私服に着替えて、ベッドに腰掛けた。足を伸ばしてエナメルバッグの肩紐を寄せ、中から携帯電話を出す。衣澄からメールアドレスと電話番号を貰ったのを思い出し、何かメールしてみようと思ったけれど忙しそうなのでやめた。
暇になると名桜高校の友人のメールを読み返すことが多くなった。ここの「当然」に染まりたくはない。そしてその術は、名桜高校でのことを忘れないこと。
画面は一番多くメールをしていた友人の名前で受信メールの欄は埋まった。転校その日まで誰にも言えなかった。最後の最後まで言えずに、急に出てきてしまった。メールには、励ましの言葉だけ。咎めの言葉は一切ない。連続した名前の下に、父親の名前も見つかる。開いてみれば、ただ一言「身体には気をつけて」とだけ。陽気な母親とは対照的に不器用で愛想がないけれど、優しい人だった。どうして離婚したのか、高宮も分からなかった。夫婦喧嘩なんて見たことなかったから。そして、母親も父親もお互いを愛しているようにしか見えなかったから。自身も妹も愛されているようにしか感じなかったから。
「身体には気をつけて」
父親から引越し前に唯一もらった一言が胸に沁みた。自分は何をやっているのだろうかと。
腰掛けた状態から、背中からベッドに倒れこむ。閉じた瞳の眦から一筋滴った。
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