奇怪な街にアリアX

結局は俗物( ◠‿◠ )

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未完結打切り版(2010年)

木偶人形

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 でも、どうして僕はこんなところにいたんだろう?


 半信半疑にしていた…どこかで期待していた。組織の人々、白兎が言っていたことは嘘だと信じていたのだ。頭で何となく分かっていても、この目で見るまで信じないつもりだった。けれど脳裏を過った幼い自分の姿は白兎達の言っていたことは正しかったのかもしれない。そしてクリスマスツリーを見にいってしまったらその事実を認めることになるのではないか。
 横を見れば、ブティックのショーウィンドーに映る自分。脳裏を過った自分とはもう違う。あの時から何年経ったのだろうか。10歳は越えていただろうか。20年は前だろう。
 身長も変わった。髪型も変わった。目付きも変わった。環境も変わったのだ。 自分は借金を返済するために臓器売買して死んだらしい。そこを白兎に蘇生された。臓器売買して得た金は本当に借金返済に宛てられたのか。実家からごろごろ発見された兄弟は何故死ななければならなかったのだろう。
 視界にクリスマスツリーが入った。あの光景とは違って、真っ白いクリスマスツリーだ。近くの店は靴屋とファーストフード店。20年も前の話だ。変わらない方がおかしいとアレイドは笑う。悲しく、寂しい笑みだ。
 時計を見る。踵を返した。ホテルに戻らなければ。視界が滲む。どうしたいのか分からない。袖で目を拭う。ひりひりとした。触れなくてもいい記憶に触れたいのか、認めたくないだけなのか。惨めで、悲しかった。両親に棄てられて、憎いのか、憎みたいのか、甘えたいのか、情が残っているのか。分からない。
 ホテルまでの道はさっきよりも寒かった。ダッフルコートの少女からもらったカイロだけが温かかった。 ホテルに戻ると暖房がきいていた。カウンターでヨウスケはまだ寝ている。12時まであと5分だ。3階に上がり、部屋に戻ってすぐにオーナーはやってきた。
「オーナー」
「夜遅くにすまないな」
「構いませんが、どうしたんですか?」
 オーナーは部屋に入るわけでもなく部屋の前で立っている。
「あれのストーカーの話だ」
「女の子?ですか?」
「あぁ。知ってるのか」
「はい。それと思しき人を見たので」
 アレイドはポケットの中のカイロを握りしめた。
「そうか。ヨウスケにそれとなく訊いたんじゃが、ストーカーには気付いてない。出来れば早く捕まえて欲しい」
「分かりました」
「ヨウスケはあぁ見えて傷付きやすい。慎重にな」
 アレイドは頷いた。
「話はこれだけだ」
「え、これだけですか」
 長く重い話をされるかとばかり思っていた。
「あぁ。遅くまですまなかった」
 オーナーはそう言って去っていった。
 アレイドは部屋についているシャワー室に入った。服を脱いで、籠に放り込んだ。


「オカアサン、モウツカレタノ」

 お母さんは僕の首を締めた。

「ゴメンネ、ゴメンネ」

 お母さんが僕を殺すはずない。冗談だ。そうに決まってる。だって僕はお母さんの子どもなんだから…


「モウスグデラクニシテアゲルカラ…」

 お母さん。僕に名前をくれたお母さん。この世に生んでくれたお母さん。


 お母さんの顔は真っ黒だ。どんな顔なのかも分からない。


 最初で最期のお母さん。


「オイ!イマナラゾウキバイバイガタカクツクッテ」


 お父さん。お父さんと関わった記憶なんてほとんど無い。




「アァ!コロサナクテヨカッタワ!」

 僕の首に回っていた手が放れる。

「オトウサン、コノコヲウリマショウ!」


 嬉しそうな声。
 
 僕も嬉しかったのかもしれない。





 目覚めたときは背中が冷たかった。タオルを被せただけの全裸。


「カワイソウナコダヨナ」


 眩しい天井。覗き込んでくる顔。


「マサカアノオトコ、カンタンニ…」


「カネニコマッテソウダッタモンナ」


 僕は売られた。



 冷たい痛みが腹を刺した。
 痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。


 僕は親に売られた。他人の手で殺される。


 僕は死ぬんだ。




「そんな可哀想ならさ、助けちゃおうか?」



 怖い声だった。


 意識がなくなる。視界が真っ暗になる。何も聞こえなくなっていく。






 これが死か。





 背中が冷たい。そして真っ暗で、静かだ。



「やぁ。起きた?」




 この世界で僕とこの人たった2人。


 そんな気がした。


「言葉まで忘れさせちゃったかな?」



 額にぶちぶちと吸い付くチューブやコードを外される。



 真っ暗なこの部屋には人が赤くなってごろごろ転がっている。





「君が暴れたんだよ。優秀なスコット君が死んじゃった」




 電気も点いてない部屋。この人は湯気の立つ紅茶を飲んでいる。




「ボクのことはうさぎさんとでも呼んで」



 この笑いから逃れることは出来ないのだと悟った。

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