34 / 34
未完結打切り版(2010年)
NO TITLE 12 打ち切り
しおりを挟む
「クソガキにくだらねぇ話でもされたか」
「いいえ、実になる話ならされましたが」
「・・・・・・」
「ああ、そういえば、ストーカーの子、見ましたよ」
「そうか」
「彼女はストーカーではないように思えるんですが」
オーナーの眉間に皺が寄る。
「どういうことだ」
「ヨウスケ君は、山奥で出会った女性から預かったと聞きました。・・・・ストーカーの子から」
「・・・・・」
「どうなんです?」
「本当だ」
「ヨウスケ君は幼いときからこのホテルにいた・・・・と・・・・」
「ああ。ワシがおそらくそのストーカーから引き取った」
「何故です」
「ワシには娘がいたんだが、妻と別れてな。子どもを育てることが償いだと思ったんだ」
「償い・・・・・?」
「あまり踏み込んだ質問はするべきじゃない」
「すみません・・・・・」
愛想笑いをしてそうアレイドは言った。
「そのストーカーの娘は今どうしている?」
「神出鬼没で僕も分からないんです」
「そうか・・・・・」
オーナーは落胆しているように感じられた。
「会いたいですか?」
「いや・・・・」
「ヨウスケ君を連れて行かれそうですか」
ふとそんな言葉が出た。
「・・・・・引取りに来るのか?」
オーナーはこれ以上ないくらいに顔を顰める。
「いや、分からないですけど」
「アレは、ワシの息子だ・・・・ワシの孫だ・・・!」
「・・・・・多分、ヨウスケ君も引き取られることを望んでいませんよ」
慰めでも労りでも何でもない、アレイドはそう思っている。ヨウスケ自身がオーナーといることを望んでいる。
「・・・・・こんなつもりじゃなかったんだ・・・・」
「・・・・・」
「ある程度大きくなったら話してやるつもりだったんだ」
「話・・・・?」
ストーカーの少女から聞いた話のことだろうか?
『ああ・・・・・』
ゴオオオオオオオオ・・・・・・・
オーナーの口が確かそんな風に動いたのを見るとともに、爆音が耳に届いた。塵や埃、瓦礫を混じらせた灰色の煙が視界を包んだ。
いきなりすぎてアレイドも反応が遅れたが、すぐにオーナーの頭を押さえ、床に伏せさせた。庇うように覆い被さると背中に爆風が当たり熱い。
ドカァアアアン
さらに大きな爆音が響き、入り口がさらに大きくなる。壁がぼろぼろと崩れる。
「・・・・・っ」
「オーナー!?アリアさん!?」
灰色の煙が渦巻く視界の中でヨウスケの声が聞こえる。
「オーナーも僕も大丈夫だ!」
どうしたらいい?そんな迷いが生じる。ヨウスケ君を上の階に行かせるべきだろうか・・・・。そんな他人のことを考えていたからかもしれない、後頭部に何か硬い物を当てられる。誰かに背後を取られてしまった。
背後をとる人物が口を開く。
「立て。両手を上げろ。そこの老いぼれもだ」
この声には聞き覚えがある。無い筈がない。
「昼間ぶりだな」
「・・・・オーナー、すみませんが、立ち上がって下さい」
背後をとる人物の話を無視して、アレイドは立ち上がって両手を上げる。
「・・・・そこにいる17歳くらいの男を引き取りにきた。こいつらの命が惜しければおとなしく付いてくることだ」
「ダンテ君・・・・っなんで・・・・」
背後を取っている人物の名前を口にした。
アレイドには結果が見えている。オーナーも察しているだろう。
「ガキ!!行くな!!」
だからこそ、足掻く。
「黙れ」
ダンテはオーナーの臀部を蹴った。
「オーナー!俺、どうしたら・・・・っていうか、どうして俺・・・・?」
「本当の父親の顔、見たくないか?会わせてやらないことはない」
オーナーはぎりぎりと唇を噛んだ。「実の父親」という言葉が胸に突き刺さるのだろう。ヨウスケは揺らいでいるだろうと、オーナーには不安な考えが浮かぶ。
「・・・・・見たくない・・・・」
「そうか?本当に?そう言い聞かせているのか?自分に。それとも遠慮か」
「ダンテ君・・・・・やめろ・・・っ」
「まぁ、嫌でもお前はいずれ父親に会う。お互い気付かないかもしれないがな」
「・・・・・」
「で、どうする?ここに残って2つの頭を跳ね飛ばすのも悪くないんだが」
ヨウスケには煙の中の状況は見えていなかったが、今の一言で大体の状況が掴めた。選択肢があるようで、実は一つに絞られている。
「・・・・・分かりました。行きます。でも信用できません、先に放してください」
ヨウスケが拳を握り締め、固唾を呑んだ。
「分かった」
ダンテがアレイドとオーナーを脅迫していた銃口から放した。
灰色の空間を歩いていくと、ヨウスケとすれ違う。
「オーナー、すみません」
ヨウスケは笑った。オーナーは目を逸らす。
アレイドは反対方向に行こうとするヨウスケの腕を掴んだ。
「・・・・・・お前・・・・っ!」
ダンテがそれに気付き銃口をオーナーに定めた。
「甘いよ」
アレイドはスラックスの左ポケットに右手を突っ込み、そのままダンテ目掛けて仕込みナイフを投げつけた。
ダンテはロングコートを翻し、全て跳ね除けたが、その隙にアレイドはジャケットに隠した銃を向けた。
「プロではなかったみたいだね」
貶すような笑みを浮かべた。
「・・・・そこの少年、渡してくれる?」
「君がプロじゃないのは、嬉しい事実だな」
「渡せよ」
「・・・・嫌だ」
ガンッ
銃声が曇った空間の中で響いた。その振動からか、ひび割れた壁が少し床に落ち、瓦礫と化す。
「・・・・・っ」
「やられっ放しって本当、嫌いだな。頬がね、疼くんだよ」
ダンテの腕から赤い霧が現れた。銃がダンテの手から滑り落ちる。ゴト、と重い物が床に落ちる音がした。
「次は、脚がいいかな?」
片手で頬を摩る。
「何度も何度も、床にぶつけてくれたよね。覚えてる?」
何故だかいらいらする。あの子どもに会ったからだろうか。ストーカーの少女に会ったからだろうか?
「・・・・・っ!」
脂汗が額を伝っているのがアレイドにも見て取れた。
「ヨウスケ君、オーナーを連れて上へ・・・・」
「・・・・・はい・・・・」
足音が聞こえる。
「・・・・・・殺せよ・・・・」
ダンテが腕を押さえながらそう言って瞳を閉じた。
「・・・・何が狙いなの?」
アレイドが銃口を下ろさず訊ねた。
「どうしてヨウスケ君を狙ったの?」
「俺が話すと思って訊いているんですか?」
「・・・・本当に撃とうか?」
アレイドは口の端を吊り上げるように笑った。
「・・・・・・」
ダンテは舌打ちをして両腕を上げた。痛覚がないのか、平然とした表情だ。それともよほどの演技なのか。
「いつから気付いていたんです?」
「最初から。僕は君の腕を狙っていないもの」
「・・・・・」
ダンテは唇を噛み締めた。
「これで質問には答えなきゃならなくなったね」
嘲るように笑って引き金に掛けた指に力を込めるよう見せた。
「そうとも限りませんよ。死んでも構いません」
ダンテはそう言って口を固く閉じた。
アレイドは銃口をダンテに固定したまま近寄っていく。
「ああ、死んでくれるの?嬉しいな。邪魔が減る」
舌を噛んでいるのだろう、ダンテの顔が苦痛に歪む。
「でも、本当に噛み切れるの?僕も気長じゃないんだよね」
「どうせ死ぬなら今僕が殺してあげようか?」
意地の悪いことばかりが浮かぶ。僻みと敵対心、そして征服欲。
殺すつもりはない。今は。
「・・・・・」
「ま、いいや。今日は帰りなよ」
床に落ちている銃をダンテから遠ざけるように蹴る。
「ここのホテルを君の脳髄で汚したくないんだ。ごめんね」
「・・・・殺してやる」
前に見た金色の瞳とは違う、ぎらぎらとした瞳。
「前みたいには、やられないよ」
頬の疼きは止まらないまま。じんじんと、まるで身体は頬しかないような感覚に陥る。
「きっと君を殺すまで、頬は痛み続けるよ」
まだ殺さないけど、と胸の中で囁いた。
アレイドは崩れた1階に立ち尽くしたままだった。
隙を与えてやった。相手はそれに気付いたのか分からないけれど、このホテルから去っていった。
アレイドが自ら隠し持った煙幕弾を投げた。その隙に逃げたのだろう。・・・・いや、そのうちにヨウスケを連れ去りにでも行っただろうか。
アレイドは階段を上った。
「大丈夫ですか?」
廊下は冷えている。足音がよく響く。何階あるかは分からないが、全て回るのは面倒だった。
「ヨウスケ君、オーナー、大丈夫ですか?」
もうここには居られないかもしれない。けれど狙いが自分では無いとすると、ここに居なかった場合、ヨウスケは誰が守る?
「生きてます?」
大雑把に歩き回って声を掛けるが反応がないため、3階に向かうことにした。
彼等はアレイドが借りている部屋の隣の部屋にいた。
入り口にある照明の電源を入れるなり、ヨウスケに切りかかられるという災難に出くわす。掃除用具入れにでも入っているのか、サーベルだ。銃のボディで刃を受け止める。
「落ち着いて下さい」
「・・・・すみません・・・」
ヨウスケは力なくサーベルを床に置いた。本当に掃除用具入れに入っているのだろうか、とアレイドが疑問に思った。
「展開がいきなりすぎて理解が追いつかないのは僕もです」
「父親に会わせるってどういうことですか・・・・?なんで・・・・・」
「あの男を見るのは初めて?」
「はい・・・・・」
「君の父親にあたる人物の依頼かもしれない・・・・・」
ダンテの依頼人。ルピの父親・・・・・・?
アレイドは、はっとしてヨウスケを見つめた。複数の依頼を同時に受け持っているということもある。ルピの父親ではないかもしれない。きっとそうだ、絶対にそう、とアレイドは自分に言い聞かせた。
「・・・・そんな・・・・今更・・・・」
「ウチのクソガキは渡さん!絶対に!」
オーナーが凄んでアレイドの両腕を力強く鷲掴んでそう言った。
「ええ。僕もそのつもりです」
迂闊にヨウスケのもとから離れることが出来なくなってしまった。
「ですから、彼等のような掃除屋を依頼することをお勧めします」
アレイド自身はお金で動いているわけではないため、標的が依頼人より多く金を払えば標的として狙われることはないのかどうかは詳しいことは分からない。けれどダンテはおそらく自分と同じ部類だろう。示談金でどうにかなる相手ではない。金儲けではない。そう直感的に思った。
【未完】
「いいえ、実になる話ならされましたが」
「・・・・・・」
「ああ、そういえば、ストーカーの子、見ましたよ」
「そうか」
「彼女はストーカーではないように思えるんですが」
オーナーの眉間に皺が寄る。
「どういうことだ」
「ヨウスケ君は、山奥で出会った女性から預かったと聞きました。・・・・ストーカーの子から」
「・・・・・」
「どうなんです?」
「本当だ」
「ヨウスケ君は幼いときからこのホテルにいた・・・・と・・・・」
「ああ。ワシがおそらくそのストーカーから引き取った」
「何故です」
「ワシには娘がいたんだが、妻と別れてな。子どもを育てることが償いだと思ったんだ」
「償い・・・・・?」
「あまり踏み込んだ質問はするべきじゃない」
「すみません・・・・・」
愛想笑いをしてそうアレイドは言った。
「そのストーカーの娘は今どうしている?」
「神出鬼没で僕も分からないんです」
「そうか・・・・・」
オーナーは落胆しているように感じられた。
「会いたいですか?」
「いや・・・・」
「ヨウスケ君を連れて行かれそうですか」
ふとそんな言葉が出た。
「・・・・・引取りに来るのか?」
オーナーはこれ以上ないくらいに顔を顰める。
「いや、分からないですけど」
「アレは、ワシの息子だ・・・・ワシの孫だ・・・!」
「・・・・・多分、ヨウスケ君も引き取られることを望んでいませんよ」
慰めでも労りでも何でもない、アレイドはそう思っている。ヨウスケ自身がオーナーといることを望んでいる。
「・・・・・こんなつもりじゃなかったんだ・・・・」
「・・・・・」
「ある程度大きくなったら話してやるつもりだったんだ」
「話・・・・?」
ストーカーの少女から聞いた話のことだろうか?
『ああ・・・・・』
ゴオオオオオオオオ・・・・・・・
オーナーの口が確かそんな風に動いたのを見るとともに、爆音が耳に届いた。塵や埃、瓦礫を混じらせた灰色の煙が視界を包んだ。
いきなりすぎてアレイドも反応が遅れたが、すぐにオーナーの頭を押さえ、床に伏せさせた。庇うように覆い被さると背中に爆風が当たり熱い。
ドカァアアアン
さらに大きな爆音が響き、入り口がさらに大きくなる。壁がぼろぼろと崩れる。
「・・・・・っ」
「オーナー!?アリアさん!?」
灰色の煙が渦巻く視界の中でヨウスケの声が聞こえる。
「オーナーも僕も大丈夫だ!」
どうしたらいい?そんな迷いが生じる。ヨウスケ君を上の階に行かせるべきだろうか・・・・。そんな他人のことを考えていたからかもしれない、後頭部に何か硬い物を当てられる。誰かに背後を取られてしまった。
背後をとる人物が口を開く。
「立て。両手を上げろ。そこの老いぼれもだ」
この声には聞き覚えがある。無い筈がない。
「昼間ぶりだな」
「・・・・オーナー、すみませんが、立ち上がって下さい」
背後をとる人物の話を無視して、アレイドは立ち上がって両手を上げる。
「・・・・そこにいる17歳くらいの男を引き取りにきた。こいつらの命が惜しければおとなしく付いてくることだ」
「ダンテ君・・・・っなんで・・・・」
背後を取っている人物の名前を口にした。
アレイドには結果が見えている。オーナーも察しているだろう。
「ガキ!!行くな!!」
だからこそ、足掻く。
「黙れ」
ダンテはオーナーの臀部を蹴った。
「オーナー!俺、どうしたら・・・・っていうか、どうして俺・・・・?」
「本当の父親の顔、見たくないか?会わせてやらないことはない」
オーナーはぎりぎりと唇を噛んだ。「実の父親」という言葉が胸に突き刺さるのだろう。ヨウスケは揺らいでいるだろうと、オーナーには不安な考えが浮かぶ。
「・・・・・見たくない・・・・」
「そうか?本当に?そう言い聞かせているのか?自分に。それとも遠慮か」
「ダンテ君・・・・・やめろ・・・っ」
「まぁ、嫌でもお前はいずれ父親に会う。お互い気付かないかもしれないがな」
「・・・・・」
「で、どうする?ここに残って2つの頭を跳ね飛ばすのも悪くないんだが」
ヨウスケには煙の中の状況は見えていなかったが、今の一言で大体の状況が掴めた。選択肢があるようで、実は一つに絞られている。
「・・・・・分かりました。行きます。でも信用できません、先に放してください」
ヨウスケが拳を握り締め、固唾を呑んだ。
「分かった」
ダンテがアレイドとオーナーを脅迫していた銃口から放した。
灰色の空間を歩いていくと、ヨウスケとすれ違う。
「オーナー、すみません」
ヨウスケは笑った。オーナーは目を逸らす。
アレイドは反対方向に行こうとするヨウスケの腕を掴んだ。
「・・・・・・お前・・・・っ!」
ダンテがそれに気付き銃口をオーナーに定めた。
「甘いよ」
アレイドはスラックスの左ポケットに右手を突っ込み、そのままダンテ目掛けて仕込みナイフを投げつけた。
ダンテはロングコートを翻し、全て跳ね除けたが、その隙にアレイドはジャケットに隠した銃を向けた。
「プロではなかったみたいだね」
貶すような笑みを浮かべた。
「・・・・そこの少年、渡してくれる?」
「君がプロじゃないのは、嬉しい事実だな」
「渡せよ」
「・・・・嫌だ」
ガンッ
銃声が曇った空間の中で響いた。その振動からか、ひび割れた壁が少し床に落ち、瓦礫と化す。
「・・・・・っ」
「やられっ放しって本当、嫌いだな。頬がね、疼くんだよ」
ダンテの腕から赤い霧が現れた。銃がダンテの手から滑り落ちる。ゴト、と重い物が床に落ちる音がした。
「次は、脚がいいかな?」
片手で頬を摩る。
「何度も何度も、床にぶつけてくれたよね。覚えてる?」
何故だかいらいらする。あの子どもに会ったからだろうか。ストーカーの少女に会ったからだろうか?
「・・・・・っ!」
脂汗が額を伝っているのがアレイドにも見て取れた。
「ヨウスケ君、オーナーを連れて上へ・・・・」
「・・・・・はい・・・・」
足音が聞こえる。
「・・・・・・殺せよ・・・・」
ダンテが腕を押さえながらそう言って瞳を閉じた。
「・・・・何が狙いなの?」
アレイドが銃口を下ろさず訊ねた。
「どうしてヨウスケ君を狙ったの?」
「俺が話すと思って訊いているんですか?」
「・・・・本当に撃とうか?」
アレイドは口の端を吊り上げるように笑った。
「・・・・・・」
ダンテは舌打ちをして両腕を上げた。痛覚がないのか、平然とした表情だ。それともよほどの演技なのか。
「いつから気付いていたんです?」
「最初から。僕は君の腕を狙っていないもの」
「・・・・・」
ダンテは唇を噛み締めた。
「これで質問には答えなきゃならなくなったね」
嘲るように笑って引き金に掛けた指に力を込めるよう見せた。
「そうとも限りませんよ。死んでも構いません」
ダンテはそう言って口を固く閉じた。
アレイドは銃口をダンテに固定したまま近寄っていく。
「ああ、死んでくれるの?嬉しいな。邪魔が減る」
舌を噛んでいるのだろう、ダンテの顔が苦痛に歪む。
「でも、本当に噛み切れるの?僕も気長じゃないんだよね」
「どうせ死ぬなら今僕が殺してあげようか?」
意地の悪いことばかりが浮かぶ。僻みと敵対心、そして征服欲。
殺すつもりはない。今は。
「・・・・・」
「ま、いいや。今日は帰りなよ」
床に落ちている銃をダンテから遠ざけるように蹴る。
「ここのホテルを君の脳髄で汚したくないんだ。ごめんね」
「・・・・殺してやる」
前に見た金色の瞳とは違う、ぎらぎらとした瞳。
「前みたいには、やられないよ」
頬の疼きは止まらないまま。じんじんと、まるで身体は頬しかないような感覚に陥る。
「きっと君を殺すまで、頬は痛み続けるよ」
まだ殺さないけど、と胸の中で囁いた。
アレイドは崩れた1階に立ち尽くしたままだった。
隙を与えてやった。相手はそれに気付いたのか分からないけれど、このホテルから去っていった。
アレイドが自ら隠し持った煙幕弾を投げた。その隙に逃げたのだろう。・・・・いや、そのうちにヨウスケを連れ去りにでも行っただろうか。
アレイドは階段を上った。
「大丈夫ですか?」
廊下は冷えている。足音がよく響く。何階あるかは分からないが、全て回るのは面倒だった。
「ヨウスケ君、オーナー、大丈夫ですか?」
もうここには居られないかもしれない。けれど狙いが自分では無いとすると、ここに居なかった場合、ヨウスケは誰が守る?
「生きてます?」
大雑把に歩き回って声を掛けるが反応がないため、3階に向かうことにした。
彼等はアレイドが借りている部屋の隣の部屋にいた。
入り口にある照明の電源を入れるなり、ヨウスケに切りかかられるという災難に出くわす。掃除用具入れにでも入っているのか、サーベルだ。銃のボディで刃を受け止める。
「落ち着いて下さい」
「・・・・すみません・・・」
ヨウスケは力なくサーベルを床に置いた。本当に掃除用具入れに入っているのだろうか、とアレイドが疑問に思った。
「展開がいきなりすぎて理解が追いつかないのは僕もです」
「父親に会わせるってどういうことですか・・・・?なんで・・・・・」
「あの男を見るのは初めて?」
「はい・・・・・」
「君の父親にあたる人物の依頼かもしれない・・・・・」
ダンテの依頼人。ルピの父親・・・・・・?
アレイドは、はっとしてヨウスケを見つめた。複数の依頼を同時に受け持っているということもある。ルピの父親ではないかもしれない。きっとそうだ、絶対にそう、とアレイドは自分に言い聞かせた。
「・・・・そんな・・・・今更・・・・」
「ウチのクソガキは渡さん!絶対に!」
オーナーが凄んでアレイドの両腕を力強く鷲掴んでそう言った。
「ええ。僕もそのつもりです」
迂闊にヨウスケのもとから離れることが出来なくなってしまった。
「ですから、彼等のような掃除屋を依頼することをお勧めします」
アレイド自身はお金で動いているわけではないため、標的が依頼人より多く金を払えば標的として狙われることはないのかどうかは詳しいことは分からない。けれどダンテはおそらく自分と同じ部類だろう。示談金でどうにかなる相手ではない。金儲けではない。そう直感的に思った。
【未完】
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮なりきり夫婦録
石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」
「はあ……?」
雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。
あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。
空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。
かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。
影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。
サイトより転載になります。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる