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「名は何と…?」
「紅掛花…って勝手に呼んでる。本名はなんだったかな。でも紅掛花で返事するし、ねぇ?」
白馬はぶるる、と鼻を鳴らす。
「紅掛空に、この子の子供産ませたかったな。紅掛空はおばあちゃんだから望めないし、産むのに身体が持たないよ。勝手かな?オレのワガママで馬にまで子供作らせようなんて」
極彩は答えなかった。
「動物は人間と違って、産みたがってるんだよ。そう思っちゃうね、動物だから。人間の傲りか、事実かも、定かじゃないけど」
天藍は極彩の腕を引いて馬屋を出た。その際も極彩の印象に残るような情を二公子は馬に見せた。名残惜しむような呟きや、柔らかな手付きは優しさのある幼児とも重なった。
「このまま君を放したら、懲罰房だね」
「はい」
「もう衣装は決まったの?」
「はい」
二公子は腕を組み、顎に手を当てた。そして「何色?」と小首を傾げて訊ねた。いつの間にか白い手袋も嵌められている。
「橙です」
彼は感心するような声を漏らした。そして意外そうに極彩を見つめ、麗らかな瞳を細めた。兄と長弟によく似た眉が寄った。
「橙?明るくない?どうしたの。群青の影響とか?」
「まったく違います」
二公子は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、見てのお楽しみだから深くは訊かないけど」
肩や腕がぶつかるほど近くに天藍は寄り添い、何度か距離を保とうとすれば白い手袋に摘ままれた。城内に戻ると護衛の者たちと合流し、二公子とは地下牢に続く階段の前で別れた。
極彩を待っていたのは叩きに似た布の切れ端が先に付いた棒によって数十回ほど背を打たれるという比較的軽い刑罰だった。それから一縷の光も届かない暗い部屋に監禁される。音もなく冷たい空間で、極彩は蹲り、あずきや紅のことを考えた。そのあとに叔父との関係について良からぬ噂が流れていることについて思い悩んだ。さらには頭にそのような発想を抱いてしまったことさえあの穏やかで優しかった人を辱めているようで落ち着かなくなった。群青とのことまでありもしない、しかし客観視したときに否定しきれない妙な間柄として知れ渡っていることに重苦しさを覚えた。既婚男の足を引っ張り、その誉を瑕付け、胡桃に対しても酷い侮辱をしているに等しい。彼に迫られたときの切羽詰った告白はまだ耳の裏に張り付いたままで隙を狙っては囁いてきさえした。様々なあの男との思い出が蘇る。極彩は髪を掻き毟った。内面から自己によって責めさせる罰らしかった。分かっていても思考は停止せず、後ろめたさと申し訳なさが自身に牙を剥き、咎の在処を問う。それらを誤魔化してくれそうなものは何もなく、外部の音も一切聞こえなかった。たとえば地が揺れるだとか、城自体に圧力がかかれば多少の物音はしたかも知れないが、衣の音、息遣い、髪の軋み、心臓の鼓動、それらだけだった。視界に至っては指の先も見えなかった。動揺が爆ぜ、燃え尽きる。やがて紅の好んでいた歌を口遊んだ。自分の姿が自身ですら確認できないと途端に、照れも気恥ずかしさもなくなった。
やがて扉が開いた。思っていたよりも長いこと経っていたはずだった。しかし告げられた時間はあまりにも短かった。眩しさに顔を覆った彼女に人影が近付いた。
「大変でしたね」
知った匂いが鼻を通る。ふと顔を上げたがきつい抱擁にそれは許されなかった。すでに誰だかは分かっていたがその仕草で一瞬、特定に迷いが生じる。
「気は狂っていませんね?」
しかし物言いで、人違いでないことを確信する。
「もう気が狂っておりますから、かえって快方に向かったくらいです」
「……どういうことですか?どういう…?裏の裏は表ということでしょうか…?」
掻き毟り、引っ張ったために乱れた髪の一房一房を、視界を塞ぐ人物が直していく。
「申し訳ございません、さっぱり意味が分からなくて…」
「何でもありません!」
「そうですか?若様がお待ちです」
淡藤は極彩の身形を整えると地上階へ促した。護衛を侍らせ、天藍は腕を組んで待っている。
「痛みはないけど結構きついでしょ、あれ。罪悪感のある人間には。無い人には全然効かないから爪剥がしとかしちゃうけど。とはいえ、さすがにやり過ぎたかな?今回のことは彩に罪はないんだし。むしろ救われたくらいだよ。気拙さは進歩の敵だからね、あの娘の父君はなかなか優秀でさ、あの娘処罰したら色々面倒臭いでしょ。ただでさえ気狂い水飲まなきゃ話進まなかったりするんだよなぁ」
白手袋は軽やかに極彩へ手招きした。
「でもさすがにあれは重すぎるからオレなりに彩にとっての罰ってものを考えたわけ。若干オレのシュミも入ってるけど」
天藍は地下牢にあるはずの首枷と黒鞭を彼女の目に入れさせた。その不穏な空気に極彩は眉根を寄せた。
「大丈夫だよ、嵌めるのはオレだから」
護衛や地下階段の警備、その場にたまたま居合わせた下回りたちに戦慄が走った。その言葉どおり、天藍は首枷を嵌めた。罪人や賤しい下民に使われた物を二公子がその肌に付けている!これは忌々しきことだった。
「こういうお店で働いてたんでしょ?生憎オレは行けなかったけど…、こっちのほうが彩には罰になるよね?」
天藍は不敵に笑い、首輪の繋がる鎖と黒鞭を極彩へ差し出した。
「破廉恥でございます」
「破廉恥なものか。いい?これは君への罰なんだから、君が羞恥心を伴わなきゃ意味ないよ」
極彩はぶるぶると首を振って弱すぎるほどの抵抗を示した。
「あは、もしかして不敬罪だと思ってる?そもそも彩はオレのこと敬ってくれたことなんかあったっけ?安心してよ、飼っている側のほうが偉いだなんて誰も決めてないんだし。大丈夫、不敬罪にはならないから。君に敬意があったならね。だっていつ、飼われている側のほうが賤しいだなんて決めたのさ。オレの馬のほうが馬番よりも良い物食べてるよ。そんなだからたまに紅掛空を蹴ったり抓ったりする輩もいるくらいなんだし…」
それで何の話だっけ、と天藍は極彩の真後ろにいる淡藤と麗らかな目を合せて訊ねた。
「姫様の刑罰の話でございます」
「そうだった、そうだった。ありがとう。さ、ほら、オレを連れ回して散歩がてら。明日は座ってるだけでいいんだし」
天藍は極彩の手に無理矢理鎖を握らせ、さらに自身の装飾品である紐を使って彼女の掌に持ち手を縛り付けてしまった。
「このまま高い所から飛び降りようか。淡香の舞台から飛び降りよう。次の河岸で結ばれるよ。河教的には。でも河教徒じゃない彩はどうなるんだろう?どうなると思う?」
「灰となり土に還るのみです」
「それは君の願望だね。焼かないかもしれないし」
首輪に引っ張られ極彩は歩かされた。人通りの多い廊下は視線を集めた。官吏の多い通路ではどちらに対してか叱咤と怒声が飛ぶ。
「群青も呼ぼうか?多頭飼いする?でも朝一番で任務行っちゃったからな…おアツい関係を思い出すでしょ?こういうお戯れもしたんじゃない?虐待 遊戯も?」
「いいえ。そんなことは、そんなことは……」
極彩は頭を抱えた。若君は愉快に笑う。
「そういえば、弟と話したがってるって報告が来たんだけど、どうしたの?奴隷にでもしたかった?」
「違います」
「そう?別に彩が望むなら尽力するけど。あっちのほうは稚児同然だけど、仕込めばそれなりなんじゃない?良い愛撫犬になると思うけどな」
あからさまな単語に極彩は顔を伏せる。
「紅掛花…って勝手に呼んでる。本名はなんだったかな。でも紅掛花で返事するし、ねぇ?」
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「紅掛空に、この子の子供産ませたかったな。紅掛空はおばあちゃんだから望めないし、産むのに身体が持たないよ。勝手かな?オレのワガママで馬にまで子供作らせようなんて」
極彩は答えなかった。
「動物は人間と違って、産みたがってるんだよ。そう思っちゃうね、動物だから。人間の傲りか、事実かも、定かじゃないけど」
天藍は極彩の腕を引いて馬屋を出た。その際も極彩の印象に残るような情を二公子は馬に見せた。名残惜しむような呟きや、柔らかな手付きは優しさのある幼児とも重なった。
「このまま君を放したら、懲罰房だね」
「はい」
「もう衣装は決まったの?」
「はい」
二公子は腕を組み、顎に手を当てた。そして「何色?」と小首を傾げて訊ねた。いつの間にか白い手袋も嵌められている。
「橙です」
彼は感心するような声を漏らした。そして意外そうに極彩を見つめ、麗らかな瞳を細めた。兄と長弟によく似た眉が寄った。
「橙?明るくない?どうしたの。群青の影響とか?」
「まったく違います」
二公子は苦笑いを浮かべた。
「まぁ、見てのお楽しみだから深くは訊かないけど」
肩や腕がぶつかるほど近くに天藍は寄り添い、何度か距離を保とうとすれば白い手袋に摘ままれた。城内に戻ると護衛の者たちと合流し、二公子とは地下牢に続く階段の前で別れた。
極彩を待っていたのは叩きに似た布の切れ端が先に付いた棒によって数十回ほど背を打たれるという比較的軽い刑罰だった。それから一縷の光も届かない暗い部屋に監禁される。音もなく冷たい空間で、極彩は蹲り、あずきや紅のことを考えた。そのあとに叔父との関係について良からぬ噂が流れていることについて思い悩んだ。さらには頭にそのような発想を抱いてしまったことさえあの穏やかで優しかった人を辱めているようで落ち着かなくなった。群青とのことまでありもしない、しかし客観視したときに否定しきれない妙な間柄として知れ渡っていることに重苦しさを覚えた。既婚男の足を引っ張り、その誉を瑕付け、胡桃に対しても酷い侮辱をしているに等しい。彼に迫られたときの切羽詰った告白はまだ耳の裏に張り付いたままで隙を狙っては囁いてきさえした。様々なあの男との思い出が蘇る。極彩は髪を掻き毟った。内面から自己によって責めさせる罰らしかった。分かっていても思考は停止せず、後ろめたさと申し訳なさが自身に牙を剥き、咎の在処を問う。それらを誤魔化してくれそうなものは何もなく、外部の音も一切聞こえなかった。たとえば地が揺れるだとか、城自体に圧力がかかれば多少の物音はしたかも知れないが、衣の音、息遣い、髪の軋み、心臓の鼓動、それらだけだった。視界に至っては指の先も見えなかった。動揺が爆ぜ、燃え尽きる。やがて紅の好んでいた歌を口遊んだ。自分の姿が自身ですら確認できないと途端に、照れも気恥ずかしさもなくなった。
やがて扉が開いた。思っていたよりも長いこと経っていたはずだった。しかし告げられた時間はあまりにも短かった。眩しさに顔を覆った彼女に人影が近付いた。
「大変でしたね」
知った匂いが鼻を通る。ふと顔を上げたがきつい抱擁にそれは許されなかった。すでに誰だかは分かっていたがその仕草で一瞬、特定に迷いが生じる。
「気は狂っていませんね?」
しかし物言いで、人違いでないことを確信する。
「もう気が狂っておりますから、かえって快方に向かったくらいです」
「……どういうことですか?どういう…?裏の裏は表ということでしょうか…?」
掻き毟り、引っ張ったために乱れた髪の一房一房を、視界を塞ぐ人物が直していく。
「申し訳ございません、さっぱり意味が分からなくて…」
「何でもありません!」
「そうですか?若様がお待ちです」
淡藤は極彩の身形を整えると地上階へ促した。護衛を侍らせ、天藍は腕を組んで待っている。
「痛みはないけど結構きついでしょ、あれ。罪悪感のある人間には。無い人には全然効かないから爪剥がしとかしちゃうけど。とはいえ、さすがにやり過ぎたかな?今回のことは彩に罪はないんだし。むしろ救われたくらいだよ。気拙さは進歩の敵だからね、あの娘の父君はなかなか優秀でさ、あの娘処罰したら色々面倒臭いでしょ。ただでさえ気狂い水飲まなきゃ話進まなかったりするんだよなぁ」
白手袋は軽やかに極彩へ手招きした。
「でもさすがにあれは重すぎるからオレなりに彩にとっての罰ってものを考えたわけ。若干オレのシュミも入ってるけど」
天藍は地下牢にあるはずの首枷と黒鞭を彼女の目に入れさせた。その不穏な空気に極彩は眉根を寄せた。
「大丈夫だよ、嵌めるのはオレだから」
護衛や地下階段の警備、その場にたまたま居合わせた下回りたちに戦慄が走った。その言葉どおり、天藍は首枷を嵌めた。罪人や賤しい下民に使われた物を二公子がその肌に付けている!これは忌々しきことだった。
「こういうお店で働いてたんでしょ?生憎オレは行けなかったけど…、こっちのほうが彩には罰になるよね?」
天藍は不敵に笑い、首輪の繋がる鎖と黒鞭を極彩へ差し出した。
「破廉恥でございます」
「破廉恥なものか。いい?これは君への罰なんだから、君が羞恥心を伴わなきゃ意味ないよ」
極彩はぶるぶると首を振って弱すぎるほどの抵抗を示した。
「あは、もしかして不敬罪だと思ってる?そもそも彩はオレのこと敬ってくれたことなんかあったっけ?安心してよ、飼っている側のほうが偉いだなんて誰も決めてないんだし。大丈夫、不敬罪にはならないから。君に敬意があったならね。だっていつ、飼われている側のほうが賤しいだなんて決めたのさ。オレの馬のほうが馬番よりも良い物食べてるよ。そんなだからたまに紅掛空を蹴ったり抓ったりする輩もいるくらいなんだし…」
それで何の話だっけ、と天藍は極彩の真後ろにいる淡藤と麗らかな目を合せて訊ねた。
「姫様の刑罰の話でございます」
「そうだった、そうだった。ありがとう。さ、ほら、オレを連れ回して散歩がてら。明日は座ってるだけでいいんだし」
天藍は極彩の手に無理矢理鎖を握らせ、さらに自身の装飾品である紐を使って彼女の掌に持ち手を縛り付けてしまった。
「このまま高い所から飛び降りようか。淡香の舞台から飛び降りよう。次の河岸で結ばれるよ。河教的には。でも河教徒じゃない彩はどうなるんだろう?どうなると思う?」
「灰となり土に還るのみです」
「それは君の願望だね。焼かないかもしれないし」
首輪に引っ張られ極彩は歩かされた。人通りの多い廊下は視線を集めた。官吏の多い通路ではどちらに対してか叱咤と怒声が飛ぶ。
「群青も呼ぼうか?多頭飼いする?でも朝一番で任務行っちゃったからな…おアツい関係を思い出すでしょ?こういうお戯れもしたんじゃない?虐待 遊戯も?」
「いいえ。そんなことは、そんなことは……」
極彩は頭を抱えた。若君は愉快に笑う。
「そういえば、弟と話したがってるって報告が来たんだけど、どうしたの?奴隷にでもしたかった?」
「違います」
「そう?別に彩が望むなら尽力するけど。あっちのほうは稚児同然だけど、仕込めばそれなりなんじゃない?良い愛撫犬になると思うけどな」
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