2 / 12
ログイン
しおりを挟む「どういうこと…だ?」
先程までちょっとボヤけていて視界が悪かったが今になって安定してきた。
「も…もしやっ!」
俺は自分の身体へ目をやった。
股のとある感覚がない。
いや、なにも感じない。
分かり難いと考えた結果、憩いの広場の中央に位置する大噴水へと急いで向かった。
「やっぱり…」
どうやら俺は完璧にキャラに成りきってしまった様だ。
俺が昔プレーしていたキャラクターはラグナという名前でプレーしており、伝説の存在とされ、種族としては存在しているのが俺だけなので何かは良く分からない。
ただ言えることはこれは俺が特別に作り上げたアバターだということだ。
唯一無二のアバターをな。
ーー〈アバター自由変更権〉
これは俺が数年前に開催されていたある大会で連続優勝したことによる特別特典である。
一般的には何処かの種族に属し、混血種は百万分の一の確率で生成される。
しかし世間でいうリセマラ等という行為は不可能であり一度作成したアバターでしかゲームは遊べないのだ。
要は運任せということになる。
因みに性別はプレイヤーの性別と同じであり、ネカマやネナベ等の行為は不可能だ。
勿論、ショップなんかの課金アイテムにも存在せず、種族や顔つきを変更することはできない。
あるとすればメイクくらいだな。
しかし〈アバター自由変更権〉を使用すれば種族から顔つき、体つきまで、性別まで事細かく設定できるのだ。
あの頃の俺はとにかく美人で絶対に負けないようなアバターを作ってみたいと思ってしまった。
ちょっとした出来心だったんだ…。
何せ〈天使〉〈悪魔〉〈エルフ〉〈龍人〉等の選択すらできず、一部は存在すらしない種族の混血種のアバターを作り上げたんだから…。
そして今の俺の格好はログアウトした直前の装備、ということは他の皆は平凡な装備だというのに俺だけ最強武器を装備しているようなもんだぞ。
「お、おい…あれ見てみろよ」
「なんだ一人だけ…」
ざわざわとした雰囲気が背後から感じる。
「お、美紅。どうだ?このゲームは」
「え?どちら様ですか…?」
「……俺だ、蒼だよ。ん?確かに声が変だよな」
どうやら性別が変わったことにより声も変わって女子っぽくなっている。
「「えぇぇぇぇ!?」」
祐希と美紅の叫び声が憩いの広場に木霊した。
「蒼なの…?でも…女の子よね?」
「これはこのゲームが改良される前にしてたデータを使ったというかなんというか…」
このままでは埒が明かないと思った俺は一から説明した。
一応クラスのやつらにも。
「おいー、なんだよお前だけチートかよ」
「てか、お前女になってんのか?」
「まぁいい。直ぐに追い付いてやるよ、へへっ」
クラスのお調子者の大和田 翔がざわざわとした雰囲気を変えてくれた。
「ははっ、こっちも追い付かれるつもりはないけどな」
しかしなにかがおかしい。
今気づいたがこの憩いの広場には必ずNPCが複数人スポーンしている筈なのだが。
「なんか暑くない…?」
「確かに暑さを感じるな」
「ーーーっ!?なんだ!この光は…」
憩いの広場に転送されてから約数分後、俺達全員は謎の光に包まれた。
この光がすべての始まりだったーーー。
「くそっ…状態異常はないみたいだな。キルされたわけでもない、今はどうなってるんだ」
何の音も聞こえず見えず、VRのバグかなんかだと思っていた。
ーーー数分後。
「ーっは!意識が飛んでいたのか?この俺が?」
気絶無効のパッシブスキルを持つのにも関わらず意識が飛んでいたことに動揺してしまった。
先程までは意識がはっきりしていたのに…どういう状況なのか把握しようとしていたが…。
慌てて辺りを見渡し今の状況を把握する。
どうやらここは先程と変わらない憩いの広場らしい、他の皆はしっかりと……。
「おい、美紅。起きろ!」
美紅を抱き上げて起こす。
その時、ある違和感がそこにはあった。
「……心音?なんで」
肌触り等は先程確認したのだが、心音までは確かに無かった。
急なアップデート?そんな筈はない、プレイヤーに影響が出ない為にも強制ログアウト等する筈だが。
「大丈夫ですか?皆さん倒れてますけど…」
「大丈夫ですよ、ちょっとだけ疲れてるみたいなもんですから」
プレイヤーか?NPCはないよな…、こんな流暢に会話ができる筈ないし、もしやこれもアップデートなのか?
どれがアップデートでバグなんだか、ワケわからんな。
取り敢えず皆を起こして回るか。
「美紅…美紅!」
「はっ、はい!って蒼?」
「ずっと気絶してただろ、それに…なにか変化を感じないか?」
そう言って俺は美紅の手を俺の心臓の位置にピタリと置いた。
「……なに?蒼の方がデカイよって?」
「ばっ、ちげぇよ!心音!ドクンドクンいってるだろ」
「違うの?まぁ確かに先程とは比べ物にならないくらいにリアルね」
「それにだ。周りを見てくれ!」
美紅を起こす前にそのもうひとつの異変にも気が付いた。
20人居た筈なのに俺と美紅を含み7人まで減っていたのだ。
「まぁ皆を起こして回ろう。ここは憩いの広場なんだ、大の字で寝てる奴が居たら迷惑だろう」
「それもそうね」
◇
皆を起こした後に一旦会議を開くことにした。
「これからどうすればいいの?なんか人数減ってるけど?」
先生が俺に尋ねてくるが俺が聞きたいくらいだ。
急に辺りが明るくなったと思ったら気を失って何人か消えてるんだからな。
「まぁ一応体験はできたんですし、一旦休憩ということで戻りましょう。多分他の皆は強制ログアウトとかしたんじゃないかな?」
先生の言う通りか。
まぁプレゼントなんだ、家に帰ったらじっくりと…。
「ない!メニューがさっきまで開けていた筈なのに!」
美紅が異変に気付き全員が確認してみるが俺含む全員がメニューと言ってもメニューが開かれない。
それにふと気付くと腰の位置にポーチが装着されていた。
先程まではなにもなかったのに。
「なんだこれ?金?」
「あぁ、それはこの世界におけるお金だな」
祐希にもポーチがついている、どうやらこれも全員同じようだ。
「金しかないってねぇのか?てかなんだこれ…そこが見えねぇ」
「それは多分アイテムポーチだな。一応有限はあるようだが俺が数年使っても溢れるようなことはなかった」
「そんなのほぼ無限じゃねぇか」
「有限とだけおもっておけばいいさ」
「お、おお」
俺が飛びきり美人に作ったせいかこんな状況だというのにも関わらずチラチラと翔がこちらを見てくる。
良く考えろ、お前達が見てる中身は男なんだぞ。
今さらだが俺の容姿を詳しく説明すると背中に翼が計6枚が片翼に3枚、右翼は黒で左翼は白色、ステータスを低下させることになるが翼は収納可能だ。
翼にはそれぞれスキルが振られているがそれはまた今度にしよう。
あまりに強いこともあり【リミッター】なるスキルを手に入れ何時もは圧倒的すぎる力だがたまにはいい戦いというものをしてみたいものだからな。
基本的に体力等の下げなくていいステータスは下げない等の調整もできる。
一応【限界突破】等というスキルもあるが使った事は無い。
更に目の色は黄金色、髪の毛は腰の位置まで綺麗でクセのない銀髪。
身長は現実とは殆ど差がない170センチ。
我ながらなんでも良いと思ったのを片っ端から突っ込んだ覚えしかないのだ。
因みにまだ隠し要素はある。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる