3 / 12
スタート
しおりを挟むこの翼は余りに目立ちすぎる。
仕方ない、一旦閉じておくか。
「美紅、先生。ちょっと話が」
今頭が回りそうなのはこの2人でいいだろう。
「まずは個々のステータスが見たい、帰れる方法を見つけるにしろ今のところは実力が知りたい」
「ゲームって大抵初期は同じじゃないの?」
「違うんだ、このゲームはな。種族によって得意不得意やステータスに差があるからな」
「そうだったの!?じゃあ私は?」
「見たところエルフだしな、耳のところとか。結構レアな方だしいいと思う。魔力量に長けてるし、エルフ専用の魔法だってあるぞ」
「ステータス?を見ればいいのよね。それはどうやって見るの?」
「えーっと、ステータスオープンだ」
「了解!ステータスオープン…ステータスオープン!」
「どうした?」
「いや……でてこないよ?」
普通ならばボードのようなものが浮かび上がって来る筈だし…ということは!
「まさかメニューまでも無くなった何て言わないよなっ!?」
俺は即座にメニューを確信するが反応しない。
俺の操作方法が間違っているかって?
残念だがそれはない。
予め、操作方法などメニューの開きからからなにまで教えてもらってたからな。
だからこんな異常な感覚を疑ったんだ。
「え…?どういうこと?メニューが開けないの?っていうことは…」
「多分だが…ログアウトもできない…!」
あまりの驚きに大声に出してしまった、そらにより周囲にもこの事実が伝わる。
「不味いな…」
「ーーどう言うことだよ…」
翔に聞こえていたのか翔が聞いてくる。
後からゆっくりと説明すべきだったか…。
「いや…待ってくれ」
俺はふと思った。
今の状況でもしも死ねばどうなる?
ゲームのように復活できるのか?
もしかしたらゲームじゃないのかもしれない。
何故こんなのを〈アルティメア〉が送ってきたんだ?
疑問が山みたいに積もっていく。
「くそっ…今こんなこと考えても仕方ないか」
今一番気になるのはステータス等の確認と、死亡したらどうなるのかだ。
「翔!これはゲームだと思うが、もしかしたら現実と変わらないかもしれない。だから別に死んでもいいかなんて思わないでくれ」
絶望して発狂とかは止めてくれよ…。
「ははっ!正直言ってこんな世界に憧れてたんだよなぁ…魔法も使えて冒険者とかで暮らせる世界に!」
「……え?」
翔が嬉しそうに両手を掲げて喜んでいる。
蘭はちょっと不安そうにしているが過呼吸とまでは至らなかったようだ。
「そうだよ!あんな勉強ばっかりじゃ飽き飽きだからな!俺もこんなに格好良くなってんだしさ!」
アバターの補正によって顔にも影響がでており、不細工になった人や普通のままな人はおらず大抵格好良いか可愛くなっていた筈だ。
「でも…お母さんにもお父さんにも会えないんだよ……」
大和 未来が号泣していた顔を手で拭いながら問いかける。
「…まぁそれはちょっと嫌かもな」
「いいんだよ、どうせ怒られるしかねぇからな!」
「確かにな…」
少しはしゃいでいた翔も落ち着いたように地面へと腰を下ろす。
「ここは憩いの広場という場所だ。そしてもう日も暮れてきたんだし近くの宿に宿をーー」
「ーー失礼」
俺の話を切るように俺の背後から声がかかった。
あり得ない出来事に俺は咄嗟に振り向く。
俺には魔力感知のパッシブスキルがある。
それは先程に使用されていることを確認済みだ。
それに通常のスキルも使用可能だった。
試しに身体強化やファイヤを超微力で使用したからだ。
それなのにも関わらず俺に感知されないまますぐ背後をどうやって…?
「誰だっ!……貴方は!?」
そこに立っていたのは美しく、水色の衣を羽織った女性がいた。
俺のアバターにも並ぶ程に綺麗だとその場の誰もが思っただろう。
「突然失礼しました。この憩いの広場に…いえ各場所に突如生命体が現れました。その確認をしに来たまでです。あなた達がその対象ですね?」
「あ、あぁ。間違いない。突然当たりに眩しくなって気付いたらこんなことに…貴女は管理者ですか?」
「迷い人ですか…。管理者?私は女神テーテルでありその管理者というものではありません」
「女神テーテル?聞いたことない名前だな……」
「ディリメントでは案外信仰されてる女神だと自負してるのですが…迷い人が知る筈もないですよね」
「ディリメント?ここはディメリメント、ゲームの世界だろ?」
「いえ、ここはディリメントという世界です。少なくともディメリメントというものは存じておりません」
最悪の展開だ。
ゲームの中に囚われてるという可能性を信じたかったが、いまの話の通りならばここは別の世界。
異世界ということだ。
この女神とやらが信じれる訳じゃないがな。
ならば帰れる可能性は相当に低いと考えられる。
だが俺は実を言うとこの状況を嬉しがっているというのは皆にはまだ内緒だ。
「じゃあ死んだらどうなるんだ?」
「当たり前のことを聞かないで下さい。誰でも死んだら終わりです。ただし、条件を満たせば蘇生行為は可能です」
蘇生は可能なのか、ディメリメントでも蘇生はあった。
だが復活できるし、あるとしたら軽いデスペナルティくらいだった。
「因みにその条件とは?」
「仕方ないですね、迷い人ということですので幾つかなら答えてあげましょう。それは蘇生の実、それか禁忌魔法【神の雫】の使用です」
「なっ…なに!?蘇生の実に禁忌魔法!?」
「どうしたんだよ、理解できるのはお前くらいなんだからしっかりしてくれよ?」
「そうよ、しっかりして」
美紅に祐希、それに他の3人も女神の話に聞き入っている。
「蘇生の実…俺でも1つしか持っていないぞ」
蘇生の実、実は2個程持っている。
だがこれはもしもの時用だ。
俺が持ってると皆に言ったとしてもし他の人に使えないときが来たら俺は皆にどんな顔をしたらいいのかわからなくなる。
万が一の保険だ。
自分を守るための…だがな。
「それに禁忌魔法は240時間に1度だけ使用できる。それも自身の魔力全てを使用して漸く使える、正に禁忌魔法だ」
全身から魔力が無くなる、即ち指ひとつとして動かない。
ほぼ瀕死状態だ。
「良くご存じですね、迷い人にも関わらず」
「えぇ、まぁね」
「多分だが……12時間以内に蘇生行為をしないと蘇生不可になる、そうだろ?」
「そこまで知っているとは、あなた何者です?それにその格好…」
「ただの異世界人さ…」
刺さるような鋭い目付きで体を舐める様にみてくるのはあまり嬉しくないな…。
もしも翼を展開していたら面倒なことになっていたかもしれないな。
「じゃあこれからどうしたらいいと思う?」
「さっきから女神様にたいして失礼よ!」
美紅にバシッと頭を叩かれたがこいつが本当に女神なのかもわからないし特に気にしていなかった。
本当に女神なら謝らなきゃだな。
「まぁいいです。まずはこの先にあるブルト王国に行って宿を取ってみてはどうでしょう?冒険者になるもよしです」
「(ブルト王国か…そこは同じなんだな)」
「ブルト王国に入る際に検問がありますが迷い人といえば仮身分証がもらえるでしょう。冒険者ギルドでギルドバッジを作ればそれが身分証となります」
「そこまで教えてもらえるとは、ありがとう」
「「「ありがとうございます」」」
「一応女神ですし、この世界には直接干渉できないのでこれからは自力で頑張ってください。もしかしたら教会でお会いできるやもしれませんが」
礼を言った直後に女神テーテルは消えた。
「落ち着いて聞いてくれ、今の話でこれは現実だということが確定した。しかし、だ!ここは剣と魔法の世界であり可能性は無限大だ!もしかしたら家に帰れる方法もあるかもしれない。絶望してないで自分を磨くのを忘れずにいこう。そしてはぐれた他の皆を探すんだ!」
「「おぉ!」」
男子はやる気に道溢れている。
しかし蘭と未来はやはり今の状況を理解するので一杯一杯という感じが伝わってくる。
教会や冒険者ギルド等がこの世界にも存在するなら鑑定で調べれるかもしれない。
多分精密ではないだろうが…。
俺達は取り敢えず女神に言われたままにブルト王国を目指すことにした。
0
あなたにおすすめの小説
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる