伝説の欠片~異世界冒険記~

Mew

文字の大きさ
4 / 12

ディリメント

しおりを挟む

「ぎゃぁぁぁぁっ!」

「よし、ブルト王国に到着だな」

「……はぁ…っだぁぁ…」

「はぁ……はぁ……」

辺りは暗く日は先程よりちょっと沈んでいおり、もうすぐ日没だろう。
ブルト王国はディメリメントのまま。
細かな違いはあれど大体同じ作りになっている。

「よし、到着だじゃねぇよ!あんな運び方あるか!」

「取り敢えず宿!早く休みたいわ!」

実はというと憩いの広場から検問所手前まで俺が翼を展開させて皆を運んできたのだが…。
ちょっと早すぎたようだ。

取り敢えず宿、はいはいわかりましたと。
7人が泊まれそうな宿を探してみた結果、随分と高そうな宿しか空いていなかった。

「ここいいじゃない!でも高そうよね…何円なのかな」

「美紅、ここは円じゃない。アイテムポーチを見たらわかる通りこれは日本とは違う通貨だ。恐らくこれが金貨でこっちが銀貨でこれが銅貨だろう。さっき祐希に言ったんだけどな…」

「流石蒼ね、分かるなら助かるわ」

付き合ってるとはいえ皆の前で抱きつくのは恥ずかしいな…。
でも嫌ではない。
まぁ、そうだよな。

「すみません、一泊いくらですか?」

「一泊ですね?それならお一人様銀貨5枚ですね。」

「ぎ、銀貨5枚ですか」

「それって高いの?」

「聞く限りなんだか高そうだな」

金貨と聞いて祐希や翔なら少し位理解出来ているようだ。

(1石貨:10円、1鉄貨: 100円、1銅貨:1000円、1銀貨1万円、1金貨:100万円、1白金貨:1億)

「日本円でいうと1人泊まるのに五万円掛かるということだ」

「ご、5万円!?」

「まぁ俺のアイテムポーチはすっからかんだが、俺にはアイテムボックスというチートツールと言えるスキルがあるからな、全部の荷物はそこにあるし、金も十二分にある」

流石~!という皆の眼差しが熱い。
期待しすぎも困るんだが。

「この数日だけだからな、俺だって無限に持ってる訳じゃないから」

「わかってる。ずっとお前に頼りっぱなしってのも俺の信条にも反するしな」

祐希は自分に誇りを持ち、何事も自分で決めて進んでいくタイプの人間だ。
いつもは皆の前を歩き引っ張っていってくれる存在なのだが今回ばかりは俺を頼りにする他なかったらしい。

「お前ならそう言うと思ってたよ」

俺の所持金は……ざっと白金貨64枚はある。
64億円も持ってることになるのだ。
一介の男子高校生が急に64億円手に入れたらどうするか?
生涯遊んで暮らせる金額を手に、好きなものを買っては好きな事をし続けるだろうか。
大抵の人はなのかもしれない。
俺だってそうするかもしれない。

だがここは異世界、何が起こるかは正直俺にだってわからない。
だからお金等に関しては更に慎重にいこうと心に決めた。
しかしこういう緊急事態だ、元はと言えば俺が原因でこの世界に皆を連れてきてしまった。
独り立ち出来るくらいまでなら金くらいいいだろう。

「全員分お願いします。大部屋2つと個室を1つ」

「畏まりました。案内いたします」

「おいおい、もしかしてその個室って蒼の部屋か?」

「そうだけど…何?」

「お前だけずるいぞ~」

駄々をねられてもどうしようもない。
俺が男子部屋に行くのは気が引ける。
何故ならこの容姿であるからだ。
いくらパッシブスキルで状況を確認できるとはいえ、先程からいやらしい目で見られていることくらい流石に気づいてる。

学校でチラチラ見ていたあれはバレバレだったというわけか…。
なんてこった…。

「だからといって女子と寝るわけにもいかないだろ」

「確かに…そうね」

体は女かもしれないが、中身は男子なのだから。
そしてこの宿の代金は全額俺が支払うんだからな。

「ってことで明日寝坊すんなよ」

「誰かが起きるでしょ」

「これからはすることは多いんだからな」

そうしてみんなが部屋に戻っていった後。
俺はある作業に明け暮れていた。

「成る程…やはりこれは使えるのか」

俺が一人部屋を選んだのにはもう1つ訳がある。
アイテムボックスにあるアイテムや装備品からディメリメントで使用可能だったペット等の存在、それにディメリメントには公式が作り上げた最強の称号をつけられた魔王がいる。

俺が負けたことはないが、案外いいバトルだ。
かつてのギルドメンバーの副団長のアルカディアさんと同程度かもしれないくらいだ。

「そうか…俺にこの最新型機械が送られているなら昔のフレンドもこの世界に来てるかもしれない…ってことか?」

僅かな希望を胸に整理整頓、状況把握を黙々と進めていった。

「この装備も使えるよな…おっ、初期装備まで持ってたっけ?まぁいい、じゃんけんで譲るとするか」

「くそっ…ルーシアも呼び出せねぇのか」

ディメリメントでの使い魔機能はあると感じられる。
何とも言い表せ難いが存在していると心のどこかで感じるんだ。

ペットの枠は最大3枠、その内俺は2枠にペットを登録していた筈だが…。
まぁ後々探し出すとしよう。

「アイテムがここでも同じ効果を発揮するようだな、装備のオプションも変化なしと…。後はそうだな…NPCだがここでは普通の人間のようだしな…俺と関わった奴は俺の事を認識するのか?」

些細な事は朝になってから……っと気が付いたら朝日が上ってきた。
まさか早く寝ろと言った俺がオールするとは思ってなかったなぁ。
だが全く気だるさや夜間も睡魔に教われなかった。
ゲームの影響か?

「おーい、そろそろ教会や冒険者ギルドによりたいんだが………」

「……すぅ…ぷぅー…」
「…ぐぅ…かかか…」

「……何気持ち良さそうに寝てんだ。ちょっとイビキかいてるぞ」

「…ん?誰?………蒼!?ノックくらいしなさいよ!」

「一応したし、結局誰一人として起きてねぇじゃねぇか」

「くっ…そのようね」

「言い訳はいいから早く朝御飯食って行くぞ。因みに男子はもう起きてるからな」

先程見に行ったが意外にも翔と祐希が起きて、皆を起こしていた。
祐希は真面目なこともあって早起きなのでいつも通りといったところだ。
俺は美紅に呼び掛けると宿の食堂へと先に向かった。

「もう…メイク道具がなきゃなにもできないじゃない…」

「「「はっ…」」」

しかしその心配は無用だと皆気づいた。

「あっ!アバター補正で可愛くなってるからいいじゃない!ニキビだってほら!なーんにもないわ!」

「いざ鏡を見るとみとれるくらい…自分なのに」

「美紅はエルフかー…たった一人だけエルフとかずるいよぉ」

「蘭も猫耳生えてるじゃない、結構羨ましいのに」

「先生は犬耳かぁ…いいなぁー」

「未来ちゃんは…ドラキュラ?もしかして…」

「サキュバス?!」

「もぅ!違いますからぁぁ!先生もなんとかいって下さいよ!」

「未来さん…手は出さないようにね」

「先生までぇぇ!」

女子達はきゃぴきゃぴとしたガールズトークが繰り広げられていたせいもあってか彼女等食堂に辿り着くまで15分程度掛かって俺がデコピンしたのは別の話だ…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

処理中です...