アナザーワールド

白くま

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異世界召喚編

第七話 〘変態…?〙

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 総隊長室を後にした私は、物資保管棟という場所に来ていた。ここは新しい戦闘服やその他の物資が数多く保管されている。今回ここに来た目的は、私の戦闘服を用意するためだ。
 教えてもらった順に廊下を進み、女性用と書かれた部屋のドアを開け中に入る。すると、眼鏡をかけた女の人がダンボールの中身の仕分けをしていた。

「あら、案外早かったのね。ちょうど今、色々と届いたところよ。」

ダンボールをどけて、女性は私の前まで来た。

「この物資保管棟の担当をしてます。渋谷真津子しぶやまつこです。あなたが秋月楓さんね。話は聞いてるわ。よろしくね?」

 そう言って真津子さんは、微笑みながらウインクをした。年は三十歳くらいだろうか、大きく重そうな胸が彼女が動く度に四方に揺れる。

「じゃあ、早速サイズを測るから服を脱いでそこに立ってくれる?」

 私はそう言われて、真津子さんが机の引き出しからメジャーを取り出している間に、服を脱ぎ下着姿になる。

「まぁ、綺麗な体...。」

 メジャーを持った真津子さんが、私の体をまじまじと見ている。いくら女同士とはいえ、下着姿を人に見られるのは恥ずかしい。

「あ、あの...。あまり見ないでください。」

 私が恥ずかしさのあまり手で体を隠すと、その仕草や表情に興奮したのか、真津子さんの息が一段と荒くなる。

「その恥じらってる表情とかも...いい!」

 真津子さんの手が素早く私に向かって伸びた。慌てて避けようとするが、反応が遅れたせいで間に合わない。
パシン!

「!?」 

 真津子さんの手が私の身体に触れようとしたその時、横から伸びてきた手に真津子さんの手は叩き落とされた。

「柚枝さん...。」

 そう、真津子さんの手を叩き落としたのは、さっきまで医務室で寝ていたはずの柚枝さんだった。

「大丈夫?他に何か変なことはされてない?」
「はい。大丈夫です。柚枝さんこそ大丈夫なんですか?」
「えぇ、もう大丈夫。あなたも元気になって良かった。」

 柚枝さんは私の顔を見てニコッと笑う。

「で、私が寝てる間に新人に何をしてるんですか?」

 柚枝さんはそう言って真津子さんを睨みつける。

「だ...だって、この新人ちゃんが想像以上に可愛かったからつい...。」
「つい...。じゃありません!全く、緑川といいあなたといい、なんで遠慮や確認なしで人に手を出せるんですか。」

 昨日のこともあってか、柚枝さんの怒りはまだ収まらない。

「柚枝さん?もう大丈夫ですから、機嫌をなおしてください。」

 私がそう言うと、柚枝さんは少し呆れた表情になった。

「楓ちゃんは優しすぎる。やられたら倍にして返してもバチは当たらないわ。」

 柚枝さんがもう一度真っ直ぐに睨みつけると、真津子さんは左右に目を泳がせた。

「そうだ!今度この人に何か変なことをされたらすぐに私に言って?そ・の・時・は!この人の服をひん剥いて男子トイレにも縛り付けておくから。...あなたはそういうの好きでしょ?」

 ふふっと笑って真津子さんを見る。しかし、目が全く笑っていない。あまりの怖さに、涙目でガクガク震える真津子さんに手を突き出す柚枝さん。

「この後の計測は私がやります。メジャーを貸してください。」

 真津子さんからメジャーを受け取り、私の体に手をまわす。柚枝さんの顔が自分の胸に近づくと、恥ずかしさのあまり私は顔から火がでそうになった。

「ちょっとごめんね...。」

 体勢を変えた柚枝さんの頬が、私の胸に当たった。

「…///。」

 恥ずかしさのあまり、私の体がピクンっと跳ねる。

「そんなに緊張しなくてもいいのに。」

 私の反応を見て、柚枝さんはクスリと笑った。

「だって…。顔が近いから恥ずかしくて…。」

 私の顔は恐らくトマトの様に赤くなっているのだろう。

「あぁ…。なんか、百合もいい感じだなぁ。」

 少し離れた場所で、真津子さんが2人を眺めながら呟いた。

「何か言いました?」
「い、いえ。何も…。」

 冷たい一言に涙目になる真津子さんを無視して、柚枝さんは素早く計測を終わらせた。

「…ブツブツ。」
 
 拗ねた表情で、何やら文句を言っている真津子さんに、柚枝さんは素っ気ない口調で言う。

「これが、この子のサイズです。」

 柚枝さんが紙を差し出すと、真津子さんは渋々受け取り、奥の部屋に入って行ってしまった。

「あ、あの…。言い忘れてたんですけど、昨日はありがとうございました。」

 私が頭を下げると、柚枝さんは私の肩に手を置いて、そっと答えた。

「私は当然のことをしただけ、自分の部下が人を気づつけたんだもの。治すのが当たり前。だから、私から詫びることはあっても、あなたが礼を言う事じゃないの。」

 柚枝さんは真剣な顔で私を見る。

「でも、間に合ってよかった。あのまま私があそこを通らなければ、緑川はあなたを殺していたわ。」

 確かに、内臓が潰れた上にあれ以上攻撃されていたら、確実に命はなかったと思う。

「はいこれ。楓ちゃんの服。」

 いつの間にか奥の部屋から出て来ていた真津子さんが、私に新品の戦闘服を手渡してきた。

「ありがとうございます。」

 服を受け取った私は辺りを見渡し、更衣室と書かれた小さな部屋に入り服を着替えた。

「秋月さんの戦闘服可愛い。」

 更衣室から出た私を見て、真津子さんは目をキラキラ光らせる。

「はぁ~。私の目の前に純粋な天使とツンデレな天使が…。幸せ…。」
「誰がツンデレですか!」

  ツッコミを入れる柚枝さんをよそに、真津子さんは私の耳元で囁く。

「…そう言っておきながら、私と二人きりだと本当にツンデレだから。」
「そうなんですか?」

 これは意外なことを聞いた。クーデレだと思っていた柚枝さんが、実はツンデレだったとは…。

「だ・れ・が!ツンデレですか!」

 私の耳元で囁いていた真津子さんの背後から、耳を思いっきり引っ張る柚枝さん。

「ごめんごめん!冗談だから!いや…、耳ちぎれちゃう!」

 涙目になって暴れる真津子さんを押さえつけるかのようにして、更に力を強める柚枝さん。既に、真津子さんの悲鳴は断末魔の叫びに変わっていた。

「まぁまぁ、落ち着いてください。」

 楓がなだめると、ふくれっ面のまま真津子さんの耳から手を離す柚枝さん。
 耳を解放され、涙目でその場に座り込んで耳を抑える真津子さんを短く鼻で笑い、柚枝さんは私の手を引っ張った。

「この後も行かないといけない所があるんじゃないの?早く行かないと、今日中に終わらないよ?」

 私の手を引いたまま、部屋のドアを開け外に出ようとする柚枝さん。

「また来ますね!」

私は部屋から出る前に真津子さんの方を振り返り、笑顔でそう言った。涙ぐんだ真津子さんの「また来てね。」の声は、柚枝さんが力強く閉めたドアの無機質な音によって途中で遮られてしまった。
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