アナザーワールド

白くま

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国外遠征編

第十六話 〘新メンバー〙

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警務隊遠征局局長室。楓達は蓮に連れられ、正隆の元へ集まっていた。

「話は大体蓮から聞いた。内宮が手も足も出ない程の相手だったそうだな。」

 正隆は腕を組んで目を閉じている。楓は自分がもっとしっかりしていれば、もしあの場で二人で戦えていたなら、彩夜にあんな怪我をさせなくて済んだかもしれないと自分の不甲斐なさを感じていた。

「そんな顔をするな。お前の責任じゃない。今回は相手が強すぎた…ただ、それだけだ。」
「で、でも…もう少し蓮さん達の到着が遅れていたら…二人とも…。」
「結果的に助かったんだからいいじゃない?彩夜も命に別状は無いみたいだし。」

 そう言って、楓の肩を柚枝はポンポンと叩いた。本当は柚枝が治療した方が早いのだが、明日の任務に参加できなくなってしまうため医務員に任せたのだ。

「そこで明日の任務なんだが…内宮の代わりに一人第一部隊に補充することにした。」
「「「「…!?!?」」」」

 正隆の言葉にその場に居た全員が目を見開いた。今まで一緒に任務をこなしてきたこのメンバーに今さら他の人を入れた所で、調和を乱し更なる戦力ダウンに繋がる可能性が高いからだ。しかし、局長が決めたことに楓や蓮までもが反論出来なかった。

「誰なんですか?」

 健太がそっと口を開いた。

「警務隊本部の蒼井和海あおいかずみだよ。」

 正隆が名前を言うが、楓達の頭には?しか浮かばなかった。

「誰だ?そいつ。」
「聞いたこともないわね。」

 蓮や柚枝までもが誰か分からないのであれば、楓が分からないのも無理はない。すると、そんな楓達を見て正隆はクスリと笑い、座っていた椅子から立ち上がり部屋の扉を開けた。

「入って挨拶だ。」
「はい。」

 正隆に言われ女性が一人部屋に入ってくる。腰まで伸びた綺麗な黒髪、豊満とまでは言えないがしっかりと存在感のある胸元、キュッと引き締まった腰、おまけに足まで細く長い。完全なモデル体型の女性だった。

「蒼井和海です。よろしく。」

 そう言って和海は、そっと頭を下げた。

「マズイな…。こんな美人を俺は知らなかった…。」
「はぁ…。あなたは人を美人かそうじゃないかでしか覚えないわけ?」

 真剣な顔で言う健太に柚枝がつっこむ。それに対して、楓と和海もクスクスと笑っていたが、ただ一人蓮だけが真剣な顔で和海を見ていた。

「蒼井と言ったか?俺は本部の人間は大体記憶しているはずだが、お前の事は正直覚えていない。本部のどの部署に居た?」

 蓮は鋭い口調で和海に聞く。すると、和海は少し言葉に詰まった。

「彼女は、本部の医療班に居たんだ。」
「医療班だと!?」
「…はい。」

 正隆の言葉に、蓮の声が荒くなる。しかし、声には出さなかったものの、その場に居た楓達も蓮と同じことを思っていた。
 正隆率いる遠征局は、警務隊屈指の戦闘部隊だ。柚枝の様に医療も出来る者も居るが、医療だけではこの部隊は務まらない。

「悪いが…、人選ミスじゃねぇか?コイツの医療の技術は知らねぇが、戦闘技術は心底信用ならねぇな。」

 健太が声を荒らげる。楓もそこまで言わなくてもいいんじゃないかとは思ったが、根本的には同じことを思っていた。

「じゃあ、こうしよう。これから訓練場にて蒼井和海 対 第一部隊員で順番に試合をする。ルールは何でもありだ。先に相手に攻撃を当てた者の勝ちとして、それを彼女の入隊試験にしてみたらどうかな?」

 正隆は、みんなの前に出て提案をした。勢いで話していた健太も少し冷静になり考える。だが、健太の考えがまとまるよりも先に、今度は蓮が口を開いた。

「第一部隊隊長として、俺は賛成する。仲間に入るか入らないかはどうであれ、こいつの実力は把握しておきたい。」

 隊長が賛成であればと、楓も他の二人も賛成した。

「では、これから一時間後に訓練場に集合。全員、戦闘服に着替えて武器を装備してくるように。以上だ…解散。」

 正隆の指示を聞き終わり、全員支度をするために自室に戻った。しかし、楓だけは新しい戦闘服を用意しに物資管理棟へと向かうのだった。


「そう…。そんな事があったのね。じゃあ、しっかりと自分達を任せられるかどうか見極めないとね。」

 楓の服を用意しながら、真津子は言った。

「そうなんですよ。医療班って聞くとやっぱり戦力に疑問が出て…。」
「そうよねぇ。私もこの胸がいつ大きくなるのか疑問だわ。」
「どこ見てるんですかっ!」

 ボロボロになった戦闘服を脱いだ楓の胸を食い入るように見つめる真津子に、楓は鋭くつっこむ。

「全く…。相変わらず油断も隙もないですね。」
「ちょっとくらい大目に見てくれてもいいのに…。」

 真津子は肩を落としながら後ろにある棚の引き出しを開け、新しい楓の服を取り出した。

「余分に2・3枚渡しとくね。今から使うだろうし、明日も任務あるんでしょ?」
「ありがとう。助かります。」

 楓は受け取った服に視線を落とす。いつも身につけている戦闘服だ。見た目は普通の布で出来た戦闘服だが、物理耐性、魔法耐性共に優れた防御力を持ち、これまで楓の体を幾度となく守ってくれたなくてはならない存在だ。
 それ故に、この服を一撃で焼き切ったレオンの魔法攻撃には楓が1番驚いていた。楓は自分の肩を押さえてしばらく考えた。

「この服が無ければ…私の右腕は今頃無くなってたかもしれないです…。」

 そう言って部屋を出ようと振り返った楓に、真津子は優しく呟いた。

「楓ちゃん。何度も言うけど…気をつけてね?私はみんなが無傷で帰ってくることが何よりの望みなんだから。」
「大丈夫です…。帰ってきたら、また顔出しに来ますね…。」

 心配そうな表情の真津子に楓はそっと微笑み、自分の部屋へと向かった。

「もう…。いかにも無理してますって顔じゃない…。本当に大丈夫かしら…。何も無ければいいけど。」

 バタンッと閉じた扉を見つめて、真津子は思わず呟くのだった。
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