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最終決戦編
第三十二話 〘第二部隊の本気〙
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遠く離れていく楓達を見ながら、アゲハは小さく舌打ちをした。
「まぁ、そんなカリカリするなよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
斧を肩に担ぎ直した健弥が笑いながらそう言うと、アゲハは健弥の顔を思いっきり睨みつけて言った。
「誰のせいで逃げられたと思ってるの?」
「さぁ、誰だろうな。」
挑発するような態度をとる健弥に、アゲハの怒りはピークに達した。レオンから奪ったナイフで自分の指先を切りつけ、滴る血液で地面に何かを書き始めた。
「あなた達がその気ならいいわ。ここで全員殺してあげる!」
その瞬間、彼女の書いた模様から大量のマナが吹き出し、次第にはっきりとした形へと姿を変えていく。
「ま、まさか…。」
健弥達は、吹き出すマナを見て驚愕した。立ちのぼる4つのマナは姿を変え、全てがアゲハの分身体へと変化したのだ。
「いくら強くても、私を5人も相手するのは無理よ!」
完全にアゲハと同じ姿と化した分身は、それぞれ同時に健弥へと襲いかかった。5方向からの同時攻撃は、いくら健弥でも全てかわすことは出来ないだろう。
「誰が1人で相手するって言ったよ?」
健弥がそう言った瞬間、分身体の4人は攻撃を弾かれ、そのまま追加攻撃を受けて吹き飛ばされた。
「くっ…!」
健弥からの攻撃をかわしたアゲハ本人も、大きく後ろへ飛びすさった。
「5対5で丁度いいだろ?」
健弥の合図と共に、千紅沙、悠祈、瑞姫、希の4人が分身へと襲いかかる。
「お前の相手は俺だ。」
健弥は手に持った斧を振りかぶり、アゲハへと振り下ろした。しかし、ただ振り下ろすだけの単調な攻撃は、簡単にかわされてしまう。
「そんな攻撃、何回やっても当たらな……うぐぅ…!」
左肩から突然血が吹き出し、体勢を大きく崩すアゲハ。
「……邪魔。」
アゲハのすぐ後ろに居た千紅沙が、血のついた剣をチラつかせながら吐き捨てるように呟いた。アゲハが攻撃をかわしたと同時に背後に忍び寄った千紅沙が、アゲハの肩を切りつけていたのだ。
「こ、この…!」
慌てて千紅沙の方を振り返り蹴りを放つアゲハ。二人の距離は近く、おまけにアゲハの動きは予想以上に速い。
「くっ…!」
避けることを諦め2本の剣で守りを固める千紅沙に、アゲハの蹴りが襲いかかる。
「がはっ!」
アゲハの蹴りが炸裂する直前、今度は希の槍がアゲハの腹部を背中から貫いた。
「こ、こんなもの…。」
自分の腹部に突き刺さった槍に手を伸ばすアゲハ。しかし、槍を掴む前に、希はアゲハの体から槍を引き抜いた。
「うぐっ……けほっ…!…はぁ…はぁ……。」
「残念だったな。お前は確かに強い。だが、俺達のチームワークには敵わなかったみたいだ。」
口から少量の血を吐き出してよろめくアゲハに、健弥はそっと近づいて言った。口の血を拭い、腹の傷口を押さえながら悔しそうに唇を噛んだアゲハは、健弥達を順に睨みつけて言った。
「どうして?」
「何がだ?」
突然の問いに、健弥は短く問い返す。
「他の人達は、私の分身と戦っていたはず…。なのに、何で私に攻撃する余裕があったの?」
わけがわからないといったふうに辺りを見渡したアゲハは、ある方向を向いた途端、目を見開いて硬直した。
「……そんな…。」
「分かったか?」
アゲハが目にしたのは、返り血にまみれた姿で分身の胸元から剣を引き抜く悠祈の姿だった。分身はそのまま地面に倒れ込むと、ピクリとも動かなくなってしまった。
アゲハはそのまま、悠祈の足元に視線を送った。すると、倒れた分身の周りには、他の3体の分身も変わり果てた姿で転がっていたのだ。
「まさか…、4人を1人で?」
「あぁ。あいつの戦闘能力は隊長の俺や蓮と殆ど変わらねぇからな。分身は全てあいつに任せても大丈夫だと判断した。」
膝を折ってその場に力無く座り込むアゲハの目の前で、健弥は目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。
「で、こっちのしては色々と聞きたいことがあるんだが?」
「………。」
さっきまでとは少し違う真剣な顔で、再び健弥が問いかける。しかし、アゲハは無言で健弥から視線を逸らした。
「黙っていてもお前にとって何もいいことは無いぞ?」
「………。」
アゲハは黙ったままだった。そんなアゲハに短くため息をついた健弥は、視線をアゲハの背後にいる瑞姫へと移し、アイコンタクトをとった。
「ねぇ。ここの世界に居るのって、あなた達とアンロック、それと一条さんだけ?」
「………。」
瑞姫の問いにもアゲハは口を開かない。
「そう。言いたくないんだ…。なら…………。」
瑞姫はそっとアゲハの背中に手を伸ばし、希の槍に貫かれた傷口を指で抉り始めた。
「ぐわあぁぁぁ!」
激痛によるアゲハの悲鳴があたりに響き渡る。しかし、瑞姫の指は休むことなく、アゲハの傷口を抉っていく。
「早く喋って楽になればいいのに。」
「うぐっ…、だ、誰が言うもんですか…。」
「……。」
かたくなに口を割ろうとしないアゲハの傷口に、今度は手刀を突き刺す瑞姫。
「ぎやぁぁぁぁ!」
叫び散らすアゲハの首に腕を回しぐいっと引き寄せた瑞姫は、そのままアゲハの耳元で囁いた。
「ほーら。早く喋りなって。」
「うぐっ…はぁ…はぁ………。」
話が出来るように瑞姫は手を止めるが、アゲハは何も言わない。
結局、瑞姫の拷問は30分ほど続いた。しかし、その30分間アゲハの口からは悲鳴しか出なかった。
「……ぁ…はぁ…。」
ぐったりと地面に倒れているアゲハの体を起こし、瑞姫は再び傷口に手を伸ばす。
「獅噛。…もういい。これ以上やってもこいつは何も言わねぇよ。」
健弥は瑞姫の手を掴み、首を横に振った。
「楽にしてやれ。」
「…分かりました。」
瑞姫はアゲハを抱き起こしたまま、その首に腕を回して力強く締めつけた。
「ごめんね…。」
瑞姫の声と共にバキッという何かが折れるような音が響き、アゲハは瑞姫の腕の中で力無く項垂れたのだった。
「まぁ、そんなカリカリするなよ。せっかくの可愛い顔が台無しだぜ?」
斧を肩に担ぎ直した健弥が笑いながらそう言うと、アゲハは健弥の顔を思いっきり睨みつけて言った。
「誰のせいで逃げられたと思ってるの?」
「さぁ、誰だろうな。」
挑発するような態度をとる健弥に、アゲハの怒りはピークに達した。レオンから奪ったナイフで自分の指先を切りつけ、滴る血液で地面に何かを書き始めた。
「あなた達がその気ならいいわ。ここで全員殺してあげる!」
その瞬間、彼女の書いた模様から大量のマナが吹き出し、次第にはっきりとした形へと姿を変えていく。
「ま、まさか…。」
健弥達は、吹き出すマナを見て驚愕した。立ちのぼる4つのマナは姿を変え、全てがアゲハの分身体へと変化したのだ。
「いくら強くても、私を5人も相手するのは無理よ!」
完全にアゲハと同じ姿と化した分身は、それぞれ同時に健弥へと襲いかかった。5方向からの同時攻撃は、いくら健弥でも全てかわすことは出来ないだろう。
「誰が1人で相手するって言ったよ?」
健弥がそう言った瞬間、分身体の4人は攻撃を弾かれ、そのまま追加攻撃を受けて吹き飛ばされた。
「くっ…!」
健弥からの攻撃をかわしたアゲハ本人も、大きく後ろへ飛びすさった。
「5対5で丁度いいだろ?」
健弥の合図と共に、千紅沙、悠祈、瑞姫、希の4人が分身へと襲いかかる。
「お前の相手は俺だ。」
健弥は手に持った斧を振りかぶり、アゲハへと振り下ろした。しかし、ただ振り下ろすだけの単調な攻撃は、簡単にかわされてしまう。
「そんな攻撃、何回やっても当たらな……うぐぅ…!」
左肩から突然血が吹き出し、体勢を大きく崩すアゲハ。
「……邪魔。」
アゲハのすぐ後ろに居た千紅沙が、血のついた剣をチラつかせながら吐き捨てるように呟いた。アゲハが攻撃をかわしたと同時に背後に忍び寄った千紅沙が、アゲハの肩を切りつけていたのだ。
「こ、この…!」
慌てて千紅沙の方を振り返り蹴りを放つアゲハ。二人の距離は近く、おまけにアゲハの動きは予想以上に速い。
「くっ…!」
避けることを諦め2本の剣で守りを固める千紅沙に、アゲハの蹴りが襲いかかる。
「がはっ!」
アゲハの蹴りが炸裂する直前、今度は希の槍がアゲハの腹部を背中から貫いた。
「こ、こんなもの…。」
自分の腹部に突き刺さった槍に手を伸ばすアゲハ。しかし、槍を掴む前に、希はアゲハの体から槍を引き抜いた。
「うぐっ……けほっ…!…はぁ…はぁ……。」
「残念だったな。お前は確かに強い。だが、俺達のチームワークには敵わなかったみたいだ。」
口から少量の血を吐き出してよろめくアゲハに、健弥はそっと近づいて言った。口の血を拭い、腹の傷口を押さえながら悔しそうに唇を噛んだアゲハは、健弥達を順に睨みつけて言った。
「どうして?」
「何がだ?」
突然の問いに、健弥は短く問い返す。
「他の人達は、私の分身と戦っていたはず…。なのに、何で私に攻撃する余裕があったの?」
わけがわからないといったふうに辺りを見渡したアゲハは、ある方向を向いた途端、目を見開いて硬直した。
「……そんな…。」
「分かったか?」
アゲハが目にしたのは、返り血にまみれた姿で分身の胸元から剣を引き抜く悠祈の姿だった。分身はそのまま地面に倒れ込むと、ピクリとも動かなくなってしまった。
アゲハはそのまま、悠祈の足元に視線を送った。すると、倒れた分身の周りには、他の3体の分身も変わり果てた姿で転がっていたのだ。
「まさか…、4人を1人で?」
「あぁ。あいつの戦闘能力は隊長の俺や蓮と殆ど変わらねぇからな。分身は全てあいつに任せても大丈夫だと判断した。」
膝を折ってその場に力無く座り込むアゲハの目の前で、健弥は目線の高さを合わせるようにしゃがみ込んだ。
「で、こっちのしては色々と聞きたいことがあるんだが?」
「………。」
さっきまでとは少し違う真剣な顔で、再び健弥が問いかける。しかし、アゲハは無言で健弥から視線を逸らした。
「黙っていてもお前にとって何もいいことは無いぞ?」
「………。」
アゲハは黙ったままだった。そんなアゲハに短くため息をついた健弥は、視線をアゲハの背後にいる瑞姫へと移し、アイコンタクトをとった。
「ねぇ。ここの世界に居るのって、あなた達とアンロック、それと一条さんだけ?」
「………。」
瑞姫の問いにもアゲハは口を開かない。
「そう。言いたくないんだ…。なら…………。」
瑞姫はそっとアゲハの背中に手を伸ばし、希の槍に貫かれた傷口を指で抉り始めた。
「ぐわあぁぁぁ!」
激痛によるアゲハの悲鳴があたりに響き渡る。しかし、瑞姫の指は休むことなく、アゲハの傷口を抉っていく。
「早く喋って楽になればいいのに。」
「うぐっ…、だ、誰が言うもんですか…。」
「……。」
かたくなに口を割ろうとしないアゲハの傷口に、今度は手刀を突き刺す瑞姫。
「ぎやぁぁぁぁ!」
叫び散らすアゲハの首に腕を回しぐいっと引き寄せた瑞姫は、そのままアゲハの耳元で囁いた。
「ほーら。早く喋りなって。」
「うぐっ…はぁ…はぁ………。」
話が出来るように瑞姫は手を止めるが、アゲハは何も言わない。
結局、瑞姫の拷問は30分ほど続いた。しかし、その30分間アゲハの口からは悲鳴しか出なかった。
「……ぁ…はぁ…。」
ぐったりと地面に倒れているアゲハの体を起こし、瑞姫は再び傷口に手を伸ばす。
「獅噛。…もういい。これ以上やってもこいつは何も言わねぇよ。」
健弥は瑞姫の手を掴み、首を横に振った。
「楽にしてやれ。」
「…分かりました。」
瑞姫はアゲハを抱き起こしたまま、その首に腕を回して力強く締めつけた。
「ごめんね…。」
瑞姫の声と共にバキッという何かが折れるような音が響き、アゲハは瑞姫の腕の中で力無く項垂れたのだった。
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