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最終決戦編
第三十七話 【親愛なる敵・ユリエル】
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一人先を急いだ楓は建物の中に入り、奥へ奥へと進んでいた。
「この廊下、どこまで続くんだろう…。」
先が見えない暗闇の中へ消えている廊下を見ながら呟く。
果てしなく伸びる廊下をしばらく走ると、やがて殺風景な広場に出た。
「ここは…。」
足を止め、刀の柄に手を置きながら辺りを警戒する。広間には複数の太い柱…そして中心の一段高くなった床には、まるで玉座の様に彩られた椅子が一つ設置されていた。
「やっと来たの?…遅かったわね。」
「!?」
突然聞こえてきた声に楓は身構える。しかし、楓はすぐにその声が聞き慣れた声だということに気づいた。
「その声…、まさか……柚枝?」
暗闇の中からコツコツと足音をたてて近づく影にそっと話かける。すると、外から差し込んだ月の光が、次第に少女の顔を照らしだしていく。
「久しぶりね。」
「柚枝…。うん、久しぶり。」
溢れ出そうとする涙をこらえ、柚枝に笑顔を向ける。
「で、何しに来たの?」
「え……?」
柚枝の口から発せられた言葉に一瞬耳を疑う。
「何って、私は柚枝を助けに…。」
「助けに!?私を?私はここの住人よ?どうしてあなたに助けてもらわないといけないの?」
柚枝は驚いたように目を丸め、楓に聞き返した。
「だって柚枝は…。」
「その柚枝っていう呼び方やめてくれる?私の名前はユリエル。人間と同じような名前で呼ばれるのは、そろそろ我慢ならないの。」
ユリエルはそう言うと、腰に差した刀を引き抜き楓へと向ける。
「今まで仲良しごっこに付き合ってくれたお礼に選ばせてあげる。今すぐ死ぬか、アンロック様の前で死ぬか。」
楓に向けられた刃がキラリと光り、ユリエルが不気味に微笑む。それはもう、楓の知る優しく凛々しい柚枝の顔ではなく、アスカ達同様邪悪に満ちた吸血鬼の顔だった。
「ゆ、柚枝……。」
「だから…、その名前で呼ぶなって言ってるの!!」
いきなり叫んだユリエルの体から発せられたマナによる圧が楓を襲う。しかし、楓はユリエルの叫び声には驚いたものの、マナには殆ど動じなかった。
「あなた、結構腕を上げてるわね。」
「まぁね。」
ユリエルの言葉に短く返事をする楓。
「柚…ユリエル。もうこっちに帰ってくることはないの?」
「私の居場所はここって言ったでしょ?もうあなた達とは関係ないの。いつまでも味方きどりしないで。」
楓はユリエルの言葉を聞いて一瞬悲しそうに目を伏せると、腰の刀をそっと引き抜いた。
「あら?やる気になった?」
「やらなきゃ殺されるんでしょ?だったらやるしかないじゃない。」
刀を構えた楓にそっと微笑んだユリエルは、その刀にマナを込め素早く楓に切りかかった。
「驚いた…。強くなってるとは思ってたけど、まさかここまで強くなってたとはね。」
次々と強烈な斬撃を放ちながら、感心したようにユリエルが呟いた。
「楓がここまで強くなってるなら、私も本気出さないといけないかもね。」
「十分本気なくせに。」
お互いの刀を弾き合いながら、徐々に体から放出するマナの量を増やしていく。
「はあぁぁぁ!!!」
「うぐっ!!」
楓の放った蹴りがユリエルの腹部に当たる。反動で後ろによろめくユリエルだが、すかさず体勢を立て直し右手に持った刀を振り抜いた。
「くっ…!」
振り抜かれた刀をギリギリの所でかわした楓はそのまま後ろに数歩飛び退った。
「蹴りの威力も段違い…。本当に強くなったね。」
服の汚れを叩きながら、再び感心したように呟いた。
「けど、どれだけ強くなっても私には敵わないよ?」
「そんなのやってみないと分からないじゃない。」
刀に込めるマナを一段と増やす楓。そして、地面を蹴ってユリエルとの間合いを詰め、刀を全力で振り下ろす。
「このっ!」
振り下ろした楓の刀を受け止めたユリエルは、そのまま刀を押し返し体をくるりと一回転させると、何度か楓を斬りつけた。
「きゃっ!」
攻撃をかわし、受け止めようとする楓だが、すべての攻撃に対処することは出来なかった。切られた楓の右腕を真っ赤な血が伝っていく。
「どう?分かった?あなたじゃ私には勝てないの。」
刀を掲げて近づいてくるユリエルに刀を構え、再びマナを集中させる楓。
「まだ負けた訳じゃない…。」
「そう?今のを見て、あなたに勝ち目があるとは思えないんだけど?」
楓の顔を見てクスリと笑ったユリエルは、刀からマナを溢れさせながら楓に斬りかかる。再び二人の刀が激しくぶつかり合い、彼女達の周りをお互いのマナが逆巻き始める。
「「はあぁぁぁ!」」
全力でぶつかった二人の刀が発した衝撃波が、傍にある柱に亀裂を走らせる。楓の気づかない内に、力もスピードも人間の常識を遥かに凌駕した強さになっていた。しかし、そんな力を手に入れてやっとユリエルと互角なのだと思うと、楓は改めて彼女の強さに舌を巻く。
「相当強くなったつもりだったけど、あなたにはやっぱり簡単に勝てないみたい。」
「簡単にじゃなくて、勝てないの。いい加減に諦めたら?」
少し呆れたような表情を見せるユリエルだが、その後にクスリと笑って再び刀を構えた。楓は構えられたユリエルの刀を自らの刀で弾き懐へと飛び込むと、ユリエルに体当たりをし彼女の体勢を崩させる。そして、身動きのとれなくなった彼女に向かって、楓は全力で刀を振り下ろした。
「この廊下、どこまで続くんだろう…。」
先が見えない暗闇の中へ消えている廊下を見ながら呟く。
果てしなく伸びる廊下をしばらく走ると、やがて殺風景な広場に出た。
「ここは…。」
足を止め、刀の柄に手を置きながら辺りを警戒する。広間には複数の太い柱…そして中心の一段高くなった床には、まるで玉座の様に彩られた椅子が一つ設置されていた。
「やっと来たの?…遅かったわね。」
「!?」
突然聞こえてきた声に楓は身構える。しかし、楓はすぐにその声が聞き慣れた声だということに気づいた。
「その声…、まさか……柚枝?」
暗闇の中からコツコツと足音をたてて近づく影にそっと話かける。すると、外から差し込んだ月の光が、次第に少女の顔を照らしだしていく。
「久しぶりね。」
「柚枝…。うん、久しぶり。」
溢れ出そうとする涙をこらえ、柚枝に笑顔を向ける。
「で、何しに来たの?」
「え……?」
柚枝の口から発せられた言葉に一瞬耳を疑う。
「何って、私は柚枝を助けに…。」
「助けに!?私を?私はここの住人よ?どうしてあなたに助けてもらわないといけないの?」
柚枝は驚いたように目を丸め、楓に聞き返した。
「だって柚枝は…。」
「その柚枝っていう呼び方やめてくれる?私の名前はユリエル。人間と同じような名前で呼ばれるのは、そろそろ我慢ならないの。」
ユリエルはそう言うと、腰に差した刀を引き抜き楓へと向ける。
「今まで仲良しごっこに付き合ってくれたお礼に選ばせてあげる。今すぐ死ぬか、アンロック様の前で死ぬか。」
楓に向けられた刃がキラリと光り、ユリエルが不気味に微笑む。それはもう、楓の知る優しく凛々しい柚枝の顔ではなく、アスカ達同様邪悪に満ちた吸血鬼の顔だった。
「ゆ、柚枝……。」
「だから…、その名前で呼ぶなって言ってるの!!」
いきなり叫んだユリエルの体から発せられたマナによる圧が楓を襲う。しかし、楓はユリエルの叫び声には驚いたものの、マナには殆ど動じなかった。
「あなた、結構腕を上げてるわね。」
「まぁね。」
ユリエルの言葉に短く返事をする楓。
「柚…ユリエル。もうこっちに帰ってくることはないの?」
「私の居場所はここって言ったでしょ?もうあなた達とは関係ないの。いつまでも味方きどりしないで。」
楓はユリエルの言葉を聞いて一瞬悲しそうに目を伏せると、腰の刀をそっと引き抜いた。
「あら?やる気になった?」
「やらなきゃ殺されるんでしょ?だったらやるしかないじゃない。」
刀を構えた楓にそっと微笑んだユリエルは、その刀にマナを込め素早く楓に切りかかった。
「驚いた…。強くなってるとは思ってたけど、まさかここまで強くなってたとはね。」
次々と強烈な斬撃を放ちながら、感心したようにユリエルが呟いた。
「楓がここまで強くなってるなら、私も本気出さないといけないかもね。」
「十分本気なくせに。」
お互いの刀を弾き合いながら、徐々に体から放出するマナの量を増やしていく。
「はあぁぁぁ!!!」
「うぐっ!!」
楓の放った蹴りがユリエルの腹部に当たる。反動で後ろによろめくユリエルだが、すかさず体勢を立て直し右手に持った刀を振り抜いた。
「くっ…!」
振り抜かれた刀をギリギリの所でかわした楓はそのまま後ろに数歩飛び退った。
「蹴りの威力も段違い…。本当に強くなったね。」
服の汚れを叩きながら、再び感心したように呟いた。
「けど、どれだけ強くなっても私には敵わないよ?」
「そんなのやってみないと分からないじゃない。」
刀に込めるマナを一段と増やす楓。そして、地面を蹴ってユリエルとの間合いを詰め、刀を全力で振り下ろす。
「このっ!」
振り下ろした楓の刀を受け止めたユリエルは、そのまま刀を押し返し体をくるりと一回転させると、何度か楓を斬りつけた。
「きゃっ!」
攻撃をかわし、受け止めようとする楓だが、すべての攻撃に対処することは出来なかった。切られた楓の右腕を真っ赤な血が伝っていく。
「どう?分かった?あなたじゃ私には勝てないの。」
刀を掲げて近づいてくるユリエルに刀を構え、再びマナを集中させる楓。
「まだ負けた訳じゃない…。」
「そう?今のを見て、あなたに勝ち目があるとは思えないんだけど?」
楓の顔を見てクスリと笑ったユリエルは、刀からマナを溢れさせながら楓に斬りかかる。再び二人の刀が激しくぶつかり合い、彼女達の周りをお互いのマナが逆巻き始める。
「「はあぁぁぁ!」」
全力でぶつかった二人の刀が発した衝撃波が、傍にある柱に亀裂を走らせる。楓の気づかない内に、力もスピードも人間の常識を遥かに凌駕した強さになっていた。しかし、そんな力を手に入れてやっとユリエルと互角なのだと思うと、楓は改めて彼女の強さに舌を巻く。
「相当強くなったつもりだったけど、あなたにはやっぱり簡単に勝てないみたい。」
「簡単にじゃなくて、勝てないの。いい加減に諦めたら?」
少し呆れたような表情を見せるユリエルだが、その後にクスリと笑って再び刀を構えた。楓は構えられたユリエルの刀を自らの刀で弾き懐へと飛び込むと、ユリエルに体当たりをし彼女の体勢を崩させる。そして、身動きのとれなくなった彼女に向かって、楓は全力で刀を振り下ろした。
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