異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第四章 森の精霊

第76話 洞窟にて――平穏な入口と不穏な深部

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「アマト様、とりあえずリーファをどこかに寝かせてはどうでしょうか?」

ルダルが言った。

「あ、あぁ、そうだな……」

抱えているリーファの顔を見てアマトが答える。

すると

「あそこ、洞穴がある」

とルノアが指をさして言った。

「そうだな。いったん、あそこへ行こう」

アマトが言うと、洞穴の方へ歩き出した。

一同もその後に続き洞穴を目指す。

洞窟は涼しく、体を休めるにはちょうど良い場所であった。

アマトがリーファを地面に寝かすと、ミィナがリーファの頭を自分の膝の上に乗せる。

「この洞窟。結構、中まで続いてるみたいよ」

少し奥まで行っていたルノアが、仲間達に告げた。

「お宝があったりして」

エメルダがニヤリと笑う。

「いや魔石かも」

ルノアも想像を巡らす。

「魔石じゃと?」

グラントが真面目に反応すると、ニヤリと笑うルノアとエメルダ。

「じゃぁ、奥まで探検だ!」

とルノアがノリノリで高らかに言った。

ルダルは呆れ顔をするもの

「確かに不自然な洞窟なことは確かだな。少し様子を探る必要はある」

と言って、歩き出した。

ルダルの顔を見ると、グラントも慌てて後に続き、

「魔石……あると良いんじゃがのぉ」

と真顔で言った。

「私は……ここでリーファさんを見てます」

ミィナが言うと、アマトも

「であれば、俺もここにいる」

と言ってリーファとミィナの横に腰を下ろした。

「そうですね。また敵が来るかもしれませんので、そうしていただくのがよろしいかと」

ルダルが、一度振り向いて言うと、再び歩き出した。

ルノアとエメルダはどこか残念そうにアマトを見るも、ルダルとグラントの後について行った。

洞窟の奥からは、冷たい風がゆるやかに吹き抜けてくる。

「ちぇっ、アマト様がいない探検なんてつまらないな」

「あぁ、その通りだ」

「だいたいリーファに随分気を使ってるよな」

ルノアが不満を述べると、

「そ、そうなのか?」

とエメルダ。かなり鈍感である。

「お前、気づいてないのかよ」

と呆れ顔のルノア。

「ま、まさか。リーファのことが好きなんじゃ!?」

と、今更ながら驚くエメルダにルノアが断言した。

「それはない!あんな子供が恋愛対象になるはずがないさ」

妙に自信たっぷりのルノアに押されエメルダも

「そ、そうだよな。あんな幼児体型に俺たちが負けるわけねぇ!」

と、気を取り戻して胸を張る。

「そうさ!」

とルノアも負けじと胸を突き出す。

しかし、突如、ルノアのトーンが落ちた。

「けど、こんな絶好のチャンスにアマト様がいないなんて……」

エメルダは意を介さない顔でルノアを横から覗き込む。

「チャンスってなんだ?」

ルノアが叫ぶ。

「わからないのか!?こんな怪しくてジメジメしたところには出るんだよ!」

「何が?」

エメルダは、全く理解できていないようだ。

「幽霊に決まってるだろうが!」

「!?」

ルノアの勢いに押されてビクつくエメルダ。

「そうしたら、きゃーっって、乙女声で叫んでアマト様に抱きつけるだろうが!」

誇らしげになぜかガッツポーズのルノア。

その姿に後光を見たエメルダが

「お、俺も抱きついて良いか?」

と、ワナワナになる。

「あぁ……あぁ、もちろんだとも。我が友よ」

ルノアはなぜか自分に感動して泣いている。

「ルノア……俺はお前に一生ついていくぞ!」

と言ってガッツポーズのルノアにすがりつき、泣くエメルダであった。

その様子を、前に行くグラントが不思議そうに首だけ振り返って言った。

「あやつら……何を騒いでおる」

ルダルは振り向かず歩きながら言い放つ。

「放っておけ。せめて夢だけ、見させておいてやってくれ」

哀れなルノアとエメルダであった。



ルノアとエメルダの茶番の声は、もちろん、アマトとミィナのところまで届いていた。

ルクピーは二人の騒音にもかかわらず、リーファの腕に体を擦り寄せ、気持ちよさそうに眠っていた。

洞窟の奥から響く笑い声を聞きながら、アマトは苦笑し、ミィナとリーファに顔を向ける。

その視線の先で、ミィナは、膝枕をしているリーファの頭を優しく撫でていた。

その穏やかな仕草を見た瞬間、アマトの胸に不意に懐かしさが込み上げてくる。

前世――よく夕璃が赫夜を膝に抱き、同じように髪を撫でていた。

(そういえば……夕璃も、あの時の爆発に巻き込まれていたはずだ。それに雷牙も……)

アマトはふと考え込む。

(もしこっちに来ているなら……二人も探さなければ)

その思考が途切れた瞬間、ミィナの声がそっと耳に届いた。

「アマト様?」

我に返ったアマトは、少し照れたように笑う。

「あ、あぁ……すまない。少し考え事をしていた」

ミィナは安心したように、リーファを見つめながら言った。

「アマト様、リーファさんを見ている時、少し悲しそうでした。でも、今は穏やかに見えます」

その言葉に、アマトは一瞬目を見開き、そして柔らかく笑った。

「そうか……すまなかったな。心配かけて。でも、もう大丈夫だ」

その声は、どこか自分に言い聞かせるようでもあった。

すると、アマトの言葉に呼応するように、リーファがゆっくりと目を開けた。

ぼんやりする視界。

「お母さん?」

と呟いて目をこすると、そこにはニッコリ笑うミィナの優しい笑顔がーー。

目をパチクリすること二回。

リーファは、今の自分の状況を俄かに理解すると、びっくりして飛び起きた。

「あ、あ、ありがとうございます。ミィナ……さん?」

どう話していいかわからないリーファの耳はやはりピクピク動いていた。

そして、少し目を横に向けると、そこにはアマトがーー

リーファは顔を真っ赤にしながらも、耳を高速にパタパタさせ、少し膨れっ面になり、

「ちょ、ちょっと頭を冷やしてくるから!」

そう言って、泉のほとりへ小走りに向かっていった。

その様子を見て、アマトとミィナは思わず顔を見合わせると、優しく微笑みあったのだ。


その頃、洞窟の探検隊はーー


一行は、洞窟のかなり奥までやってきていた。

あたりは静まり返り、水滴がつららから滴り落ちる音だけが響いている。

「かなり奥までやってきたのぉ」

グラントの声がやけに響く。

「あぁ、こんなに穴が深いとは思わなかった」

ルダルも意外そうに答えた。

一方、後ろについてきているルノアとエメルダは、互いにぴったり肩と手を寄せ、おそるおそるあたりをキョロキョロと見回しながら進んでいた。

天井からぽたり、と水滴が落ち、ルノアの頬を打つ。

「ヒッ!?」

思わず飛び上がるルノア。

エメルダも条件反射で後ずさり。

そう、この二人――信じ難いことに、幽霊が大の苦手だったのである。

しかし、この二人はまだ知らなかった。

この洞窟に隠された恐ろしい真実をーー。
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