異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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序章 混沌の胎動

第4話 魔王ゼルヴァスは俺様系

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「おい、そこのお前! 俺様にその体をよこせ!」

脳内に響いたのは、やたら威圧感に満ちた男の声だった。

次の瞬間――

ゴーン!

物と物が真正面からぶつかり合うような、重く鈍い衝撃音が、頭の奥で炸裂した。
そのまま、アマトの意識はふっと遠のいていく。

「――ハッハッハッハァァァァ!!」

圧倒的な笑い声が原生林に響き渡る。
さっきまでアマトだった肉体が、まるで別人のように立ち上がった。

「この力……この魔素……いい! いいぞぉ! 完璧だッ! これなら、“七つの大罪”も神も瞬殺だ!」

まるで勝利を確信した征服者のように、男は両腕を広げて吠えた。

だが、そのとき――

「見つけたぞぉぉぉおおおおおおっっっ!!」

彼方から、閃光のような勢いで飛び込んでくる影があった。
ぴょん、と弾けるように、笑う男の前に現れた小柄な少女。
その顔には、純粋な喜びがあふれている。
目を爛々と輝かせ、欲しかったものを目の前にして、我慢できないとばかりに叫んだ。

「ゼルヴァスだなっ! おまえ、そうだな! なら、戦ええええええぇ!!」

「……またお前か。アテリス。ちょうどいい。この体を試させてもらおう」

ゼルヴァスは、ちょうど良い相手を見つけたとばかりに、口元には楽しげな笑みを浮かべた。

アテリスは、瞬きする間もなく距離を詰めた。

空間を跳躍するような動きで、目にも止まらぬ速さで舞い、
鋭い突きを連発し、蹴り上げ、回転しながら肘打ち、後方宙返りからのかかと落とし――
怒涛のように攻撃を畳みかける。

ゼルヴァスは、それを一歩も動かず、わずかな重心の移動だけで、すべて紙一重でかわした。

アテリスは無邪気に叫んだ。

「なっ、なっ、どうだっ!? 今の俺、強いだろっ!? すっごく、強いだろっ!!」

満面の笑みを浮かべながら、ひたすら自己主張する。

「ところで、アテリス。また体を変えたのか?」とゼルヴァスが尋ねた。

「へへーん。兄上からもらったぞ。ものすっごく、いい体だ。今度こそ、負ける気しない!」

アテリスは胸を張って答える。
ゼルヴァスはふっと鼻で笑った。

「ほう……だが、そろそろ終わりだ」

ゼルヴァスの掌がわずかに光を帯びる。
次の瞬間、空間が軋み、強烈なオーラが発せられた。

「うわあああああっ!?」

アテリスは一瞬だけ踏ん張ったが、耐えきれなかった。

「ア、アレーッ!!」

無様な叫び声を上げながら、吹き飛ばされる。

風に舞う木の葉のようにくるくると回りながら、
ついには空の彼方へ点のように小さくなって消えていった。

「うむ……申し分ない。いや、最高だな。この体。完璧すぎる」

ゼルヴァスは満足げに一人ごちた。
拳を強く握りしめ、全身からあふれる力に酔いしれる。

「よし……まずは、七つの大罪どもを――」

拳を突き上げ、高らかに宣言しかけた、その瞬間。

「……おい、いい加減にしろよ」

冷えた声が、脳内を鋭く割った。
ゼルヴァスの意識がぐらりと揺れる。

「いたたた……!」

聞こえてきたのは、アマトの呻き声だった。
彼は頭を押さえながら、ぼやいた。

「なんて石頭だ、お前……。ちょっと気が遠のいちまったじゃねぇか……」

小言をこぼしながら、意識を取り戻していく。
気づくと、ゼルヴァスの意識は、赤と黒がうごめく空間にいた。
体を見下ろす。
さっきまでアマトの肉体で感じていた手足の感覚は、きれいに消え失せていた。
代わりに、かつての魔王ゼルヴァスの体のイメージだけが、はっきりと残っている。

そしてその体は、地面に開いた“穴”に――
がっちりと引っかかっていた。

『な……なんだこれは!? 体が……動かん!』

必死にもがくが、どうにも動かない。

『お前、誰だよ、さっきから勝手に暴れて』

どこからか聞こえる、呆れたような声。

それは――アマトの声だった。

『わが名はゼルヴァス! 俺様こそ、魔王にして、覇者にして、この世界の未来の支配者ぞ!!』

ゼルヴァスは高らかに名乗りを上げた。

だが――

『へー、で?』

アマトの反応は、限りなく薄かった。

『なっ……!? バカなっ……! この俺様が! 魔王の俺様が……! 支配を……拒まれたぁぁぁぁっ!!』

ゼルヴァスは信じられない、といった様子で絶叫する。

『こんなこと……あり得るわけが……!!』

そんな絶叫を一通り聞き流しながら、アマトは適当にあしらった。

『そうかそうか、わかった、わかった』

そして、ふと気づいたように言った。

「そうだ、さっきの娘は大丈夫か?」

『おいっ! 待てぇぇぇぇっ!!』

ゼルヴァスの悲鳴が、赤と黒がうごめく空間に虚しく響く。

こうして――

最強の魔王ゼルヴァスは、
アマトの特異点の回廊の入り口で――
なぜか、引っかかっていた。
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