異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
10 / 98
第一章 光の雪

第10話 オリンポスの魔王ゼルヴァス VS 原初の女神ティアマト

しおりを挟む
朝食を終え、アマトが香ばしい香りのする温かな飲み物を口にしていると、ミィナが声をかけてきた。

「アマト様、今日これからフィリアの森へ、村の女の子と子供たちで食材を採りに行く予定なのですが……

ご一緒にいかがですか?」

アマトは静かに目を伏せ、

「……すまない。ちょっと頭の中を整理したい」

と答えた。

残念そうに、それでも理解を示すようにミィナは微笑んだ。

「そうですか……」

そこで、ゼルミスが口を挟む。

「無理もないな。さすがにまた魔獣が出るとも思えんし、他の者たちと行ってきなさい」

ミィナは一瞬だけ不安そうな表情を見せたが、「それもそうですね」と頷き、

「フィリアの森にも、きっと昨夜の光の雪が降り注いでいたでしょうから、

美味しいものが採れるかもしれません。楽しみにしていてくださいね」

と笑顔で家を出て行った。

ゼルミスも「わしも、他の村人の様子を見てくるとしよう」と言って後を追うように出ていった。



―――



アマトは一人、寝床に横たわる。

(この世界、魔素、スキル、魔物……)

いろいろな情報が頭の中を巡っていた。


その時。

『アマトちゃんっ!』

突然、聞き覚えのある声が響く。

『お前……どうやってここに来た?』

『また“お前”呼ばわり……』とティアマトは肩を落とす。

『この回廊を使って来たのよ、決まってるじゃない、やぁねぇ』

と、目の前の“障害物”(ゼルヴァス)を避けて身を乗り出そうとしたそのとき、

ティアマトはようやくこの異様な状況に気づいた。

『……ちょっと、そこのあなた。魔素の流れの邪魔になるじゃない!さっさとカオスへ落ちなさい!』

ぷんすか怒るティアマトに、ゼルヴァスが静かに口を開いた。

『お前は……原初の女神か?』

『えっ?、私をわかるの? 博識があるのね』

彼女はゼルヴァスの顔を覗き込み、ゼルヴァスは視線をそらした。

そこで、アマトが問いかける。

『で、お前は何しに来たんだ?』

『あ、そうだった!』

とティアマトは顔を上げた。

『アマトちゃんと別れてから、オリンポスを見て回りた……、違った、

様子を見にきたかったんだけど、庶務に追われてなかなか来られなかったの……ぐすん。

でもね、転生早々、あなたが大量の魔素をカオスに送り込んできたかと思ったら、

今度は魔素がちょっと漏れ始めて、さすがに気になって、仕事をさぼって様子を見に来ちゃった』

(……仕事ってなんだよ)

『そもそも、この空間はなんなんだよ』

『あれ、説明してなかったかしら? ここはね、アマトちゃんの精神空間で、

カオスとオリンポス……いや、ちょっと違うわね。あなたとカオスを結ぶ“回廊”の出入り口なの』

ティアマトが言葉を続ける。

『この回廊を通して、魔素をカオスに回収してもらうの。そして逆もできるのよ。

アマトちゃんが魔素を欲しいと思ったら、ここからカオスの魔素を放出することもできるわ。

すごいでしょ!もっとも、アマトちゃん自身に内在する魔素量が尋常じゃないから、

そうそう放出されることはないと思うわ』

『なるほどな……。で、お前もこの回廊は自由に行き来できるのか?』

『そういうこと』

『物とかに”触れる”のか?』

『そんなのできるわけないじゃない。ふふっ、そんなの常識よっ』

(……ってことは、物理的な干渉はできないってことか。やっぱりお土産なんか触れねぇだろ)

アマトは頭の中でつぶやいた。

そこにゼルヴァスが口を挟んだ。

『そういうことか……。お前は、カオスとオリンポスを結ぶ“特異点”だったのか。異常体質にも納得だ』

『えっ?あなた、なんで、”特異点”ということを知っているの?』

とティアマトが目を丸くする。

『俺様は魔王だ。ある程度のことは知っている』

『へえ、あなたの名前は?』

『ゼルヴァスだ』

『ふーん、なるほどね。ゼルヴァスちゃん』

ゼルヴァスは不機嫌そうに眉をひそめたが、

『最初にカオスに流れ込んだ魔素は、おそらく最初に遭遇した異常な魔素力を持つ魔獣のものだ。

そのあと、少しずつ放出されていた魔素は、アマトが使ったスキル“恩恵”で消費した魔素を、

無意識に自分自身が回収したものだろう』

なるほど、そういうことなのね、とティアマトは頷くも、

『で、あなたはなんでここにいるの?』とまた不機嫌になる。

『俺様がそんなこと知るか。こいつの体を乗っ取ろうとしたら、いつの間にかここにいた。

目が覚めたら、こんな格好で、”体の感覚もなく”身動きも取れなくなってたんだ』

ティアマトはくすくす笑う。

『そんなことしたら、回廊に取り込まれるに決まってるじゃない。あなた、馬鹿なの?』

(お前が言うな)

アマトは内心で突っ込む。

『きっと、あなたの魔素を吸収しようと、回廊が吸引を始めたの。

でもあなたが抵抗したせいで、入り口に詰まってしまったのね。

けどね、あなたがここにいると魔素の回収の邪魔になるの。

だから、さっさとカオスへ落ちてほしいの。お願いっ!』

『うるせえっ、俺様に指図するんじゃねえ!』

『また“うるせえ”って……。

仕方ないわ、この手だけは使いたくなかったけど……。

覚悟なさい。』

『な、何をするつもりだっ!』

と身構えるゼルヴァス。

ティアマトはにやりと笑い――次の瞬間、こちょこちょ攻撃をお見舞いした。

『や、やめろっ! くっ、ぐははっ、や、やめろぉおおおっ!!』

魔王らしからぬ情けない声とその絶叫が、アマトの精神空間内にむなしくこだまする。

(……だから、お前らは、くすぐることも、くすぐったがることもできねぇだろ)

アマトは、部屋の天井を見上げながらため息をついた。

(……これが俺の“転生後ライフ”かよ)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。 ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。 「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」 いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。 魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル? いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。  そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。

処理中です...