15 / 98
第一章 光の雪
第15話 ルノアとの勝負――そして、ウロボロスの痣がほくそ笑む
しおりを挟む
アマトの意識の内側――赤と黒が入り混じる、揺らぐ精神の空間。
ティアマトは、なぜか冷や汗を浮かべながら、しどろもどろに口を開いた。
『ね、ねぇ……アマトちゃん? ちょーっと、小耳に入れておきたいことが…ごじゃります…のでありますが……』
『なんだよ』
いつものように無愛想なアマトの返事。
ティアマトは視線を泳がせながら、言い淀む。
『さっき、ルノアちゃんとの会話で……赫夜ちゃんの話、してたでしょ?』
『……ああ』
『えっとぉ……あんまり、前の世界のこと……他人に話しちゃダメかも……っていうか、ほんとはダメ……っていうか……』
アマトの目が鋭くなる。
『……どういう意味だ?』
ティアマトは、言いづらそうに続けた。
『カオスで出会った魔素体の人から聞いたんだけど
……オリンポスのルールで、転生者が“前の世界の記憶”を他人に話すと
……話した本人か、聞いた相手に“呪い”がかかるらしくて……』
『なに……?』
『しかも、最悪、死んじゃうくらいの……強い呪いらしくて……てへ☆』
『……てへ、じゃねぇ!!!!』
アマトの怒声が精神空間を震わせた。
『なんでそれを今言う!? もっと早く言えたろうが!!』
『ごめんなさぁぁいっ! 私もよく知らないのぉぉぉ!!』
ティアマトは涙目でバタバタと後退し、そのままカオスの霧の中へ逃げ込んでいった。
その背中が完全に霧に消えかけた頃――
『ふっ……あの馬鹿女神の代わりに、俺様が説明してやろう。ありがたく思え』
まるでアマトの精神空間の主《あるじ》であるかのように、空気を読まないゼルヴァスが得意げに言った。
アマトはジロリと睨みつけた。
ゼルヴァスは気にする様子もなく、語り始める。
『この“呪い”ってやつは、神々が仕込んだ“記憶封じの楔”ってシステムだ。
呪われた者には、体のどこかに“ウロボロス”の文様の痣が現れるらしい』
『ウロボロスの痣……?』
アマトが繰り返す。
『昔、前世の記憶を持つ転生者たちが結託して、神々に反旗を翻したことがあってな。
世界を滅ぼしかけたらしい。慌てた神どもは、転生者同士が“記憶を共有する”ことそのものを禁じた。
語れば呪い。聞いても呪い。そういう仕組みさ』
アマトは無言のまま、表情を険しくする。
ゼルヴァスは肩をすくめながら、さらに言葉を重ねた。
『この呪い、神の力でシステムに組み込まれてるから、簡単には解除できねぇ。
昔は“破呪”ってスキルが存在したんだが、神々がそれも潰した。今じゃどうしようもねぇ』
『……』
『しかも発動条件が曖昧なんだよ。
話の内容とか、相手とか、タイミングとか……何かが引き金になって発動する。
軽いものなら重傷程度で済むが、最悪の場合は命に関わる。
オリンポスにとって“重大な前世での記憶”ほど、強い呪いが発動しやすいって噂もある』
その瞬間、アマトの拳がゼルヴァスの顔面をぶち抜いた。
ぐふっ!?
『な、なぜっ!? 俺様は……善意で説明しただけで……』
情けない声だけが空間に虚しく響いた。
アマトは、ゼルヴァスに物理攻撃が効かないことをわかっていながら、それでも殴らずにはいられなかった。
アマトは、拳を握ったまま、しばらく動かなかった。
(俺に呪いがかからなかったとしたら、ルノアは……どうなる……)
自分のせいで、他人が傷つくかもしれない――それが、どうしようもなく苛立たしい。
「……呪い、か」
目を伏せたその顔に、今までにない深い影が差す。
そして、もうひとつの重大な事実が浮かび上がった。
「……赫夜を探すにも、その“名前”を口にするだけで、相手が呪われるってことか……」
呆然と、ただ一人、悔しがるように。
(……なんなんだよ……それじゃ、探しようがねぇじゃねぇか……!)
拳が震える。
だが――
次の瞬間、アマトの瞳に再び光が灯った。
「……ふざけんな。だったら、全部、俺が背負ってやる」
静かに、しかし確かに、言い放った。
「呪いでも、なんでも来い……ルノアは俺が守る。赫夜も――必ず俺が見つけ出す」
その言葉は、誰に向けるでもなく、精神の空間に、確かに響き渡っていた。
―――
空は晴れわたり、野球場に仕立てられた広場には、村人たちの熱気が満ちていた。
即席の観客席では、ゼルミスが大きく手を広げて試合の開会を宣言する。
「村の皆の衆! いまここに、第一回“ポタ村野球試合”の開幕を宣言する!」
ミィナは応援団長として、やや露出の多い応援服に身を包み、派手なリボンと手作りの応援旗を振って叫んでいた。
「いっけーアマト!」「勝てーアマトーッ!」と、テンションはすでに限界突破。
その隣では、ネトが跳ね回っている。
「アマト様、すっげーかっこいい! 絶対ホームランだよ!」
ネネは落ち着いた口調でたしなめる。
「お兄ちゃん、うるさいから一回落ち着きなさい。あと帽子落ちてる」
「えぇ~!?」
それで、アマトの精神空間内では、
『キャーッ、アマトちゃん、がんばれーっ!!』
『お、面白そうだぞ、野球!』
とティアマトとゼルヴァスがはしゃぎまくっていた。
そんな喧騒の中、試合が始まった。
試合はルノアのチームの先行。一回表、ピッチャーのアマトは、力加減に細心の注意を払っていた。
強く投げれば魔素が暴走する――だから、抑え気味の投球で様子を見る。
しかし、相手は魔物。打撃の威力も、人間の野球とは段違いだった。
ツーアウト走者一塁の場面で、ルノアがバッターボックスに立つ。
4番バッターとしての風格すら感じさせる。
目が合う。まっすぐな視線を交わし、緊張感が高まる。
ルノアは、遅れて練習を始めたとは思えないほど、堂々としていた。
半袖半ズボンのユニフォームから見える腕や脚には、打ち身や擦り傷が絶えず、相当な練習を積んできたことが一目でわかった。
(この一週間……もう、特訓してきたんだな)
アマトの渾身の球を、ルノアはわずかに振り遅れながらも、強烈な打球でセンター奥へ弾き返した。
しかし、アウト。辛くも一回表を終える。
一回裏。今度はルノアがマウンドに立つ。剛速球を次々に投げ込み、アマトのチームは手も足も出ない。
球に宿る魔素の密度と制御は、明らかにアマトを上回っていた。
3番、アマトの打席。
「来いよ、ルノア」
ルノアは口元をわずかに上げ、魔素をまとった球を放る。一球――アマトのバットは空を切った。
「……チッ」
ベンチに戻ったアマトの胸に、焦りが渦巻く。完全に打ち取られた。
その後の試合は、まさに一進一退。互いに魔素を駆使し、スライムの特性を活かした走塁や、伸びる腕による奇抜なプレーが続出。
まさに、ファンタジーと野球の融合だった。
そして、運命の九回表――スコアは2-2。
再びルノアが打席に立つ。アマトの投げたストレートが、わずかに甘く入った。
乾いた金属音が広場に響く。打球は高く弧を描き、そのまま場外へと消えていく。
「くそっ……!」
観客席から歓声が巻き起こる。ルノアは静かにベースを一周し、最後に拳を握って見せた。
一点を追う九回裏。アマトたちの攻撃。
ツーアウト、走者一塁という場面。
そして、アマトが打席に立つ。
(集中しろ……この一打に、全部かける)
アマトは精神を統一し、魔素の流れを最適化する。目を閉じ、ルノアの投球をイメージ。
目を開いた瞬間、空間が静まり返った。
投じられた球は、ルノアの渾身の一球。
だが――
アマトのバットが芯でとらえたその瞬間、打球は一直線に空を裂き、遥か彼方、青空の彼方へと消えていった。
逆転、サヨナラ。
広場が揺れるほどの歓声。ミィナが叫び、ネトが飛び上がり、ネネが喜びながら拍手した。
アマトはベースを一周しながら、ルノアを見た。
ルノアは悔しそうに笑いながら、アマトの方に顔を向ける。
ただ、そこにはすがすがしい顔をしたルノアがいた。
ホームを回りながら、アマトは、ふと我に返り、
『本当に、これで魔素の操作強化になってたのか?』
と疑念をいだくと、
ゼルヴァスが
『だ、大丈夫だ。間違いなく成長しているぞ』
とややごまかし気味に言った。
アマトがホームベースを踏むと、チームメイトの歓喜の喜び合い。
その最中に、向こうの方から
「おいっ!おまえら!聞こえてんだろ!?」
という叫び声が聞こえる。
アマトはそちらを向くも、
(ん?ゴブリンもやはりいるのか)
と思いながら、特に驚く様子もなく、ベンチに腰を下ろした。
ゼルミスとルノアがゴブリンたちのところまで行き、何かを言っていたかと思うと、ゼルミスは大声で言った。
「さて……、試合はアマト様チームの勝ちじゃ。今日は、皆の者、ご苦労であった」
そして、ルノアはアマトのもとへ笑顔で駆け寄ってきた。
「負けちまったけど、気持ちいい負けだったよ。
アマト様、オレ、本当は、この村を救ってくれたアマト様のこと、大好きさ」
言葉のあと、ルノアはくるりと一回転しながら笑った。
普段はボーイッシュだが、ポニーテールをふわりと振って、いまは年相応の少女のように。
だが――
アマトの視線は、その一瞬を見逃さなかった。
ポニーテールの影。振り返る背中の、その首筋の根元に――
黒く、禍々しい“ウロボロス”の痣が、かすかに浮かんでいた。
それはまるで、静かにほくそ笑んでいるかのように。
(……っ)
声にならない衝撃が、アマトの胸の奥を鋭く突き刺す。
歓声と笑顔に包まれる広場の中で――
アマトだけが、まるで時が止まったかのように、静かに立ち尽くしていた。
ティアマトは、なぜか冷や汗を浮かべながら、しどろもどろに口を開いた。
『ね、ねぇ……アマトちゃん? ちょーっと、小耳に入れておきたいことが…ごじゃります…のでありますが……』
『なんだよ』
いつものように無愛想なアマトの返事。
ティアマトは視線を泳がせながら、言い淀む。
『さっき、ルノアちゃんとの会話で……赫夜ちゃんの話、してたでしょ?』
『……ああ』
『えっとぉ……あんまり、前の世界のこと……他人に話しちゃダメかも……っていうか、ほんとはダメ……っていうか……』
アマトの目が鋭くなる。
『……どういう意味だ?』
ティアマトは、言いづらそうに続けた。
『カオスで出会った魔素体の人から聞いたんだけど
……オリンポスのルールで、転生者が“前の世界の記憶”を他人に話すと
……話した本人か、聞いた相手に“呪い”がかかるらしくて……』
『なに……?』
『しかも、最悪、死んじゃうくらいの……強い呪いらしくて……てへ☆』
『……てへ、じゃねぇ!!!!』
アマトの怒声が精神空間を震わせた。
『なんでそれを今言う!? もっと早く言えたろうが!!』
『ごめんなさぁぁいっ! 私もよく知らないのぉぉぉ!!』
ティアマトは涙目でバタバタと後退し、そのままカオスの霧の中へ逃げ込んでいった。
その背中が完全に霧に消えかけた頃――
『ふっ……あの馬鹿女神の代わりに、俺様が説明してやろう。ありがたく思え』
まるでアマトの精神空間の主《あるじ》であるかのように、空気を読まないゼルヴァスが得意げに言った。
アマトはジロリと睨みつけた。
ゼルヴァスは気にする様子もなく、語り始める。
『この“呪い”ってやつは、神々が仕込んだ“記憶封じの楔”ってシステムだ。
呪われた者には、体のどこかに“ウロボロス”の文様の痣が現れるらしい』
『ウロボロスの痣……?』
アマトが繰り返す。
『昔、前世の記憶を持つ転生者たちが結託して、神々に反旗を翻したことがあってな。
世界を滅ぼしかけたらしい。慌てた神どもは、転生者同士が“記憶を共有する”ことそのものを禁じた。
語れば呪い。聞いても呪い。そういう仕組みさ』
アマトは無言のまま、表情を険しくする。
ゼルヴァスは肩をすくめながら、さらに言葉を重ねた。
『この呪い、神の力でシステムに組み込まれてるから、簡単には解除できねぇ。
昔は“破呪”ってスキルが存在したんだが、神々がそれも潰した。今じゃどうしようもねぇ』
『……』
『しかも発動条件が曖昧なんだよ。
話の内容とか、相手とか、タイミングとか……何かが引き金になって発動する。
軽いものなら重傷程度で済むが、最悪の場合は命に関わる。
オリンポスにとって“重大な前世での記憶”ほど、強い呪いが発動しやすいって噂もある』
その瞬間、アマトの拳がゼルヴァスの顔面をぶち抜いた。
ぐふっ!?
『な、なぜっ!? 俺様は……善意で説明しただけで……』
情けない声だけが空間に虚しく響いた。
アマトは、ゼルヴァスに物理攻撃が効かないことをわかっていながら、それでも殴らずにはいられなかった。
アマトは、拳を握ったまま、しばらく動かなかった。
(俺に呪いがかからなかったとしたら、ルノアは……どうなる……)
自分のせいで、他人が傷つくかもしれない――それが、どうしようもなく苛立たしい。
「……呪い、か」
目を伏せたその顔に、今までにない深い影が差す。
そして、もうひとつの重大な事実が浮かび上がった。
「……赫夜を探すにも、その“名前”を口にするだけで、相手が呪われるってことか……」
呆然と、ただ一人、悔しがるように。
(……なんなんだよ……それじゃ、探しようがねぇじゃねぇか……!)
拳が震える。
だが――
次の瞬間、アマトの瞳に再び光が灯った。
「……ふざけんな。だったら、全部、俺が背負ってやる」
静かに、しかし確かに、言い放った。
「呪いでも、なんでも来い……ルノアは俺が守る。赫夜も――必ず俺が見つけ出す」
その言葉は、誰に向けるでもなく、精神の空間に、確かに響き渡っていた。
―――
空は晴れわたり、野球場に仕立てられた広場には、村人たちの熱気が満ちていた。
即席の観客席では、ゼルミスが大きく手を広げて試合の開会を宣言する。
「村の皆の衆! いまここに、第一回“ポタ村野球試合”の開幕を宣言する!」
ミィナは応援団長として、やや露出の多い応援服に身を包み、派手なリボンと手作りの応援旗を振って叫んでいた。
「いっけーアマト!」「勝てーアマトーッ!」と、テンションはすでに限界突破。
その隣では、ネトが跳ね回っている。
「アマト様、すっげーかっこいい! 絶対ホームランだよ!」
ネネは落ち着いた口調でたしなめる。
「お兄ちゃん、うるさいから一回落ち着きなさい。あと帽子落ちてる」
「えぇ~!?」
それで、アマトの精神空間内では、
『キャーッ、アマトちゃん、がんばれーっ!!』
『お、面白そうだぞ、野球!』
とティアマトとゼルヴァスがはしゃぎまくっていた。
そんな喧騒の中、試合が始まった。
試合はルノアのチームの先行。一回表、ピッチャーのアマトは、力加減に細心の注意を払っていた。
強く投げれば魔素が暴走する――だから、抑え気味の投球で様子を見る。
しかし、相手は魔物。打撃の威力も、人間の野球とは段違いだった。
ツーアウト走者一塁の場面で、ルノアがバッターボックスに立つ。
4番バッターとしての風格すら感じさせる。
目が合う。まっすぐな視線を交わし、緊張感が高まる。
ルノアは、遅れて練習を始めたとは思えないほど、堂々としていた。
半袖半ズボンのユニフォームから見える腕や脚には、打ち身や擦り傷が絶えず、相当な練習を積んできたことが一目でわかった。
(この一週間……もう、特訓してきたんだな)
アマトの渾身の球を、ルノアはわずかに振り遅れながらも、強烈な打球でセンター奥へ弾き返した。
しかし、アウト。辛くも一回表を終える。
一回裏。今度はルノアがマウンドに立つ。剛速球を次々に投げ込み、アマトのチームは手も足も出ない。
球に宿る魔素の密度と制御は、明らかにアマトを上回っていた。
3番、アマトの打席。
「来いよ、ルノア」
ルノアは口元をわずかに上げ、魔素をまとった球を放る。一球――アマトのバットは空を切った。
「……チッ」
ベンチに戻ったアマトの胸に、焦りが渦巻く。完全に打ち取られた。
その後の試合は、まさに一進一退。互いに魔素を駆使し、スライムの特性を活かした走塁や、伸びる腕による奇抜なプレーが続出。
まさに、ファンタジーと野球の融合だった。
そして、運命の九回表――スコアは2-2。
再びルノアが打席に立つ。アマトの投げたストレートが、わずかに甘く入った。
乾いた金属音が広場に響く。打球は高く弧を描き、そのまま場外へと消えていく。
「くそっ……!」
観客席から歓声が巻き起こる。ルノアは静かにベースを一周し、最後に拳を握って見せた。
一点を追う九回裏。アマトたちの攻撃。
ツーアウト、走者一塁という場面。
そして、アマトが打席に立つ。
(集中しろ……この一打に、全部かける)
アマトは精神を統一し、魔素の流れを最適化する。目を閉じ、ルノアの投球をイメージ。
目を開いた瞬間、空間が静まり返った。
投じられた球は、ルノアの渾身の一球。
だが――
アマトのバットが芯でとらえたその瞬間、打球は一直線に空を裂き、遥か彼方、青空の彼方へと消えていった。
逆転、サヨナラ。
広場が揺れるほどの歓声。ミィナが叫び、ネトが飛び上がり、ネネが喜びながら拍手した。
アマトはベースを一周しながら、ルノアを見た。
ルノアは悔しそうに笑いながら、アマトの方に顔を向ける。
ただ、そこにはすがすがしい顔をしたルノアがいた。
ホームを回りながら、アマトは、ふと我に返り、
『本当に、これで魔素の操作強化になってたのか?』
と疑念をいだくと、
ゼルヴァスが
『だ、大丈夫だ。間違いなく成長しているぞ』
とややごまかし気味に言った。
アマトがホームベースを踏むと、チームメイトの歓喜の喜び合い。
その最中に、向こうの方から
「おいっ!おまえら!聞こえてんだろ!?」
という叫び声が聞こえる。
アマトはそちらを向くも、
(ん?ゴブリンもやはりいるのか)
と思いながら、特に驚く様子もなく、ベンチに腰を下ろした。
ゼルミスとルノアがゴブリンたちのところまで行き、何かを言っていたかと思うと、ゼルミスは大声で言った。
「さて……、試合はアマト様チームの勝ちじゃ。今日は、皆の者、ご苦労であった」
そして、ルノアはアマトのもとへ笑顔で駆け寄ってきた。
「負けちまったけど、気持ちいい負けだったよ。
アマト様、オレ、本当は、この村を救ってくれたアマト様のこと、大好きさ」
言葉のあと、ルノアはくるりと一回転しながら笑った。
普段はボーイッシュだが、ポニーテールをふわりと振って、いまは年相応の少女のように。
だが――
アマトの視線は、その一瞬を見逃さなかった。
ポニーテールの影。振り返る背中の、その首筋の根元に――
黒く、禍々しい“ウロボロス”の痣が、かすかに浮かんでいた。
それはまるで、静かにほくそ笑んでいるかのように。
(……っ)
声にならない衝撃が、アマトの胸の奥を鋭く突き刺す。
歓声と笑顔に包まれる広場の中で――
アマトだけが、まるで時が止まったかのように、静かに立ち尽くしていた。
10
あなたにおすすめの小説
転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?
スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。
女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!?
ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか!
これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。
異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~
北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。
実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。
そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。
グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・
しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。
これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!
ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。
転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~
アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。
お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!
tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。
ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。
「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」
いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。
魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル?
いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。
そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる