異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

文字の大きさ
17 / 98
第二章 粗野な者たち ※ギャグ多めです

第17話 嵐の予感――魔獣召喚兵器到着。強欲と色欲は何を思う……

しおりを挟む
――封建王政国家ガルドリアの城

その中枢に位置する王の間には、装飾の豪奢さに反して、重苦しいよどんだ空気が漂っていた。

天井には金細工が施され、赤絨毯の敷かれた床を囲むように高価な柱が並ぶ。

その玉座に、アークリオス三世は肥えた体をどっかりと沈めていた。

首から腰にかけて飾られた過剰な宝飾が、些細な動きにも反応してじゃらじゃらと音を立てる。

「……遅い。いつになったら“魔獣召喚兵器”が届くのだ。オルギーのやつ、まさか嘘をついたのではあるまいな……。
まったく、これだから異世界人は信用ならぬ!」

苛立ち混じりの独白に、乾いた声がかぶさった。

「俺たちも異世界人だがな」

その一言に、アークリオスの体がびくりと跳ねる。声の主に目を向けると、

王の間の柱の陰から、いつの間にか現れていた男――プレオナが、無表情のまま静かに立っていた。

「い、いつの間に……いやいや、そなたは別じゃ! ガルドリアに尽くしてくれる……わ、わが友人《とも》、強欲のプレオナよ。はは、ははは……!」

額に脂汗をにじませながら、アークリオスは必死に愛想笑いを浮かべた。

――そのとき、王の間の隅

赤いビロード張りのソファに脚を組みながら、退屈そうに遠いまなざしで窓の外を眺めていた女が、くすっと唇をゆるめた。

「ふぅん? 友人、ねぇ……前にも同じこと言ってた気がするわ」

脚を組み、深い黒のドレスをまとった女――ラグニア。

ストレートで腰まで届く艶やかな黒髪を指先で弄びながら、物憂げな横顔を見せていた。

すらりと伸びた脚線美、引き締まった腰からヒップのライン、伏し目がちの長い睫毛。

わずかに動くだけで、空間が艶めくような色気を帯びている。

アークリオスは、にやけた顔で両手を広げる。

「おぉ、わが愛しき色欲のラグニアよ。そなたまでそんなことを……ふふふ」

その視線は、周囲の目も気にせず、食い入るようにラグニアの胸元から太ももへと這っていく。

(くっ……何度見ても完璧すぎる……! あの肌、あのくびれ、あの脚線美

……すべてが淫靡なる神の創造よ……!……あぁ、いずれ、いずれわしの夜伽に……)

喉の奥で涎がこみ上げるのをこらえ、咳払い一つで誤魔化す。

ラグニアはその視線に気づいたのか、脚を組み直しながら、冷めた目でアークリオスを一瞥した。

「……で、その兵器って、どんなものなのかしら?」

問いかけに、脇に控えていた老臣が一歩前に出て、恭しく頭を垂れる。

「説明させていただきます。

“魔獣召喚兵器”とは、七つの大罪様方と魔王ゼルヴァスとの大戦後、ラグナメア国が開発した兵器でございます。

異空間のタルタロスに封じられている魔獣を、賢者の石を媒体としてオリンポスに召喚する、極めて危険な禁術装置でございます。

射程距離は三百キロメートル以内、精密な位置指定はできず、連続使用は不可能。

また、使用される賢者の石――すなわち魔素の量と質により、召喚される魔獣の強さが大きく左右されるとのことです。」

「なお、召喚された魔獣の行動を制御することも、察知することすらできず、成り行きに任せるしかないようです……」

と老臣が声をひそめるように付け加えた。

「ふむ……多少、手綱が効かぬということか……」

一瞬だけ眉をひそめたものの、すぐに大きく手を広げて笑い出す。

「――まぁ、よい! どうせ奴らは敵地で暴れるのじゃ!」

そして満面の笑みで、

「すばらしぃ! これさえあれば、魔族など取るに足らん!」

アークリオスが、したり顔で満足げにうなずいた、その直後――

「くだらん」

プレオナが、氷のような声で切り捨てた。

「その気になれば、俺たちが魔族界へ行って、蹴散らしてくることもできる」

「ま、待て! ゼルヴァスがどうなったかもわからぬ魔族界へ、万が一にも何かあったら……!」

「……俺たちが、負けるとでも思っているのか?」

冷たい声音が王の間に響き、空気が凍りつく。

「も、もちろん、そなたたちが負けるなどとは思っておらん! 

しかし……前の大戦でも、七人がかりでようやくだったわけで……い、いや、念のためじゃ、念のため!」

アークリオスはしどろもどろに言い訳を続ける。

ラグニアがふっと笑った。

「私たち、あれからもっと強くなっているの。ゼルヴァスが復活していたとしても――

今なら、一人でも勝てる気がするわ」

アークリオスの頬が引きつる。無理やり笑みを貼り付けたまま、喉を鳴らす。

「そ、そうか、そうか……ならばなおさら、今の魔族界へそなたたちが行くまでもない。

この兵器で十分じゃ!

そなたたちには――そう、隣国からの攻撃に備えていてもらいたいのじゃ!」

(……この愚か者がっ。魔族界になど行ってもらっては困るのだ。

召喚した魔獣が暴走して、我が国で大暴れでもされたら誰がそれを止めるというのだ!

それに、プレオナはどうなっても構わんが、ラグニアがこの地に少しの間でもいなくなっては、

わしがさみしいではないか……あの肌、あの唇……あぁ、いずれ……)

にたにたと笑いながら、アークリオスは自分勝手な妄想にふけっていた。

「――ふぅん、賢者の石ねぇ」

ラグニアは何かを言いかけたが、興味を失ったように視線を宙に流した。

「ガルドリアの賢者の石は、他の二国に比べて少ないのではないか?」

プレオナが冷静に問いかける。

「心配無用じゃ。賢者の石ならいくらでも“おる”。

我が国には原石が眠っておるのじゃ。ただ、加工には多少の手間がかかる。

だが、明日には一回分の魔素が完成する予定じゃ。兵器が届き次第、召喚を試してみるつもりじゃ!」

そのとき――

「ご報告申し上げます!」

扉が勢いよく開き、衛士が膝をついて声を張る。

「ラグナメア国より、殿下への贈り物が到着いたしました!」

「待ちわびたぞっ! ようやく来おったかっ! 噂をすればなんとやら、じゃな!」

と高らかな声が王の間に響く。

「よし、わしが直々に見に行ってやろうぞ!」

アークリオスは叫ぶや否や、じゃらじゃらと宝石を鳴らしながら立ち上がり、腹を揺らして玉座を後にした。

その背を、ラグニアはため息まじりに見送り、ドレスの裾を整えてそっと横顔をそむける。

プレオナは無言のまま、その場を離れた。

王の間には、言葉にならぬ静寂だけが残された。

それはまるで、“何かが確かに動き始めた”ことを告げる合図のように――。

ーーー

空は黒い雲に覆われ、太陽の光を遮っていた。

あたり一帯に、湿った空気が静かに沈んでいる。

遠くで雷が低く鳴った。

ポタ村の入り口に、一団の影が静かに立ち止まっている。

その先頭に立つのは、大きな棍棒を肩に担ぎ、にやりと笑みを浮かべた女――

ゴブリン族の女頭《おんながしら》、エメルダ。

その背後には、複数のゴブリンたちが無言で控えている。

風は止み、空気が張り詰める。

――その静けさは、これから起こる嵐を予感させるかのようだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

異世界に転生した俺は英雄の身体強化魔法を使って無双する。~無詠唱の身体強化魔法と無詠唱のマジックドレインは異世界最強~

北条氏成
ファンタジー
宮本 英二(みやもと えいじ)高校生3年生。 実家は江戸時代から続く剣道の道場をしている。そこの次男に生まれ、優秀な兄に道場の跡取りを任せて英二は剣術、槍術、柔道、空手など様々な武道をやってきた。 そんなある日、トラックに轢かれて死んだ英二は異世界へと転生させられる。 グランベルン王国のエイデル公爵の長男として生まれた英二はリオン・エイデルとして生きる事に・・・ しかし、リオンは貴族でありながらまさかの魔力が200しかなかった。貴族であれば魔力が1000はあるのが普通の世界でリオンは初期魔法すら使えないレベル。だが、リオンには神話で邪悪なドラゴンを倒した魔剣士リュウジと同じ身体強化魔法を持っていたのだ。 これは魔法が殆ど使えない代わりに、最強の英雄の魔法である身体強化魔法を使いながら無双する物語りである。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

お助け妖精コパンと目指す 異世界サバイバルじゃなくて、スローライフ!

tamura-k
ファンタジー
お祈りメールの嵐にくじけそうになっている谷河内 新(やごうち あらた)は大学四年生。未だに内定を取れずに打ちひしがれていた。 ライトノベルの異世界物が好きでスローライフに憧れているが、新の生存確認にやってきたしっかり者の妹には、現実逃避をしていないでGWくらいは帰って来いと言われてしまう。 「スローライフに憧れているなら、まずはソロキャンプくらいは出来ないとね。それにお兄ちゃん、料理も出来ないし、大体畑仕事だってやった事がないでしょう? それに虫も嫌いじゃん」 いや、スローライフってそんなサバイバル的な感じじゃなくて……とそんな事を思っていたけれど、ハタと気付けばそこは見知らぬ森の中で、目の前にはお助け妖精と名乗るミニチュアの幼児がいた。 魔法があるという世界にほんのり浮かれてみたけれど、現実はほんとにサバイバル? いえいえ、スローライフを希望したいんですけど。  そして、お助け妖精『コパン』とアラタの、スローライフを目指した旅が始まる。

処理中です...