異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第三章 咆哮の誇り ※序盤、シリアス、途中、切ない系、終盤、怒涛のカタルシス

第35話 誕生!アマトの決意を支える仲間

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夜空に星が瞬き、静かな風が草を撫でていく。
焚き火の灯りが小さな輪を描き、その中心で、アマトと三人の娘たちは簡素な食事を囲んでいた。
訓練で火照った体を冷ますように、それぞれが湯気の立つ鍋をすすりながら、ぽつりぽつりと口を開く。

「……思った以上に、体が軽くなってきた感じがするな」

ルノアが、スプーンをくるくると回しながら呟いた。
目はどこか遠くを見据え、唇の端には小さな笑みが浮かんでいる。

「このままいけば、どんな魔獣が来ても、太刀打ちできる気がしてきたよ」

少し誇らしげな響きが、その声に混じる。

「だな」

エメルダが同意するように頷き、勢いよくスープをすすった。

「もしかすると、ガルテラにまだいる魔獣も、俺たちだけで退治できるかもな」

冗談めかした口調だが、その瞳には確かな自信が宿っていた。

「そうね……私たち、もしかすると……ガルテラ村に行くべきなのかも」

ミィナが、ぼそりと呟いた。
その言葉には、どこか覚悟にも似た響きがあった。

アマトは、三人の言葉を静かに聞きながら、ふと目を細めた。
ゼルヴァスが言っていた言葉――「人間界、神界へ行くには、その前に魔物界を通る必要がある」――が、頭の奥に蘇る。

そして、アマトが思い立ったように口を開いた。

「みんな、聞いてくれ。言っておきたいことがある……」

焚き火の光が、彼の横顔を淡く照らす。

「俺は今、ある理由があって、この村に留まっている。
だが、実はやりたいことがある。……人間界と神界へ行って、あることを確かめることだ」

ミィナの胸の奥が、ひとつ震えた。

(アマト様……)

彼女は心の中で、そっと決意を新たにする。

(ルノアには決して言えない理由……私も、ルノアの呪いを何とかして、アマト様の本当の目的を手伝いたい……)

ルノアは、アマトをじっと見つめ、胸の中で拳を握る。

(ふっ、俺は知ってるぜ。俺とアマト様だけの秘密……妹さんを探しに行きたいんだ。だったら、俺が一緒に行って、妹さんを見つけ出してやるからな!)

そんな二人の思いを知らず、エメルダが手を挙げた。

「……あのー、アマト様?その”やりたいこと”の理由って、教えてもらえないんですか?」

無邪気な声に、ミィナとルノアが同時にギロリとエメルダを指す。

((このばかたれがっ!))


アマトは穏やかに目を閉じ、少しだけ口元を緩めた。

「……すまん。今はまだ言えない。
だが――いつか言える日が来たら、必ず話す」

エメルダは一瞬きょとんとした後、にっこり笑って手を振った。

「いえ、アマト様がそういうのであれば、俺は全然かまわないっす!」

どこまでもノー天気な笑顔に、ミィナとルノアの視線が力なく落ちる。

((……やれやれ……))


そして、アマトは一呼吸置き、三人を見渡した。
焚き火の炎が彼の瞳に映り込み、静かな決意の光を灯す。

「それで、お前たちに頼みたいことがある。
その時は、俺と一緒に”仲間”として、人間界、神界へ一緒に行ってくれないか」

ミィナは迷いなく頷き、その瞳をアマトに向けた。

「はい、アマト様」

一点の曇りもない瞳が、力強い光を宿していた。

ルノアは笑顔を弾けさせ、身を乗り出すように言った。

「当たり前だよ、アマト様!」

その声には、隠しきれない喜びが溢れていた。

そして、エメルダは――

(仲間……!?いま、”仲間”って言った!?もう、俺、このまま昇天しちまいそう……!)

頬を赤らめて夜空を仰ぎながら、へらへらとした笑顔を浮かべ、頭がふらつき、口からはよだれが垂れていた。言葉にするまでもない、見ればすぐにわかる状態だった。

ルノアがつぶやく。

「あぁ、こいつ、また逝っちまったよ」

アマトとミィナが穏やかに笑う傍らで、
焚き火の炎がぱちりと弾け、星が夜空にまたたいていた。

――それは、確かに新たなパーティができた瞬間であった。

***

次の朝、ミィナが、いつものように診療室の扉をノックし、そっと中へ入った。
手には、聖泉から汲んできたばかりの薬湯が湯気を立てている。

「ルダル様、聖泉をお持ちしました」

ルダルは一度目を伏せ、それからゆっくりとミィナに視線を向けた。

「最近、元気になったな。”真実”をみつけたのか?」

とルダルが優しく問う。

「はいっ!」

ミィナは、ルダルの方へ向き帰り、笑顔でしっかりと答える。

そして、その笑顔につられたかのように、ルダルが呼びかける。

「ミィナ……」

少しの間を置いて、言葉を続ける。

「あの男に、会わせてほしい。話したいことがある」

ミィナは一瞬驚くも、穏やかな笑みを浮かべ、静かに頷いた。

「わかりました」

その一言を残し、彼女は薬湯を置くと軽やかに診療室を出ていった。

しばらくして、ミィナに連れられたアマトが診療室に入ってくる。
ミィナは自信に満ちた笑顔のまま、

「私は外にいますね」

と言い残し、扉を閉めて外へ出た。

ルダルはしばらく、無言でアマトを睨みつけていた。
アマトはそれを受け止め、微動だにせず、静かなまなざしを返している。

そして――
ルダルがゆっくりと口を開いた。

「……お前は、”災厄”なのか、”恩恵”なのか――。私は、ずっとそれを考えていた」

低く落ち着いた声が、静かに室内に響く。

「だが、お前の信じられない行動を聞くにつれて……悩むのが馬鹿らしくなった」

目を伏せ、わずかに笑みを滲ませる。

「だから、単刀直入に訊く。お前は、”災厄”なのか、”恩恵”なのか」

アマトはしばらく黙り込む。
やがて、静かに目を伏せ、口を開いた。

「……俺は、どっちでもない」

言葉には迷いがなかった。

「そもそも、俺は……ただその場で動いてきただけで、この世界で誰かを救おうなんて考えちゃいない」

視線を上げる。

「俺は、今、俺がやるべきことをするために、ここにいる。それが終われば、今度は、人間界と神界へ行くつもりだ」

その言葉には、まぎれもない意思の強さが宿っていた。

「……神界、だと?」

ルダルが思わず眉をひそめ、わずかに驚きを滲ませた。
転生して間もないはずの若者にしては、あまりにも揺るぎない意思が、そこにはあった――
まるで、何か遠い記憶に突き動かされるような……そんな気配すら感じさせた。

「それは……お前の“前世”に関わることなのか?」

アマトは、短く「そうだ」とだけ答えたが、
その表情に、微かな驚きが走る。

ルダルは息をひとつ吐き、頷いた。

「……だとすると、その話は他人にはできない話なのだろうな。“記憶封じの楔”か……」

アマトは一瞬、表情を動かしたが、何も言わずに”無言”という態度で回答した。

ルダルは、それを見てふっと笑った。

「なるほどな……」

少し笑みを深め、続けた。

「だが――。私が知りたい、お前が”災厄”なのか、”恩恵”なのか、の問いには、どうにも納得のいかない答えだ」

アマトは一度だけ息を吐き、静かに言葉を返す。

「だったら――お前自身で確かめろ」

その言葉に、ルダルの瞳がわずかに見開かれる。
だが、すぐに苦笑いが漏れた。

「そうか……」

ゼルミスのことを、ミィナのことを思い出す。

「ここの者たちは、みんな、真実を自分で確かめることが当たり前なのか?……。まったく、お前たちは……」

アマトが微かに口元がほころぶ。

「仕方ないだろ。俺自身、人間界と神界へ行くのは、“真実”を自分で確かめるためだからな」

少し視線を上げ、遠くを見つめる。

「それに――今は仲間ができた。
そいつらと一緒に、”真実”を確かめたいと思っている」

ルダルが、まぶたをわずかに伏せた。

「仲間、か……。魔物たちのことを言っているのか?」

「ああ」

アマトは一切の迷いを見せず、短く答えた。

しばしの沈黙の後――
ルダルが小さく肩を揺らし、笑い声を漏らした。

「ふっ……はっ、はっ、はっ……!
俺は……いったい、何を考えていたんだろうな……。
お前たちには、気づかされることばかりだ」

そして、一度だけ深く息をつき、

「わかった。俺はもうお前を敵視しない。……アマト……すまなかった」

言葉には、確かな誠意が込められていた。

続けて、口元にわずかな笑みを浮かべる。

「それにしても……お前の魔素力は異常だな。それに小石で魔獣を倒したそうじゃないか……あきれるばかりだ」

言葉の端に、少しだけ茶化すような軽さが滲んだ。

アマトは肩を軽くすくめ、小さく笑った。

どこか重たかった緊張が、ふっとほぐれたような、穏やかな沈黙――

それは、初めて心が少しだけ通じ合った証のようにも感じられた――
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