異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第三章 咆哮の誇り ※序盤、シリアス、途中、切ない系、終盤、怒涛のカタルシス

第37話 見るもの、黙るもの、立ちはだかるもの、そして、駆けつけるもの

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――少し時間を遡ったガルドリア王国、王宮の謁見の間

アークリオス三世が眉をひそめ、身に着けた宝石がじゃらりと音を立てた。苛立ちのまま、肘掛けを拳で叩く。

「どういうことだ! 二体も魔獣を召喚したというのに、その後の報告が何もないとはどういうことだっ!」

怒声が響き、謁見の間の空気が震える。

王の前に立つのは、白衣を纏った科学者らしき者。顔をこわばらせ、冷や汗を垂らしながら視線を泳がせる。やがて、その科学者が恐る恐る口を開いた。

「お、お言葉ながら、魔獣召喚兵器はそもそも、そのような仕様でありまして……以前にもご説明したかと……思う……のです……が……」

声は震え、尻すぼみになり、王の鋭い視線に射抜かれて完全に口をつぐむ。

「うるさい! そんなことはわかっておる!」

アークリオスは椅子から腰を浮かせ、腕を振り上げて怒鳴った。

「そこを何とかするのがお前たちではないかっ! わしの命令は絶対ぞ!」

その科学者は肩を震わせ、誰も声を出せず、ただ首を引っ込めるばかりだった。

「えーぃ、もういい! 偵察魔機を出せ! 情報を集めてまいれ!」

「し、しかし、陛下……偵察魔機を出せば、魔物たちがどのような行動に出るかがわかりません。なにとぞ、今一度、ご信望を――」

「黙れ!! お前は死刑になりたいのか!」

アークリオスは怒声を浴びせ、椅子を揺らしながら体を震わせた。

「王の命令は絶対だ! つべこべ言わず、言う通りにしろ!!」

「は、はい……!」

科学者は恐る恐る返事をし、足早に謁見の間を後にした。

――

やがて、外の空気を裂く鋭い音が響き、鋼鉄の翼を広げた偵察魔機が空へと飛べ立つ。

アークリオスは王座に深く座り込み、謁見の間の大窓越しにその姿を睨みつけ、鼻息荒く叫んだ。

「さっさと情報を持ってこい! ぐずぐずするな!」

その横暴な声が謁見の間に響く――


――偵察魔機からの光景


機内には、二人の操縦士が座り、前方のモニターを注視していた。

「……異常なし。風向き安定……あれ、待て、何だ今のは?」

次の瞬間、機体がわずかに揺れる。
遠方で、砂煙が舞い上がり、轟音が響く。
視界の先、荒野の彼方に、ひとつの影が空高く吹き飛ばされるように飛んでいった。

「あれは!? 魔物か!?」

「映像、すぐ王宮に送れ!」

操縦士の手が忙しくコンソールを操作し、機体のカメラがその影を追う。
映像が管制室に転送されると、すぐさま、謁見の間のアークリオスのもとへ届けられる。

そして、アークリオスは、その映像を見て満足げに笑い、王座で手を叩いた。

「ふははははっ! 魔獣が飛んでおる! これが我が力ぞ! よし、三体目を召喚しろ!。どんどん魔獣を召喚せよ! もっとだ、もっとじゃ!」

謁見の間にはアークリオスの高笑いが響き渡った。


一方、ガルテラ付近の上空を旋回し、任務終了を安堵する偵察魔機の操縦士たち。


「やれやれ、なんとか終わったな……」

「帰投コースに入るぞ」

といって、偵察魔機が旋回し、この地を去っていく。


しばらく飛行して、悪魔族が棲むエリア上空に差し掛かった時だった――


「ん? あれは……何だ?」

視界の先、黒い霧のようなものが渦を巻き始める。
その渦はうねり、膨らみ、やがて空を裂くように巨大な悪魔の顔が浮かび上がった。
歪んだ笑みを湛えるその顔が、操縦士たちを睨みつけたかと思うと――

「うわあああああああっ!!」

「来るなっ、来るなあああっ!!」

操縦士たちは頭を抱え、絶叫を上げ、錯乱し、操縦桿を乱暴に動かし始めた。

「ダメだ! 機体が制御できないっ!」

悲鳴と共に、偵察魔機は空を裂くように急降下し、地上へと墜落した。


――ガルドリア王宮・管制室


魔導計器の淡い光が瞬き、監視用の水晶モニターが複数並ぶ。
そこに、偵察魔機の情報を得ようとして集っていた白衣の科学者たち。
その表情は険しく、先ほどの偵察魔機からの映像と断末魔の音声が流れたとき、底知れぬ恐怖を覚えていた。

「……偵察魔機、応答せよ。応答せよ!」

通信士の声が緊迫感を帯びていく。

「応答がありません!」
「魔力信号、途絶しました! 機体位置、消失!」

白衣の群れが動揺の波を広げる。

「ま、まさか撃墜……!?」
「あの黒いオーラは一体……!」
「殿下に報告するのか……?」

次第に高まる声と、不安の色に染まっていく科学者たちの表情。誰もが互いの顔を見回し、戸惑い、怯え、焦りを隠しきれずにいた。


そのときだった。


まるで重い鉄扉が軋むような音もなく、背後の扉が静かに開き、冷たい空気が室内を満たした。

「――騒がしいな」

低く、抑えた声が空気を切り裂き、白衣たちの背筋を凍らせた。
全員が振り返ると、そこには黒い外套をまとった一人の男が立っていた。

アルデオリス侯爵である。

冷たく鋭い灰色の瞳が、怯えた科学者たちを見下ろし、室内の空気を一瞬で支配する。

「状況を報告しろ」

その声は小さいのに、誰も逆らえない威圧感を帯びていた。

「は、はっ……!」

通信士が震える声で応える。

「先ほどの偵察魔機が……悪魔界上空付近で、黒いオーラに包まれ、突如、制御不能に……現在、機体の座標が消失し、通信も途絶しました……!」

ざわつきが再び広がる。

「……殿下への報告は?」

アルデオリスの声が、氷の刃のように突き刺さった。

「ま、まだです! で、ですが……! この件は殿下にお伝えすべきかと……!」

科学者たちの顔は青ざめ、必死にアルデオリスの表情を伺う。だが彼は微動だにせず、わずかに目を細めただけだった。

「この件――上への報告は禁ずる」

その言葉が落とされた瞬間、室内の空気が凍りついた。
誰もが息を呑み、顔を見合わせ、声を失う。

「しかし……侯爵、それでは……!」

一人が勇気を振り絞るように抗議しかけたが、その言葉は最後まで続かなかった。

「――殿下に知られれば、貴様らは、ただでは済まぬぞ」

アルデオリスの冷たく澄んだ声が、誰もが口を閉ざすには十分すぎるほどの重みで降り注いだ。

科学者たちは目を伏せ、互いに視線を交わし、恐怖の中で無言の了承を示すように小さく頷いた。

そして、管制室には、息を殺したような沈黙が落ちた――。


――夜の闇が広がる原生林を駆け抜ける狼男姿のルダル。


息を荒くしながらも、その足取りは迷いなく、ただ前へ、前へと進む。
足元の地面が砕け、風が唸りを上げて彼の体を裂くように吹き抜ける。
だが、ルダルは気にも留めず、ひたすらに走り続けた。

「ガルテラには明け方までに着けるはずだ……今の私なら……!」

握り締めた拳に力を込め、己を鼓舞するように呟く。

獣道を突き進む途中、野生の獰猛な獣たちが牙を剥き、ルダルの行く手を阻む。
だが、そのたびにルダルの拳と蹴りが閃き、獣たちは呻き声と共に薙ぎ倒されていった。
血の匂いが漂う中、ルダルは立ち止まらず、ただ疾走を続ける。

(間に合え……! セシア、グレオニウス……!)

胸の奥で渦巻く不安と焦りを振り払い、暗闇を裂いて走り続けた。


しかし、夜が明け始め、あたりが薄明るくなった頃――。


鼻腔を突く、異様な腐臭がルダルの足を止めさせた。

「……この臭いは……」

眉をひそめ、辺りを見回す。
倒壊した木々、砕けた岩、地面に刻まれた巨大な爪痕。
破壊と蹂躙の跡が、原生林に広がっていた。

「……まさか……こんなところまで被害が……!」

呆然と立ち尽くすルダルの視線が、やがて一つの塊に吸い寄せられる。


朽ちた肉塊――


胴体が半分に裂け、頭部は存在しない。

「……っ!」

あまりにも無残な姿に思わず絶句するルダル――


だが、その右腕に巻かれた一つの装飾が、ルダルの目に突き刺さった。

それを確かめるため、肉塊へ駆け寄る。
そして、その目の前に立ち、震える手でそれを掴み上げた。

「グレオニウス――ッ!!」

ルダルの絶叫が荒野に響き渡る。

それは、間違いなく「六輪の誓印」――王者の証。
グレオニウスが持つはずの、あの紋章だった。

地面に膝をつき、肩を震わせ、目を見開いたまま、力なく拳を地に叩きつける。

「まさか……お前ともあろうものが……!」

唇を噛み締め、悔しさと悲しみに涙が溢れた。


だが、原生林の空間は無情である――


後方から、地を震わせドシン、ドシンと迫りくる重低音。
続けざまに、裂けるような咆哮が響き渡る。

「……!」

ルダルは涙を拭い、振り返った。

荒れ果てた大地を蹴り上げ、闇そのものが実体と思わせる巨体が姿を現し、獰猛な牙を剥き出しにし、荒ぶるように吠える。

その姿を見て、ルダルの瞳に戦意の炎が宿った。

「グレオニウスの仇は、俺が討つ!」

両脚に力を込め、低く身構える。

冷静に、魔獣の動きを見極め、呼吸を整える。

(魔素の流れが乱れているところ……あそこかっ!)

タイミングを見計らい、魔獣の脇腹目掛けてスタンダードスキルの"牙烈”を放つ!

しかし――

「くっ……効かないっ……!」

魔獣の厚い外殻に弾かれ、攻撃が通らない。
ルダルは必死に体を翻し、迫る爪撃をギリギリでかわし続けるが、次第に体力は削られ、息が荒くなる。

(このままでは……!)

再び意を決してスキルを放とうと、力を溜めたその瞬間――

「ぐはっ!」

鋭い爪がルダルを弾き飛ばし、岩壁へと叩きつけた。
ルダルは呻き声を漏らし、苦悶の表情で横たわる。

(くそっ!……ここまでか……)

呼吸は荒く、視界がかすみ、意識が薄れていく。

眼前には、地を踏みしめる重い足と共に、魔獣が迫ってくる。

(すまない、グレオニウス。……セシア……)

胸の奥で絞り出すような謝罪が響く。


そして、木々がなぎ倒され、露わになった空から降り注ぐ月明かりが、腕を振り上げる巨体の影を地に落とす。


次の瞬間、魔獣は、咆哮とともにその腕を振り下ろす。


(せめて、アマトに魔素を供給してもらえたなら……魔獣ごときに……)

最後に残った悔やみの念が、脳裏をかすめる――


――その刹那


「バッシ――ン!!」


二本の稲妻の矢が、鋭い音を立てて魔獣の体を貫く。
続けざまに、土色の塊が唸りを上げ、魔獣の側頭部を叩きつける。

「何…だ……!?」

朦朧とする意識の中、聞こえてきた声。

「アレー、一撃で倒せてないんじゃないの?」
「さすがにつえぇな……!」

霞む視界の先に、ルノアが片手を腰に、エメルダが両腕を組んで立っていた。


そして、その後ろには、静かに佇むアマトとミィナの姿があった――
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